CASE MaaSに関わる最新海外動向 (8月)

~2020年9月4日

この期間の重要な動向

■ 年末に向けTeslaに対抗するEVが多数市場参戦。例: Lucid Air、Polestar 2、VW ID.3/ID.4、BMW iX3、Audi e-Tron Sports。

■ 最近はVW、AudiのCEOがTeslaをEVと自動運転で先行する企業として公に称賛している。(かつてはDaimler 前CEOも)

■ 中米欧市場では、高級高額車種のEV化競争が激しくなっている。高級大型車はより大きな利益を生み出し、これは新技術の大規模な出費に資金を供給し、ソフトウェアの運用を拡大し、リストラ費用を負担するために重要。例:利益率の高い3列シートSUV (GMC Hummer、Lincoln Aviator、Jeep Grand Wagoneer)、Mercedes-Benz:EQSベースのMaybach設定。

■ GMとホンダは、EV等モビリティイノベーションへの投資を加速する為、北米でのガソリン車とクロスオーバーSUVを共同開発しコスト削減を模索。

■ EV系車種でディスプレイ等のHMIを可能な限り簡潔にするミニマリスト化が流行っている。例: Tesla、VW ID、Polestar 2、GM Lyriq

■ 9月9日に正式発表されるLucid Airが走行可能距離517マイルを達成し、急速充電時間も短く、また0~1/4マイルの走行で9.9秒を達成し、突然市場での評価が高くなった。

以下詳細です

◎◎◎ 米国の動向 ◎◎◎

★ GMとホンダは、自動車業界のEV移行に対応する為、北米でのガソリン車とクロスオーバーSUVを共同開発することでコストを削減するより深いパートナーシップの基礎を築くMOUに署名した。

★ Fordは再建の中、北米の従業員を1,000人削減する。今回の削減は、Hackettが引退し10月1日にJim FarleyにCEOを受け渡す準備に合わせて行われる。Fordは最大の売れ筋であるF-150ピックアップトラックの新型への切り替えにも経費が掛かるため、今年過去10年間で初めての通年営業損失を出す予定。

◎◎◎ 中国の動向 ◎◎◎

★ 中国の自動車販売は回復してきており、7月の販売は加速している。中国乗用車協会によると、7月のセダン、SUV、ミニバン、多目的車の小売売上高は、前年比7.9%増の133万台となった。ただし、自動車の卸売りは昨年7月から8.5%増加して167万台となっており、これは在庫の増加を意味する。

★ 先月に引き続き、中国EV数アートアップがIPOに成功している。Alibabaから$215Mの投資を受けている中国EVメーカーXPengはクリーンカーに対する最近の投資家からの期待を受け、米国でIPOを実現し$15Bの市場価値となった。

★ SAICとGMの合弁会社である武陵紅光のMINI EVは$4,000相当で安く、7月24日に開始された成都モーターショーで販売開始され、最初の1週間で7,346台、20日で15,000台を販売し、現在5万件以上の注文が累積されている。スペックとしては、非常に小さい13 kWhバッテリーパックを搭載しNEDC定格範囲がわずか120 km(75マイル)〜170 km(106マイル)の走行距離。長さ2,917mm、幅1,493mm、高さ1,621mmで、幅のみ日本の「軽」より大きい。

◎◎◎ 欧州の動向 ◎◎◎

★ フランスの乗用車登録は、昨年8月と同月比で20%減少し、103,635台の販売で、ショールームと工場がロックダウン後に再開し始めた5月以来最低だった。8月は消費者が通常、休暇を過ごすため、フランスの自動車販売にとって伝統的に厳しい月だが、2019年、2018年の販売台数の方が今年よりも多かった。
★ スペインの自動車販売は8月10%減少し、わずか1%拡大した7月に対して大きな挫折だった。
★ 欧州でのEV補助金により、中国でのEV販売台数を超えた。

