「あたしの恋のからまわり」(charly - ふくざわまさひろ さん「くるくる。ちょっときらきら。」より)
今回コラボさせていただいたお写真はこちらです。
charly - ふくざわまさひろさん(https://note.mu/charly_jp) の 「くるくる。ちょっときらきら。」(https://note.mu/charly_jp/n/n3aab61816af0)
ふくざわさん、どうもありがとうございます!!
――もういい。
唇噛みしめて、すっごく惨めな気分。
「もういいよ、あたし帰るっ!!」
今日のために期末試験終了後、バーゲン期間中のショップに駆け込んでゲットした、ビキニにデザイン合わせのパーカ、大胆なショート丈のパンツとビーチサンダル。全部新品。全部、今日のための。
お母さんに教えてもらって一人で作って持ってきたローストビーフのサンドイッチも、コースケが一人で食べればいい。
もうっ!! バカみたいあたし。やること成すこと全部、ぜ~んぶ、からまわりだ。
膝の砂を払い落として立ちあがり、バッグを手にパラソルの外に出たあたしを、コースケのほうもスマホ片手にバカみたいにぽかんと見上げてる。
「あたし、帰るから。コースケはずっとそこで、潮が満ちて溺れるまで友達とラインやってなよっ!!」
それだけ言うと、あたしはザックザックと砂浜を踏みしめ、バス停のほうへ急いだ。バスの時間、待つのはイヤだな。一秒でも早くここ、海からもコースケからも遠ざかりたい!!
ふいに、陽がかげったような気がして、爪先が次々に踏む砂を見ていた目を上げる。上空にやけに黒い雲がむくむく湧いていた。沖のほうからゴロゴロいう音も聞こえる。え、これって夕立? 今はまだお昼だし、ゲリラ豪雨ってやつ?
急がなきゃ。あたし、雷が苦手。こわい。
跳ねた砂がはだしの脚にまとわりついて気持ち悪い。でもさらに歩調を早めて歩く。あと100メートルほどでバス停というところで。
一瞬の閃光。数瞬遅れて雷の轟きに空気が震えた。
声も出せず、頭抱えて座り込んでしまう。こわい、こわい。たすけて、だれか――
「メグ発見! 相変わらずだな、雷が苦手なのは」
ハッと顔をあげると仁王立ちのコースケ。なんでそんなドヤ顔なの!?
立ち上がって睨みあげる。いつの間にかあたしの身長を軽々追い越したコースケ。
「どうでもいいでしょ。どうせちっちゃい頃から嫌いよ、雷。いいからそこどい」
日焼けした腕のすぐ横をすり抜けようとした、その時。再び閃光!
今度はほぼ同時の轟音。無意識に。
無意識にあたし、押しのけようと伸ばした手でコースケにしがみついてた。 ――ポンと。
声も出せないで肩から先を震わせているあたしの頭に、ポンとコースケの手のひらが降りてきた。
「大丈夫大丈夫。こうしていたらオレのほうがでかいから、オレに落ちるよ、雷」
得意そうに言う。バカ!! こんなにひっついていたら、コースケに落ちた雷で、あたしも感電しちゃうでしょ!! ……もうっ。
「ごめん、メグ。ラインは……その、部のヤツらにちょっと、あ、自慢しようと思って……」
バス停の屋根付きベンチでシャワーみたいな雨をやり過ごしながら。コースケがあたしや海そっちのけでラインに夢中だった理由を問いただすと。 はぁ……ため息ついちゃう。ガキみたい。
海に行こうって、誘ったのはあたし。幼馴染みで一つ年下のコースケを。
同じ高校に進学してきたコースケは俊足が武器で、サッカー部唯一の1年生レギュラー。明るい性格で同性の友達も多いし、学内で絶大な女子人気を誇っている。コースケの周りには常に華やかに女の子たちの輪が咲いている。確かな筋の話では、まだ特定の彼女はいないらしいけど……。
そんなコースケだけどあたしにとっては、用水路に靴を落として泣いているところを助けてあげたり、走って転んだ膝小僧を水道で洗ってあげた仲。
ちやほやされているコースケがあたしの手の届かないところに行っちゃいそうで不安だからと言ったって。たった2、3か月で「幼馴染みのメグねえちゃん」から、キャーキャー黄色い声で試合の応援に行ったり、ましてやサッカー部のマネージャーになって世話を焼いたりとか、このあたしのプライドが許さない!! だから。
「海へ行こうよ、コースケ。二人で行こう」
試験範囲が発表されて部活がなかった日の帰り道、向かい同士のお互いの家の前であたしは言った。とびっきりのビキニでコースケをハッとさせてやろうって思った。他のどの女の子にも向けない視線を奪うんだって。
なのに。呆れるほど子供だ。男の子って。
「ねえメグ、パーカ脱いでビキニの写真撮らせてよ、ラインでこいつらに送る証拠が要るんだよ証拠!!」
だもんなあ、まったくもうっ!!
何なんだろう。あたしのこと、コースケはいったいどう思っているんだ!?
バスは雨で洗われキラキラしてる道路を走る。薄くなった雲の隙間から再び陽が射し始めた夏空を、あたしはコースケと座席に並んで一緒に見た。
「ね、コースケ、今日はなんだかグダグダになっちゃったから、今度また来ようよ」
いっしょに海に――って言葉、飲みこんだ。
だって、コースケの手があたしの膝の上に乗せられたから。
え? ええっ!?
ショートパンツのむき出しの脚の上に、でかくなってごつごつしたコースケの手。
「コ、コースケ……?」
そぉっと横を見る。俯き加減に垂らした髪の毛のあいだから、気付かれないように目だけでコースケをうかがう。と。
もうっ!! あたしバカみたい。コースケ寝てるよ。膝の上でわたしの特製サンドイッチ入りのバスケット抱えてくれていた手が片方、ほどけただけだ。
あーもうっ、ドキドキして損したっ!!
あーあ、いつまであたし、こんな思いかかえてからまわるんだろう?
もう限界だよ、だれか教えて!!
お読みいただきまして、ありがとうございました<(_ _)>
えっと、あとがき的なものは今回は趣向を変えまして、制作日記という形で、このあと…晩ごはん食べてからでも、アップさせていただきたいと思います。
たいしたことは書けませんが、多分…。
ではお写真とコラボさせていただきましたふくざわさんはじめ、ここをお読みいただいていますみなさま、おつきあいいただきまして、どうもありがとうございましたっ!!