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鼻栓
⭐️⭐️⭐️
(星の数でこの記事のオススメ度を
5段階で評価しています)
僕は鼻血がよく出る。
10年以上花粉症と鼻炎に悩まされ、
粘膜が非常に弱いのだ。
多い時は毎日のように出ることもある。
なので鼻血が出た時の対応は
誰よりも完璧な自信がある。
まずティッシュを数枚取り、
左手で鼻を抑える。
そこから右手だけを使って
ティッシュ一枚を丸め
円柱状にして
鼻栓を作るのだ。
抑えていたティッシュの束を
鼻から少し離し、
素早く栓を鼻に差し込む。
完璧だ。
ティッシュや
トイレットペーパーが近くにあれば
大抵
この方法でなんとかなるのだ。
しかし、そんな鼻血上級者である僕にも
どうにもならなかった瞬間が
3回ほどある。
反省も踏まえ、
今後に活かすため
今回はその場面について
ランキング形式で書いていきたいと思う
第3位
居酒屋にて
僕は居酒屋でアルバイトをしている。
これは2年ほど前の
ある夏の暑い日の事だった。
いつものように
キッチンの中で洗い物をしていると
ベルの音が聞こえた。
ピンポン
ホールを見る。
誰もいない。
皆、注文をとりに行ったり
出払っているのだろう。
僕はあまり
ホールに出た事はなかったが
誰もいないので行くことにした。
お客さんの席に行き
注文をとる。
あっ
これヤバイ
僕は鼻血が出る直前
もう出ると言う感覚が
ハッキリとわかる。
鼻の中を
プールで泳いでいる時に
水が入ったみたいな感覚が襲うのだ。
しかし今は接客中だ。
今もし
「すいません!ちょっと待っててください」
と言ってその場を離れれば
めちゃくちゃ
不審がられるだろう。
お客さんは
3人組の上品そうなマダムだった。
完全に
鼻血とは無縁の生活を送っていそう
僕はその時しょうがなく
制服の袖を鼻に当て
何事もなかったように注文をとると、
すぐにトイレへと駆け込んだ。
制服が黒かったため
血は目立たなかった。
僕は罪悪感に苛まれた。
確かにバイト先の制服は
すぐにクリーニングに出される。
しかし
次にこの服を着る人はどう思うだろう
更にお客さんに対しても
急に鼻を押さえたまま
接客しはじめる失礼な店員だと思われた。
ひとりの鼻血をよく出す
人間として恥ずかしかった。
第2位
ライブ中
僕たちフリックフラックは
BAR舞台袖という場所で
他の数組の芸人を呼び
月に数回、昼寄席をさせていただいている。
1日2回公演
これは3ヶ月ほど前の
第2公演での出来事だった。
漫才中あの感覚が僕を襲った。
ヤバイ。
もう出る。
ネタ中に鼻血が出るのははじめてだ。
近くにティッシュもない。
ネタは終盤に差し掛かっている。
よし、
このまま乗り切ろう。
僕はこまめに鼻をすすりつつ、
ネタをやり切ることに集中した。
しかし、残念なことに今回の鼻血は
かなり勢いがあるものだった。
間に合わない。
ネタはクライマックスに差し掛かり、
僕は声を荒げ、
ヒートアップしないといけない。
あかんわこれ
言うてまうしかない
「やばい、鼻血出てきた」
お客さんに血を見せることなど言語道断だ。
しかし、
この時ばかりはやりようがなかった。
幸いにも少しだけ笑い声が起こり、
耐えた。
相方であるりつきは怒っていた。
「なにしてんねんお前!
待っといたるから拭け!はよ拭け!」
こいつは何を言っているんだ。
鼻血を知らないのか?
鼻血とは切り傷のように
血を拭いてどうにかなるものではない。
完全に出きるまで
しばらく待たないと
蛇口のように溢れ続けるのだ。
その後、コーナーがあり
エンディングを迎えたが
全く鼻血は止まらなかった。
この時から僕は
漫才衣装には常に
鼻栓を常備しておくようにしている。
第1位
授業中
栄えある第1位は授業中だ。
これへの対応は
僕の鼻血人生の中でも
最も難しかった。
中学生の頃、
教室で普通に授業を受けていると
いつものようにあの感覚が
僕を襲った。
鼻血か。
季節は花粉症の時期
慣れたものだ。
すぐに鼻栓を作り、
穴に差し入れる。
するとどうだろう
机にポタポタと
血が落ちた。
え?
なんで?
すぐにティッシュで抑える。
それほど勢いの強い鼻血なのだろうか。
いつもの対応とは違い
テンパっている僕の姿を見兼ねた先生が
トイレに行くよう促してきた。
トイレに向かう。
鏡を見た僕は驚愕した。
鼻血が両鼻から出ていたのだ。
通常鼻血は片方の鼻からしか出ない。
僕の場合は
右から出ることもあれば
左から出ることもあった。
そういうものだ。
毎日出たとしても
右右左右左
のローテーションの時もあるし
左右左左左
の時もある。
その右の出番と
左の出番とが
奇跡的に重なり、
このような事態が生じたのだ。
僕は渋々両鼻に鼻栓をし、
教室に戻った。
これがめちゃくちゃ痛い。
鼻に鼻栓を入れるという行為は
鼻の粘膜をかなり圧迫するのだ。
それが両方ともなると
互いに圧迫し合う
それに鼻血自体の痛みも加わり
まるで鼻の穴が
1つに繋がってしまったかのような
痛みを生じる。
僕は甘かった。
右からの鼻血も
左からの鼻血も
しょっちゅう僕のところにやってくるのだ。
そうなれば
3人が一堂に介することなど
容易に予想できたはずだ。
バッティングしてから
対応に追われるようでは
ひとりの鼻血人として
失格であると言わざるをえない。
僕の鼻血観を変えた出来事だった。
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