◎◎◎ 日本市場 ◎◎◎

★ 日本自動車販売業者協会は、自動車、トラック、バスの7月の売上高は前年同期比20.4%減で、8月は18.5%減だったたと報告。

★ 販売は5月の40.2%減で底打ちし、COVID-19の拡散が緩和されても消費者は依然として警戒心を示し、回復の速度は欧州市場と同様に遅い。

◎◎◎ EVの動向 (Tesla) ◎◎◎

★ Elon Musk CEOは、建設中のベルリン工場視察後、VWのHebert Diess CEOと会い、ID.3の試乗とID.4のプレビューを行った。両社は過去からお互いをほめたたえている。今回、提携等の話は行われていない。

★ Muskはより大きな成長を目指し、$5Bまで複数の銀行に対して株式を売却する。$5BはTeslaの最近の時価総額の約$442.7Bに対して約1%に過ぎない。

★ Muskは「Teslaにとって最重要な目標は利益の最大化ではなく、販売量の拡大であり、成長を最大化し、自動車をできるだけ手頃な価格にする為に利益はわずかで良い」と語った。最近の米国テックカンパニーに特徴的な考え方。

★ 数年前、MuskはTeslaがまず製造に集中することを決めた際、目標は工場を工場というよりも「エイリアン」に見えるようにすることであると述べ、工場を高度な自動化で前例のない速度でEVを生産するマシンにしたいと考えている。数年後にはこれまで見たことの無い工場になり、生産プロセス自体に人は入れず、人は機械を保守し、それらをアップグレードし、異常に対処する。

★ Teslaは世界最大の鋳造機のオペレーションを開始した事を発表。米国フリーモント工場で稼働開始しModel Yへの導入で鋳造を大幅に進歩させる。

★ Teslaは速度制限標識認識等を含む、新しいソフトウエアアップデートをリリースした。スピードアシストで一般道路の制限速度認識の精度を向上させた。クルーズコントロールの速度設定を改善し、ディスプレイ上に表示された制限速度標識をタップすれば、設定速度を制限速度に設定できる。青信号チャイム(Green Traffic Light Chime)を追加し、交差点で信号が青に変わるとチャイムがなる。

★ TeslaはHW 4.0自動運転チップを2021年4Qの量産をめざしてTSMCと開発している。

★ Teslaはカリフォルニア州で開始した自らの保険事業を中国にも拡大しようとしている。

★ Teslaは、従業員を不当手段で採用し営業秘密を奪う「常套態勢がある」としてRivianを訴えている。

◎◎◎ EVの動向 (Tesla以外及び一般情勢) ◎◎◎

★ Mercedes-Benzは、EVのラインナップを超高級車にまで拡張し、EV製品が不足しているハイエンド市場の地位を守るため、来年出荷開始するEQSセダンの派生としてMaybachブランドを追加。Maybachは特に中国で人気がある。

★ FordはF-150ピックアップトラックのEV版を製造する新工場をディアボーン工場に隣接して建設開始。FordはF-150でピックアップトラックのリーダーであり、このセグメントのEV化で大きな役割を果たさない場合、Ford最大の損失を被る可能性がある。ただし、出荷開始が2022年であり、競合するTesla Cybertruck、GMC Hummer EVが2021年後半に出荷されるのに対して、遅い。

★ FCAはJeep戦略のプレミアム市場への拡大として、Wranglerのp-HEVバージョン投入(2021年@中国・欧州)、利益率の高い3列シートのSUVセグメントへのJeep Grand Wagoneerのp-HEVコンセプトによるEV化戦略を披露。

★ VWは9月末に正式発表されるID.4の内装を公開した。Teslaやその他の市場に出回っているEVに触発され簡潔でミニマリストなデザインになっている。2つのディスプレイを持ち、「ID.Lightシステム」と呼ぶ、フロントガラスの下にライトが並び、ナビゲーションプロンプト、着信コール、ドアロック、またはその他の機能を示す色に変わる照明スキームが大きなセールスポイント。ID.4はTesla Model Yとほぼ同じサイズの小型SUV。既にドイツで生産開始されており、$100のデポジットを取り9月から予約を開始する。

