短編:ロボットと祖母と
慌ただしい中で、私は1人別のことを考えている
身内の中では、比較的良好な関係だった祖母が死んだ
良好、と言っても関係が薄いだけだろうか
送るために、やることはやる
だが、ほぼ断絶と言ってもいい関係性の中で数日間、憂鬱な日々を過ごすことは避けられないと思われる
そんなことは私と祖母と、最後のお別れには関係の無い事だ
ので、もちろんやる
やるが
私は右腕を動かして、ガワの頬を撫でた
済まないが、頼んだぞ、と
:
私は、と言うか、私のガワは忌み事に関しては元々プロだ
ので、全ては問題なく終わったし、携わってくださった人達がとても良くしてくれた事ははっきりとわかったし
私はそのためにわざわざ呼ばれてきたのだろうけど
数日間の非日常は、無事に終わったのだった
:
あるいは、私が悪いのか
色んなものを自覚している私として、今の心のままにそこにいれば良かったのか
いやしかし、それはどだい無理な話だったろうと思う
なにせそこに帰って来ているのは私のガワしか知らない人達なのだから
私がずっとずっと疎んできたガワの、そのたまに見せるいいところを、それが私であると信じて疑わない人達に
私の、今更とも言える変革をどうして押し付けられるだろうか、しかも、こんな時に
結論から言えば、十数年ぶりにガワはガワとして、懸命に、当たり障りなく振る舞った
結論から言えば、予想していたよりずっと、みんなは楽しい気持ちで久しぶりの再会を終えた
私は、その中で別に何を感じるでも無かった
ただ、あるべくままそこにあっただけ
全てを終えて、帰宅した
私が私として、社会に戻るために新しい生活をはじめた場所に
私はロボットなので、やはり涙は出なかった
ただ、もう無理だあ、と口が言っていた
:
ありきたりな言葉で言えば、心がバラバラになったような気分だったけど
私を助けてくれた人達が、僅かなあいだに色んなことを教えてくれたから
ヤケにならずに、こうしてまた日常に戻って
目標に向けて前進しようとすることができたと思う
私はコンセントを抜いてキッチンに向かった
数日開けたせいで、いくつか野菜がダメになっているようだが
ネギや玉ねぎは生きている
さて今日はキーマカレーでも作るかな、と私は思った
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