共同研究開発時におけるNDA(秘密保持契約)の注意点
オープンイノベーションに対する関心の高まりに伴い、自社技術を開示する機会が増えている。その典型例は、企業間の共同研究開発である。自社技術の開示に際して、NDA(秘密保持契約)を締結することになるが、その際にどのような点に気を付ければよいか。注意点は多いが、いくつかに絞り込んで紹介する。
【対象となる秘密情報の重要度】
会社がノウハウとして持っている重要情報を開示する場合と、特段重要でない情報を開示する場合とでは、契約書に割くべき時間やかける弁護士費用も変わってくる。
【開示側か受領側か】
自社が情報の開示側であるならば、「文書、口頭、電磁的記録媒体その他開示の方法及び媒体を問わず、また、本契約締結の前後を問わず、開示した一切の情報、本契約の存在および内容、並びに本取引に関する協議・交渉の存在およびその内容をいう。」など秘密情報の範囲を広げて規定することが好ましいが、情報の受領側であれば、「~秘密である旨の表示があるもの、口頭その他秘密である旨の表示を付すことができない方法により開示されたものにあっては開示の時より30日以内に書面で情報を特定した上で秘密である旨を明示したもの」など秘密情報の範囲を絞り込んだり、或いは秘密情報となる対象物(例:~に関する文書、メールなど)を列挙したりすることが好ましい。
【例外規定の立証責任】
秘密保持の条項には、通常以下のような4つの例外が規定される。秘密情報の開示側としては、容易に例外規定の適用を受けないように、「受領当事者が立証できた場合」として適用のハードルを上げることが考えられる。
「ただし、以下のいずれかに該当する情報であることを受領当事者が立証できた場合は、秘密情報には含まれないものとする。
①開示された時点において、受領当事者がすでに了知していた情報
②開示された時点において、すでに公知であった情報
③開示された後に受領当事者の責めに帰すべき事由によらずに公知となった情報
④開示当事者に対して秘密保持義務を負わない正当な権限を有する第三者から、受領当事者が秘密保持義務を負うことなく適法に取得した情報」
【開示対象者の限定】
重要な秘密情報を開示する側からすれば、秘密情報を開示する対象をできるだけ限定することが望ましい。実務的には、開示対象者を数人程度まで絞り込み、具体的にその対象者の名前を契約書に書き込むということもする。
【NDAプラスアルファの条項】
NDA後に共同研究が控えている場合には、いずれどこかのタイミングでフィージビリティ・スタディ契約や共同研究開発契約を締結することになる。もし自社として譲れない要望があれば、前倒しでNDAに挿入して交渉を早めることも可能である。例えば、自社が単独で特許を取得したい場合には、NDAプラスアルファの条項として、成果の単独帰属についての条項をドラフトに挿入しておくことも考えられる。前倒しで交渉し、将来の紛争リスクを減らす意味がある。これは特に、NDA締結時にバーゲニングパワーが最も高く、その後は低下していくことが予想される状況では、是非とも活用すべきである。
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