平成30年(行ケ)第10076号[豆乳発酵飲料事件]
以下の豆乳発酵飲料の請求項について、進歩性欠如を主張するために、引用文献(粘度の数値は記載されていない)に加えて、当時販売されていた複数の豆乳発酵飲料が粘度の数値範囲内に入っていたことを立証し、上記引用文献に基づいて粘度を数値範囲内に入れることは設計事項であると判断された事例。
【請求項1】pHが4.5未満であり,かつ7℃における粘度が5.4~9.0mPa・sであり,ペクチン及び大豆多糖類を含み,前記ペクチンの添加量が,ペクチン及び大豆多糖類の添加量総量100質量%に対して,20~60質量%である,豆乳発酵飲料(但し,ペクチン及び大豆多糖類が,ペクチンと大豆多糖類とが架橋したものである豆乳発酵飲料を除く。)。
当時販売されていた豆乳発酵飲料ではなく、現在販売されている同一ブランドの製品の粘度を測定し、立証に成功できている点が参考になるため、紹介する。この部分の立証構造と当事者、裁判所の判断は以下の通りである。
【立証趣旨】
出願日前に販売されていた豆乳飲料の粘度が数値範囲内に入っていたこと
【立証方法】
出願日前に販売されていたものと同じブランドの製品(1か月前に製造)の粘度を現在測定し、数値範囲に入っていることを実験により確認した。
【ロジック】
(被告の主張)出願日前のものと製品の粘度は変わらないため、出願日後に測定しても影響はない。(26頁)
(原告の主張)ブランドが同一の商品であっても消費者の嗜好にしたがって粘度が変化することは常識であり、2~3年も前の出願日前に同じであったということはできない。(18頁)
(裁判所の判断)消費者の嗜好が変化し得ることを考慮しても、2~3年間の間に、有意な粘度条件の変動があったとは考え難い(66頁)。
このような立証方法は、製造方法が当時と同じであったかどうかという点が争いにはなるものの、そこをクリアすれば、製造直後の製品で測定しているため、経年劣化の問題が入らないために有用である。進歩性欠如だけでなく、先使用権の立証にも役立つ立証方法である。