芸人界半沢直樹化論

半沢直樹というドラマをご存知だろうか?

2013年TBS系列「日曜劇場」で放送されていた超高視聴率取得連続ドラマである。
原作、脚本は池井戸潤。主演は堺雅人。脇を固める登場人物もかなりの名俳優ばかりの、日本中に一大センセーションを巻き起こした大人気サラリーマンドラマである。
「やられたらやり返す、倍返しだ!」というねっとりとした、それでいて鬼気迫る啖呵は、日本中のサラリーマンが一度は真似したことがあると言っても過言ではないほどブームを巻き起こした名シーンである。
 

今回の内容は芸人の世界が半沢直樹化していくのではないのか?というお話。
 

私見的考察をグダグダ書く前に、半沢直樹というドラマの説明を軽くしておきたい。
ドラマは2作制作されており、第一作目が二部構成、一部の舞台は大手銀行の大阪支店。主人公が務めるその銀行が取引した融資で、必要な資料が粉飾決算(利益が順調であるという嘘の報告。つまり半沢直樹側の銀行が貸したお金は、騙してもともと持ち逃げするつもりで融資を受けていた)されており倒産、融資した5億円を取り返すという話。
二部は銀行本部に戻った主人公が、ホテルの再建を任される。しかもそれだけでなく、会社の上司のしがらみや、出身大学にやる会社内の派閥争い、更には税務署との三つ巴になり、主人公半沢直樹がその絶体絶命のピンチに次ぐピンチを機転と執念とチームワークで乗り切って、邪魔した上司にも仕返しをするという爽快サラリーマンドラマ。
 

ドラマの説明が終わったところで今回の論は、芸人の世界が半沢直樹の世界に近づいていくのではないのか?という予兆を感じたという論である。
と言っても粉飾決算とか、税務署と対立してとか、そのままドラマのようなことが芸人の世界に起こるわけではない。
ではこんなこの傑作ドラマと芸人界がどう関係あるか?

それは、ズバリ大学お笑いの台頭である。

令和ロマン、真空ジェシカ、ラランド、サツマカワRPG、ママタルト、シンクロニシティ、など、現在お笑い好きなら一度は聞いたことある芸人が数多くいる。知らないだけでライブに出ている芸人の中にもかなりの数の大学お笑い出身がいるし、今後もその流れは止むことはないだろう。

大学お笑いの力はすごい。
大学に行くくらいの人間であるわけだからもちろん頭がよく、考え方の基礎があって研究もする、大学時代にサークル活動としてお笑いライブを経験している、それによりある程度経験と地肩がつく、さらに現在売れている大学お笑い出身の芸人がいることでノウハウもある。おもしろい。そりゃ活躍するわけである。

もちろん少し昔から大学でお笑いをしてそのまま芸人になった人もいる。(ナイツさんやかもめんたるさんなど)しかしそれは時代もあってか単品単発という感じで、今の流れとしては、徒党を組んで芸人の世界に殴り込んできているかのような勢いを感じるところもある。

現在ライブシーンでは当時から仲良かった大学お笑いのメンバーで一緒のライブをしたりと、そのまま箱推しできる流れを作っている。それがまた大学お笑いの大きな流れを生んでいる。
 

つまりお笑い界が半沢直樹化しているところというのは、大企業に同じ有名大学出身がたくさんいて派閥をつくっているのように、大学お笑い出身というメンバー同士で派閥を作り、お笑い界の覇権を握ろうとする。というところである。私は半沢直樹を見ていてこれが一番最初に思った感想である。
このムーブが続くと、いつか大学お笑い出身でない人間が外様の扱いを受ける日がくるのかもしれない。

ちなみに私はリアルタイムで半沢直樹を見ておらず、見たのは2、3年遅れで、しかもその時に友達の大陸という芸人と半日ノンストップで一気見をした。この派閥争いのシーンを見て芸人界もそうなっていく!と今から10年前くらいからずっと密かに思っていたことである。
更にちなみに見終わったあとに大陸にこの半沢直樹化論をぶつけたが、彼は12時間ドラマを休みなく見続けたことによる脳の疲労で、何もピンと来ていなかった。
 

落ち着いてほしい。半沢直樹化論はこれだけでは終わらない。この論もドラマと同じで二部構成になっているのだ!
この半沢直樹化論の怖いところは上記の芸人界の派閥だけじゃなくて、同じ大学お笑い出身の人間が芸人にならず、テレビ局やイベンターなどにも相当数就職しているということである。表に見えない派閥が今も生まれているのだ。

芸人になりたかったけど見切りをつけてお笑いを作る番組を作りたい!至極当然な流れで健全な大学生が面接で言いそうなことである。
現在芸人の若手と呼ばれる年齢は30前後である。
しかし企業サラリーマンの30前後は、プロジェクトの中心となってバリバリ働く年代である。
映像制作会社に入って2、3年ADとして働き、ついにディレクターに昇格。3年くらい色んな番組をディレクターとして担当して、そろそろ番組に対しての決定権ももらえるようになった。そんなとき、同じ大学お笑い出身の芸人が売出中として活躍していたら、その芸人をどうにか使ってあげたいというのが人間の情ではないだろうか?
これが一番大学出身の強みでもあり、半沢直樹化の一歩でもある。
 

この大学お笑いの勢いがお笑い界だけでなくテレビ、イベント業界にも波及していき一大勢力として覇権を握る時、私のような高卒町工場芸人は、まるで大学お笑い出身かのような顔をして大学お笑いの仲間に紛れ込むという、粉飾決算芸人として闘っていくしかないのだろう。

 
 
 
 
 

こちらはお題を募集して
『以前noteで書かれていた、お笑いBL論がとても面白くて好きだったので一平さんのお笑い論がもっと見たいです!』
といただいたので書かさしていただきました。ご応募ありがとうございました。

 

お題は随時募集しております。こちらから送れます。


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安田一平 (太陽の小町)
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