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企業の営業秘密の管理実態(4/9)

今回は2018年の改正不正競争防止法施行の影響について仮説検証の結果などを紹介します。

■ 不正競争防止法改正の効果はあったのか?

仮説① 一部の企業が「限定提供データ※」として保護を前提とする契約ひな形等を整備した(※他者との共有を前提に一定の条件下で利用可能なデータのこと)。
結果① 少数ながら「限定提供データ」に対応した規程を整備する企業が現れていた。限定提供データに対応した管理を行っている比率は、大規模製造業の方が中小規模よりも高かった。一方、非製造業ではその逆で限定提供データに対応した管理を行っているのは中小規模の比率が高かった。(図 2.2 47)。

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この原因を精査するため、対象を中小規模企業に限定し、業種別のクロス集計を行った結果では、「情報通信業」「運輸業」「卸売・小売業」において限定提供データに対応した管理を行っている比率が高く「情報通信業」では半数にも及んでいることがわかりました(図 3.1 1)。

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このような結果が得られる背景として、次の2つの要因が想定されます。

・AI学習データを扱うスタートアップ企業等が、データ提供元企業との契約 に際して適切な管理を保証する規程や手続の整備を求められている可能性
・いわゆる下請企業が、発注元企業からの要請のもとで、発注元企業と同等の規程や手続を 整備している可能性

次に限定提供データの管理状況などを見ていきます。

図 2.2 50(報告書39ページ)では、従業員を対象とした説明会や講習の開催が多く、仮説で想定した契約ひな型等の策定を行っている企業はわずかであったことが判りました。

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なお、有識者にインタビューしたところ、図 2.2 47(以下再掲)に示す結果は「実際に相談を受けている状況と比較して多い」との指摘があった。この背景としては、次のような可能性が考えられそうです。

・前述のように企業が取引先や発注元からの要請のままに、弁護士等に相談せずに規程等を整備しているため、対応状況が顕在化していない可能性
・企業の知財部門で対応しており、法務部門で扱っていない可能性
・不正競争防止法の定める限定提供データでなく、字義から「相手を限定して提供するデータ」のことと解釈して回答が行われている可能性

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またこの調査では、関連する判例の有無も確認しています。

仮説① 限定提供データを対象とした不正競争行為を認める裁判例は出現したか?
結果① 裁判例調査の結果、調査範囲内において限定提供データの要件を満たす営業情報に対する不正競争行為を認める裁判例は存在しなかった。

仮説➁ 技術的制限手段の効果を妨げる不正競争行為を認める裁判例は出現したか?
結果➁ 改正後十分な時間を経ていないこともあり、出現の可能性は低いが、技術的制限手段の効果を妨げることを目的とした代行サービスを不正競争行為とする裁判例が出現する可能性があると考えていた。しかし、裁判例は調査範囲内において存在しなかった。

仮説③ 秘密管理性の認定に係るアクセス制御方法の有効性判断に関して新たな裁判例は出現したか?
結果③ 新たな裁判例は出現しておらず、直近5年間の裁判例における営業秘密該当性に関する判断は、それまでの傾向と変わっていないことが確認された。また、新たなアクセス制御技術に基づく製品・サービスによって保護されている営業秘密についての判断もなされていない。

仮説④ 非公知性の認定に係る情報の管理方法に関する判断を含む新たな裁判例は出現したか?
結果④ 企業における情報の管理方法に応じて、新たな判断が示される可能性があると考えたが、裁判例は出現していなかった。

仮説⑤ 欧米の営業秘密保護に係る判例が国内にも影響するか?
結果⑤ グローバルで事業展開を行っている企業での取組みや営業秘密に関する海外とのトラブル等を通じて、米国及び欧州で2016年に施行された営業秘密に関する法規制の影響が示される可能性があると考えたが、欧米における営業秘密に関する法制度や海外裁判所の判断について言及するものは存在しなかった。

次回はニューノーマル下での営業秘密の管理状況について紹介します。
なお、この連載で紹介している調査概要や資料のDLは以下をクリックしてください。

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