45分別する上勝町に行ってきた
ごみを45分別に分けることでリサイクル率81%を達成している上勝町。日本の平均リサイクル率は20%代(*1)であることを考えるとリサイクル率の高さがわかるだろう。リサイクル率の残りの19%は複雑な素材の構成でできた服や、皮、ゴムなどのリサイクルできないものが占めている。市民と行政が廃棄の時点で努力してもごみが完全に無くなる訳ではない。
ごみになってしまう部分はどうすればごみにならないのか。生産者がこの部分を考える必要があり、設計段階でいかにごみにならない製品を設計するかが鍵を握る。今回訪れた上勝ゼロウェイストセンター HOTEL WHYは生産者さんとコミュニケーションを取り、さらなるゼロウェイスト達成に向け活動しているのだそう。
どうやってリサイクル率を上げたの?「ゼロウェイスト宣言」
平成9年まで野焼きが行われていたが、平成10年には小型焼却炉2基が設置された。しかし平成12年ダイオキシン類対策特別処置法にふれ、焼却炉は廃炉となった。
分別の数が増えたのはこの後からだ。平成13年から、ごみ処理を民間に委託するようになり、分別数は35種類になった。その後平成15年に上勝町議会によって「ゼロウェイスト宣言」が可決され、NPO法人ゼロ・ウェイストアカデミーが発足された。そして上勝町ゼロ・ウェイストタウン計画が策定された2016年から分別数が45種類になった。
平成10年55%だったリサイクル率は、平成13年には76.5%になり、約10年後の平成26年には77%になった。そこから現在まで着実にリサイクル率を上げ、2019年には80.7%を達成した。(*2)
ゼロウェイストとは
ゼロ・ウェイストとは、無駄・ごみ・浪費 をなくすという意味。
出てきた廃棄物をどう処理するかではなく、そもそもごみを生み出さないようにしようという考え方。
参照URL:https://zwa.jp/about/
ごみステーションの特徴
1. ごみは自分でステーションへ。ごみ収集車が走らない!
ごみステーションには分別のプロが常駐している。何をどう分別したらいいかわからなくても助けてくれるのはありがたい。家である程度分別しておいて、分けやすいものはここにきてから分別するそう。大体汚れているものときれいなもので分けている、とホテルのスタッフの方はおっしゃっていた。
ペットボトルや容器包装プラスチックは洗って乾かして持ってくる必要があるが、これから資源になるものだから当たり前の行為だな、と腑に落ちた。
施設には、「くるくるプラザ」と呼ばれるエリアがあり、いらないけどまだ使えそうなものを置いていくと、必要だと思った人が自由にとっていけるシステムがあった。持ち込みは町内の人限定だが、持ち帰りは町外からの人もできるようだった。
2. 生ごみは自宅で処理。ステーションに持ち込まないから臭わない!
ごみというと臭いが気になるイメージがあったが、臭いのほとんどが生ごみからでる。上勝町では、生ごみは自宅で処理(堆肥化)するためこのステーションには持ち込まれない。なので、臭いといった悪いイメージはなく、きれいに分けられた資源となるものたちがきれいに分けられてて居心地がよかった。
3.処理方法や価格が見える化されている!
これらの情報が見える化されることで、自分が持ち込んだごみがこの先どのように資源化されるのかがわかる。自分が出したごみがこの先どうなるかなんて普通に生活していて想像する機会がほぼないが、こうやって示してくれると自分の努力が報われる気がしてよいなと思った。
ここまでごみ分別が日常に関わってくると、自然とごみを出さない工夫がしたくなるそう。実際に住んでいる方は、分別の手間を省くために、買い物をする際になるべくごみが出ず、分別しやすそうなものを選ぶとおっしゃっていた。
宿泊客が分別を体験できるホテル
上勝町の廃材で建てられたホテル。市民がごみを持ち込むごみステーションと一体型になっており、上から見ると「?」の形になっている。
この「?」には、なぜごみになってしまうのか、どうしたらごみゼロを達成できるのか、リサイクルできない約20%のごみについて考えるきっかけになるようにという意味が込められている、と記事で読んだ。
ゼロウェイストセンターHOTEL WHYは行政が出資してできた施設で何年も構想されてやっと去年にオープンしたばかり。「見学→体験→学ぶ→住む」を体現する場所として機能するよう作られたそう。
宿泊客は、チェックイン後ステーションに関する説明をスタッフから聞き、チェックアウトの際に、滞在中に出たごみを実際にステーションで分別する体験ができる。 宿泊客は全国から訪れるらしく、ゼロウェイストの概念を学び体験した人たちがそれぞれの場所に帰って、日常のごみに疑問を持ち、ゼロウェイストへと向かうきっかけになると嬉しいとスタッフの方がおっしゃっていた。その想いどおり、私も日常生活の中でごみを捨てる際に、これは分別して資源になりそうだな、と考えるようになった。
最後に
緑に囲まれ、美しい建物や洗練された室内でゆったりと過ごすことができた。もっと滞在したい、と心の底から感じた。ゼロウェイストを体験できることはもちろん、おいしいご飯や上勝の人々もとても魅力的。次回は、上勝に住む方々とお話をし、色々な価値観に触れたことについて書こうと思う。
*1 環境省データより:
https://www.env.go.jp/council/03recycle/y0312-03/y031203-s1r.pdf
*2 環境省データより:
https://www.env.go.jp/council/former2013/04recycle/y040-kamikatsu/mat01_1-3.pdf
■参考ページ
上勝町ゼロウェイストポータルサイト「 ZERO WASTE TOWN Kamikatsu」
ゼロウェイストアカデミー:https://zwa.jp
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?