「歌が上手い」の定義は何だろう
「歌が上手くなりたいです」
大抵の人は、歌が上手くなりたくてレッスンに通います。
私は生徒さんに尋ねることがあります。
「あなたが思う「上手い歌」って何ですか?」
そうすると、「いい声で歌ってる」とか「気持ちが伝わってくる歌」「感動する歌」とかが返ってきます。
これって、ものすごく抽象的な答えですよね。
なので、私はまたこう聞き返します。
「それって具体的にどういう部分が「上手い」と感じたり、感動しますか?」
そうすると、う〜ん、とうなる人が多い。
私たちは「歌が上手い」と感じる時、最終的にどこで判断しているのでしょう。
そこで、一度みなさんに見て欲しいのがこちら。
去年の紅白歌合戦で賛否を巻き起こした「AIでよみがえる美空ひばり」の動画です。
今回はこのAI美空ひばりの是非を問うのではなく、
生身の人間とAIとでは、何が違うのかを考えていきたいなと。
と言うかこの動画めちゃくちゃ面白いので観て欲しい。
歌が上手い条件
歌が上手いとされる要素を挙げてみましょう。
・音程
・タイミング(リズム)
・ビブラート
・音色(響き)
これらの要素が揃って「歌は上手い」と考えられます。
そしてそれらを完璧に再現することができるのがAI。
でも、「音程もリズムもあっていて、ビブラートもちゃんとかかっていて、音色も豊富な歌声」を人間は「無機質」と感じます。
上に挙げたテクニックを駆使したところで、「歌が上手い」にはならないんですね。
ちゃんと歌が上手い要素が揃っているのに、どこか機械じみていて面白くない、深みがないと感じる。
では、何が「上手い」と思わせるのでしょうか。
それは、先程挙げた動画の後半にも出て来ていましたが、
「音程やタイミングのズレ」、「楽譜からのズレ」というのが人間味を持たせており、
そういった揺らいでいる部分こそが、「歌が上手い」の最終要素になってくるようです。
テクニックだけにとらわれてはいけない
生身の人間とAIの違いというのは、
完璧ではなくて人間らしさ=その人らしいズレやブレがあること
だと考えます。
最終的に何が言いたかったかというと、
歌を習う人には、「テクニックだけを追求しないでほしい」ということなのです。
もちろん、高い音を出すことや、ミックスボイスなど、テクニックを追求することは大切で、
練習はコツコツやっていかないと歌は上手くなりません。
ただ、そこばかり追求しすぎると、歌に面白さや深みがなくなっていくと思います。
心の底から何かを伝えたい、もしくは自分が楽しみたい、表現したい、と思う精神的な部分。
つまり、その人らしさ、自分の生き方などもしっかり追求していくことによって、
歌に深みが生まれ、本当の歌の上手さというものに繋がっていくのではないかと思います。
歌は、テクニックとメンタルのバランスが大事。
私はそんなことを考えながら、日々レッスンをしています。