【独白】性別違和症

性別違和症。
ちょっと前まで『性同一性障害』と言われてたんだが、「これ障害じゃねえだろ」って話になり、性別違和症で落ち着いた。
こういう名前になると軽くみられそうだが、自殺者も出るくらいの話。
ストレス凄まじいのだ、本人たちは。
言い出せなくてじっと呑み込んでる奴らもいる。
子供の頃からストレスに晒されてるから、精神疾患と親和性が高い。
自己肯定どころの話じゃない。自己否定の塊だ。

俺はそれほど苦しんでなかったな。ガキん時から自称俺だったし。
「もう中学生なんだから、自分のことは私と言いなさい」と親に言われたがスルー。
中学くらいまでは俺、高校の頃は僕だった。
ただ、制服のスカートには閉口した。あれだけは辱めとしか。
こちらは冬が寒かったので、冬服はスラックスが認められていた。冬服万歳。
人並みに胸が腫れてるのも嫌だったが。これはもう病気だと思って諦めた。
下半身に関しても「病気で切除した」という設定だったので、あまり気にもせず。

ただ、社会に出ると話は変わる。
最近はどうなんだろうな、世間様も多少は寛容になってきたし、俺らの時代よりはマシなんじゃないかな。
というか、俺が勤めた先の雇用主、今でいうところのパワハラ&セクハラ全開だったぞ。
「伊織さん、最高の女に磨いてやるから!」
いや、大きなお世話だ。雇い主がそれやるな。
当時はハラスメントなんて概念はない。業務命令的なものになってしまう。
パーマかけさせられたり(地肌が弱いのでパーマ液にまけるから困ると断ったのだが、退かなかった)、無理やり赤いセーター着せられたり、屈辱の連続。
接客業だから『アメカジ風ちょっとボーイッシュな女子』を演じていたのに、プライベートにまで容赦なく口出しされて精神的に疲れ果てた。
おかげさまで病んで辞めた。
学生時代がのびのびとしてた分、ストレスは超割増だった。
後になって「ああ、あれはうつだったのか」と気がついた。

なのでわりとハードだ、性別違和症。

乗り切り方は人による。
俺のように設定付けして乗り切ってきたタイプ、戸籍まで変えなきゃ気が済まないタイプ、胸だけ取ればよしと出来るタイプ、ホルモン剤使って筋肉とヒゲを欲するタイプ……千差万別。
俺はヒゲは要らんな。ケアが面倒くせえ。
それに今、毎日成長ホルモン注射してるから、ここに別のホルモン剤足すのは遠慮したい。一応NGになってる。
んー、俺は『胸がなければなおよし』くらいか。
実際には手術費が高くて実行不能なのだが。障害年金受給者の俺にどうやってそんな大枚を作れというのか。内職で追いつくレベルじゃないぞ。
年も年だしな。あと2年足らずで還暦だ。全身麻酔の手術は避けたい。
1度ザックリと肝臓切ってて、その後の息苦しさが半端なく、地味に懲りている。
人工呼吸器はダメだあれは。自発呼吸の仕方を忘れる。深呼吸が出来ない。I need 酸素.
仕方がないから、胸はもう黙殺することにする。トラシャツで押さえるしか。
トラシャツというのは、圧迫が強いブラジャーだとでも思ってくれ。
欲しかったらアニメイトにでも行くといい。コスプレ用品で売ってるぞ。
ネットでも買えるが。

余談だが、嫁はFtXだ。
Xジェンダーというのは性別がない、もしくは両方の性自認がある。
嫁はどっちもあるタイプ。
俺より全然カッコいいですちくしょう。

性自認。
生まれたままの性を受け入れられるのはいいことだ。
『楽』だからな。
そしてそれがほとんど当たり前だ。
だから性別違和は『症』として認められている。
個人的には「これって病気なんですかねえ……」と思わなくもないんだが。
よく障害児の親が「障害でなく個性です」とかいうだろ。
俺は明らかに障害だと思うが(俺も精神障害者ですが何か?)。
で、思うに、性別違和症こそ個性の範囲だろ、と思ったりする。
それが個性で済まないのは、生殖機能をむやみになくしちゃいかんという法律があるからで、これを犯せないゆえに病気を作っている。
だが、そんな法律があっても無駄で、みな海外で手術を受けてる。
建前なのだ。建前のために疾患に位置づけられている。
個人的にはそう思っている。
それに『疾患』にしておけば、逆に言えば、お墨付きさえもらえれば多少の融通が利いたりもする。
詰襟着させてもらえたり、女装(失礼)で会社勤め出来たり。
今どきゲイを病人呼ばわりする奴はいないだろう。
性別違和もいずれ同じになる、そう思う。
なってほしいという願望なのかもしれんが。
どのみち、そんな時代を生きて目にすることは出来ないんだろうがね。
まだまだ認知度は低いからな。

やっと扉が開き始めたところ。すべてはこれからだ。

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