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好奇心の力:Human-in-the-Loopベイズ最適化によるデザイン支援
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小山裕己
(産業技術総合研究所)
受賞タイトル
Computational Design Techniques and Interactions
受賞の喜びと感謝
このたびは栄誉ある賞にご選出いただき,大変嬉しく思います.これまでの研究活動を評価していただけたということで,改めてこれまで私の研究活動を支えてくださった皆様に心から感謝したいと思います.これからもますます研究に精進し,さらなる貢献を目指して努力してまいります.
研究の転機と新しい挑戦
受賞テーマの「Computational Design」(数理技術に基づくデザイン支援)は,私が修士課程在学中から一貫して取り組んできた研究テーマです.このテーマは世界中の研究者が取り組んでいましたが,特に私の研究が独自性を持つ転機となったのは,私の博士論文中間審査の場で佐藤一誠氏(別の研究室の教員で,当時ほぼ初対面)から助言をいただいたことでした.その助言は私の好奇心を強く刺激し,「Human-in-the-Loopベイズ最適化によるデザイン支援」という着想に至らせ,これにチャレンジすることを決意させました(そして当初の計画を変更して博士論文の本提出までの数カ月間で1つの研究を完成させ,博士論文にも含めました).数理技術とインタラクションの両方の知見を融合してHuman-in-the-Loopベイズ最適化をデザイン問題に適用することで,独創的な研究が生まれました(図-1).
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国際的な活動と評価
その後,Human-in-the-Loopベイズ最適化の研究を深めていく中で,多くの論文を執筆し,所属機関を超えてコラボレーションする機会にも多数恵まれました.コロナ禍の影響で久しぶりの国際会議参加となったACM UIST 2022では,多くの海外の学生や研究者から「あなたの論文を以前からよく読んでいる」と声をかけられ,自分の研究が国際的に評価されていることを実感しました.また,ACM CHIをはじめ国際プログラム委員や運営委員にも招かれ,英文学術書の執筆にも参加するなど,国際的な活動の幅が広がりました.
今後の抱負
好奇心に従って進んだ道が,今回の成果に繋がりました.今後もこの好奇心を忘れず,自分が面白いと感じるものを追求していきたいと考えています.このような姿勢が,最終的には国際的なインパクトを持つ研究につながり,結果として社会実装や産業応用にもつながると信じています.今回の受賞は,多くの共著者の皆様,学生時代に指導してくださった教員の皆様,職場のメンバーの皆様をはじめ,さまざまな方々の支えがあって実現したものです.感謝の気持ちを忘れず,今後もさらなる研究成果を目指して邁進してまいります.
■小山裕己(正会員)
博士(情報理工学).2017年より産業技術総合研究所研究員.2022年より主任研究員.Computer GraphicsとHuman-Computer Interactionの研究に従事.
(2024年6月14日)
(2024年9月17日note公開)