★ PorscheのBEVであるTaycanの初期モデルへの強い需要があり、「より広い」TaycanのCross Turismoバージョンの出荷を今年後半から来年初頭に遅らせる。Porscheは費用削減に加えて、Taycanと新型911 TurboとTargaの好調な販売でCOVID-19により激動する市場を乗り切り、大きな利益を上げた。

★ 既に欧州で販売開始されたVolvo Cars Groupの戦略的EVであるPolestar 2はAndroidの車載用ネイテイブOSが搭載され、インフォテインメント、HVAC等が制御される世界初のクルマ。音声認識やそれによる操作性が優れている。内装はTeslaほどではないが、ミニマリスト化されている。また、インテリアには100%ビーガンで動物性部品は使っていない。中国成都で製造される。

★ Lucidのデュアルモーターで全輪駆動パッケージのAir Dream Editionは最大1,080馬力を出し1/4マイル9.9秒を実現し、Tesla Model Sを打ち負かし、世界最速の量産セダンとなった。また113kWhのバッテリーで517マイルの走行を達成し、急速充電も300 kWを超える900ボルトの充電により、1分で最大20マイル分の充電を可能としており、話題になっている。

★ NIOとCATLは、顧客がバッテリーをクルマと別にリースできるようにすることでその負担を軽減し、事前購入のコストを削減することを目指し、北京でスタンドアロンバッテリーのベンチャー事業を発表。

★ Amazonは2040年までに炭素の正味ゼロ排出者になるという取り組みを行っており、グリーン化の為にMercedesのEV VANを1,800台購入する。

◎◎◎ EVバッテリーの動向 ◎◎◎

★ Teslaの研究者は個体電池ではなく、電解液を使用したLi-ionバッテリでも画期的なエネルギー密度を備えた次世代バッテリーへの道を示した。

★ Mercedes-BenzはCATLと主要パートナーシップを結び、CATLはEQSを含むMercedesの今後のEVにバッテリーを供給する。

★ VWはEV用バッテリーセルを米国でも開発予定。2022年初頭にID.4の生産を開始する予定の米チャタヌーガEV工場と並んで建設される新しいバッテリー研究所は「2021年春までに完全に稼働する」と語った。

★ Teslaを含むEVメーカーは今後はよりクリーンなニッケルの安定的供給を受けるのに苦労する可能性がある。

◎◎◎ 自動運転の動向 ◎◎◎

★ ミシガン州は40マイルを超える完全自動運転街道を構築。GM、Ford、Toyota、Argo AI、Waymoを含む諮問委員会によってサポートされる。

◎◎◎ MaaS関連の動向 ◎◎◎

★ Uberにとって最も重要な都市の多くで、パンデミックに対する健康の懸念から人々の移動を凍結し、Uberのライドヘイリングとスクーターによる新カテゴリであるモビリティ事業は、67%減の$790Mの売上となった。パンデミックが発生する前から成長していたデリバリの収益は、四半期中に103%急増し、モビリティ事業を超えUber戦略の中心となっている。

◎◎◎ その他 ◎◎◎

★ エアバスSEとユナイテッドテクノロジーズの元最高技術責任者であったPaul Eremenkoは、水素駆動飛行機が航空業界の解決策になると考え、飛行機に積み込まれるとガスタンクを兼ねる水素で満たされたポッド(長さ約7フィート、直径3フィート)を開発し、2024年頃から需要が見込めるボーイングとエアバスの中距離単通路型地域航空機への導入を狙っている。ポッド型で輸送されるので、水素供給インフラ等が不要。

★ Digital Motors社はTesla購入のインターネット体験を全ての自動車ブランドに届けたいと考えている。Digital Motorsは昔ながらの自動車ディーラーをTesla風ウェブストアに変え、自動車の購入と資金調達をAmazonで何かを購入するのと同じくらい簡単にするプラグアンドプレイソフトウェアパッケージを作り、COVID-19が市場浸透を拡大した。

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