夜の河辺
京都に来るのは3度目のことだった。
1度目は中学生の頃の修学旅行。2度目は大学の卒業旅行。
2回とも自分で行きたい場所に行ったというよりも、案内されて着いて行ったという感じだったので、淡くぼんやりとした記憶しか残っていない。
3度目は、2泊3日の夫と2人旅。
5月のやや強めの日差しの中をひたすら歩きまわったので、私はくたびれてしまい、2日目の午後は一度ホテルにもどって休むことにした。
京都に住んでいた友人に「京都は暑い時はとても暑いから、たくさんカフェに入った方が良いよー」と教えてもらっていたのになぁ。夜ご飯はおばんざいの美味しいお店を予約していたので、絶対に復活したいなぁ。などと思いながら1時間くらい眠った。
ホテルはとても静かでのんびりとした午後だった。日があるうちに眠るのが久しぶりで、何だかはしゃぎすぎてくたびれてしまった子どもの頃を懐かしく思い出した。
1人で散歩してきた夫がホテルに戻ってきて、少し回復した私とお茶を飲んでお店まで歩いて向かった。
予約していたお店はとても感じが良く店員さんの京都弁が可愛らしかった。
私たちは飲み過ぎて帰れなくならないようにと、少し早い時間に店を出て鴨川沿いを散歩することにした。
河原町三条の交差点を三条通りにまっすぐ歩くと小川珈琲があり、そこで1杯のカフェラテをテイクアウトして河沿いへと階段をくだる。ギターを弾いているグループや、飲んでいるグループ、たくさんの若者が集まっている。その間を掻き分けて、河沿いを北の方へと歩いて行くと少しずつ人が減って来る。
カップルがひっそりと等間隔に座っていて、「鴨川の等間隔カップル説は本当なんだねぇ」などと笑い、その等間隔を乱さないように川沿いに2人でそっと座った。
河を吹き抜けるやわらかくやさしい風を感じながら、水の流れる音が聞こえて、時々草むらに隠れていた水鳥がバサバサと動く音にびっくりした。
どこにでもある川縁なのに、どの建物も川の方を向いていて、そこにある自然のきもち良さを取り込んでいる。その建物が川沿いを劇場のようにしているにも関わらず、明るくて賑やかなのに暗く静かでどことなく安心できる場所だった。
1杯のカフェラテを2人でちびちび飲みながら、たわいもない話をしていた。少しずつ人が立ち去って、仄暗い街の中に消えて行く。幻想的で静かなお祭りの中にいるような不思議な河沿いでの夜だった。
*
行きたかったお店に行くことができ、おばんざいをおつまみに美味しいお酒を楽しみ、お寺や路地、街並みを堪能することができた良い旅だったなぁと今になって思い出す。だけど、この旅で一番に思い出すのはなぜだか夜の河沿いでのひとときなのでした。
ご覧頂きありがとうございます。
よい週末をお過ごしください:-)
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