見出し画像

今、俺がくそムカついてるのは最低な政治家その類じゃなくて


血中酸素濃度が下がり続けるのを眺めるしかできなかった。

自分自身の苦悶は仕事量でも残業時間でもなく、その人の背景を知りながらも、ありのままの姿をなすがままにただ眺めて受け入れるしかないやるせなさからくる精神的な辛さにあった。

先月の残業時間は121時間だったらしい。
意外と余裕だなと思った。
過労死ラインとは名ばかりで、いざ超えてしまったとしても精神が安定していればなんともない。

自分には正直なところ、今のご時世なんてほぼ関係の無い話で。
どうせ死なないし症状ないし、むしろ経済まわす方が大事だし。
そんなありふれた正論をもとに自分を動かしていた。

ただ、仕事の性質上とある機会があり、感染症によって各々の事情を抱える患者をみれば、そんな正論でどうこうできる現場では到底なかった。
自分自身がみてきたメディアでの逼迫の二文字はあくまで文字でしかなく、
メディアを通して日夜映しだされる医療現場の映像もどこか遠い国のように感じていた。
その認識は誤っていた。

5~10Lの酸素投与をされているのにも関わらず呼吸が乱れ、サーチが低下し続ける方。サーチ80台前半なのにも関わらず救急搬送できずCT撮影もできない方。半日以上咳をし続け、飲料を口に含めず脱水で脈が落ち続ける方。
悪化の一途を辿り、病床ではないところで治療を受けることに決まる方。

そんな野戦病院のような現場にいた。
適切な医療はそこにはない。(そもそも私がいるところは表向きでは医療機関ではない)
医療の極限状態、いや、あえて言葉を選ぶなら、医療現場のどうしようもできない状況、そんな状況をこんなに身近で認識する仕事。そんな仕事いつから就いたんだっけ?ワクチンはいつ打ったんだっけ??
もちろん行政に対してはらわたが煮えくり返るような思いをすることはある。政治家その類にクソムカつくことも正直ある。ただ、それ以上に自分が自分であるために誰かを悲しませるような奴にムカつく。
ひとつだけ言いたいのは、どうか、自分と自分の周りの大切な人がこんなことにならないよう、最低限の配慮と自分の身の振り方をかんがえてほしいということ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?