FM 5-0 第1章 (2)

作戦環境

1-4.

作戦におけるデザインが、自然災害に対する対策のためであろうと、あるいはまた強大な敵を打ち負かすためであろうと、作戦は複雑かつ変化し続け、また不確実な中において指揮される。作戦環境とは、状況、環境あるいは影響による複合の産物であり、それらは、能力の発揮や、指揮官の決断に耐え得る力に影響を与える(JP 3-0)。作戦環境は物理的領域(陸海空及び宇宙空間)及びサイバー空間を含む。それらはまた、作戦に関する敵、敵対勢力、友好勢力、中立勢力と同様に、それらの領域で状況をかたち作る情報を含む。作戦環境は隔離または独立した存在ではなく、世界中のあらゆる影響(例えば情報や経済による)に対し相互に関係を持つ。

複雑さ、変化し続けるということ

1-5.

作戦環境は複雑かつ変化し続ける。複雑さという概念を取り入れることにより、構造的な複雑さ(部分や従属部分に関する構造や状況)や、相互作用に伴う複雑さ(部分及び従属部分間において結果として生じる振る舞いや関係性)を説明することが出来る。作戦環境のうちの多くの事象が如何にして振る舞い、また相互に作用するのか認識することは困難で、それらは常に異なる環境をもたらすと考えてよい。すなわち全く同じ作戦環境は、二つとして同じものはない。作戦環境のある一面において複雑さが少ないように見えたとしても、作戦環境全体としては構造的かつ相互作用的に複雑である。

1-6.

加えて、作戦環境は静的なものではなく、常に発展し続ける。作戦環境における人々の相互作用や、彼らの能力の発展から、学びもしくは適応すべき結果を得ることが出来る。作戦環境において彼らが行動を起こすとき、作戦環境は変化する。そのような作戦環境の変化は予期することが出来る。ある変化が遅延的で隠蔽されていても、他の変化は即時的かつ明白なかたちで発生する。作戦環境における複雑さや変化し続けるという性質は、原因と、困難さや軍事的不確実性への寄与に関する影響との間における関係性を決定づける。

不確実性

1-7.

不確実性とは、目の前の状況について何も知らない、もしくは状況がどのように展開しているのかということについて理解に欠けていることを意味する。優れた指揮官は、本質的に不確実な作戦環境における軍事作戦の指揮を受け入れる。彼らは、そこには明確な答えや完璧な解決策など通常存在しないことを理解している。例えば、友軍はおそらく、敵軍の正確な位置や戦力等の現状について不確実な情報しか有していない。たとえ幕僚が敵軍の位置や戦力について確信を持っていたとしても、指揮官はなお、それらの事実から何を推測するべきか(例えば敵軍の企図)を問う。さらに指揮官が妥当な推論をしたとしても、敵が多くの選択肢を有しているがために、その正確な振る舞いを予測することは著しく困難である。

1-8.

同様に尊重すべき友軍や敵軍等の多様な集団の動機や反応を明確に認識することもまた困難であると言える。アメリカ的な発想が普通であり、合理的であるとは限らない。他の社会に属する構成員は、しばしば異なる合理的思考や、適切な行動、宗教信仰心、文化的規範を有する。これらの視点や文化の違いが、作戦に不確実性を加える。

1-9.

好機と摩擦は作戦の不確実性に寄与する。好機とは秩序の欠如もしくは作戦における予見である。攻勢作戦を遅延させる主要な砂嵐(見通しの効かない要因、軍事用語における「霧」と同意)は例えば、地元の主要な指導者の死であり、それは暴動へとつながる。または敵軍との思いがけない遭遇であり、これらは好機となり得る。摩擦は作戦の指揮と衝突する、無数の要因の複合産物である。摩擦は、時に精神的であり、行動方針を優柔不断なものにする。またある時は物理的であり、敵の効果的な火力として現れる。摩擦はまた外的であり、そのようなかたちで敵から強いられる。さらにまた摩擦は自己誘導的であり、明確に定義されないゴール、調整の欠如、あるいは複雑な計画や、指揮、支援体制といった事柄により表面化する。

1-10.

作戦中に、指揮官は様々な度合いの不確実性の中で、決断し、計画を立て、行動を指揮する。幾つもの事象が同時に起きる状況の作戦領域において、指揮官は思考に取り組み、適合する敵に相対する。指揮官は、敵がどのように行動し反応するか正確に予測することが難しい状況に頻繁に直面する。また、人々がどのように振る舞い、反応するのか予測することが難しい状況にも遭遇する。さらにまた、状況がどのように展開するのか予測することが難しい状況にも遭遇する。このように複雑、変化し続ける、そして不確実な作戦環境において、指揮官はフルスペクトラムオペレーションズを指揮する。


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