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2,そこに在るワンダーランド

わたしは生まれた時から『楽園』を探していた。

幼少のころから様々な未知の世界に遭遇してきた。


時計が逆戻りしていた。

パネル式の時計さえも下から上へパネルが上がり逆戻りしていたシーンを何度も目撃している。
それで「あー、わたしは人生を逆に生きるタイプなんだな」と子どもながらに素直に現実を受け止め納得していた。

未知から来て古代に戻るタイプなんだと。

そして小さな黒いおじさんはわたしが6歳のころから現れるようになった。

デスクとタンスのわずかな隙間や、押し入れの隙間などに隠れていつもわたしを見ていて「ニター」って笑っていた。
気持ち悪くて、なんで見てるんだろう、わたしは見たくないのに。と思ったらもう見えなくなった。

そんなことを忘れていたある日、
わたしが小5のとき図書委員になって休み時間に皆が図書館に本を返却しに来るときの係として、わたしは図書館に居た。

大好きな本を読んでいた時、ふと視線を感じて、見ると、本と本の隙間にあのときの小さな黒いおじさんがニターと笑ってわたしを見てた。

どこにいても観察されていたんだ。


わたしが6歳の時、両親が離婚して母子家庭になった。
引っ越したアパートに母が連れてきた男を「新しいお父さんよ」とわたしたち3人姉弟に紹介した。
男は働かず、いつも家に居た。
母は昼も夜も働いて、男は母の働いたお金をギャンブルと飲み屋に使い、
わたしたちはいつも食べるものがなく、お腹が空いていた。
母は男といつも一緒で、わたしたちは忘れ去られていた。


わたしは小学校に行くようになり、給食のパンと牛乳を母と弟たちに毎日持ち帰っていた。

ある日痴漢にあって、学校帰りの道をひとりで帰るのが怖くなった。
すると、大きな野良犬が出てきて
「そのパンをよこせばお前を守ってやる」と言ってきた。
「これはお母さんのだからダメ!」と反対したけど、可愛そうだったのでパンをあげた。
それから毎日学校から帰るときに犬がそばに寄り添って守ってくれた。

犬はどこから来るのか、いつも突然現れた。

ある日犬が目と耳に怪我を負って現れた。
「どうしたの?その傷だれにやられたの?」と聞くと
「お前を守っていることを知られて、奴が切り裂きにきた。もう、お前には会えない。この先に森がある。そこに行けば木の実がたくさん成っている。強く生きろ」そう言って、それ以来姿を現さなくなった。


そして日曜日、弟と2人でその森を探しに行った。

いつも学校へ行く道の反対側に田んぼのあぜ道があり、それを進んでいくと森に入っていった。


そこはヨーロッパの森のようで、森の中に入っていくと蔦が外壁に絡む一軒の洋風の白いお家があって、裏庭で年頃同じくらいの2人の子供が遊んでいたので「一緒に遊ぼう」と声をかけた。

上の子は色が黒い8歳くらいの男の子で下の子は色白で亜麻色の髪の3歳くらいの女の子だった。

わたしは当時8歳、弟は6歳でわたしは女の子と庭にある木の手作りのブランコに乗ってお人形で遊び、男の子は弟と車のおもちゃで遊んだ。

夕方暗くなってきたとき、家の中から白いネグリジェを着た女の人が出てきてわたしたちにレモネードをくれた。

そのレモネードは五臓六腑に染みわたり体の表面がプチプチとなったのを覚えてる。

母親に愛されたことがなかったのですごく嬉しくて、この人がお母さんだったらいいのにと思った。

子どもたちと「来週また遊ぼうね!」と約束してその日は帰り、翌週また同じ道を通って、森に行った。

ところが、森の中に入れない。
そこには蔦が絡んだ古い金網で出来たフェンスがあってそこに
「立ち入り禁止」と書かれた古い錆びたプレートが張られており、それ以上は入れないようになっていた。



10年前、庭の薔薇を選定していたとき、外壁に蔦が絡んでいて「ハッ」として急いで家の中に入り、レモネードを作りながらわたしの子供たちにあのときの話をした。

「あのとき遊んだ子供たち、男の子はあなたみたいだった、女の子はあなたみたいだったの、でもね、女の人の顔だけが思い出せないのよね、太陽みたいに光輝いてて」

と言うと、子どもたちが口を揃えて「それママだよー」と言った。

瞬時に体の表面がプチプチとなった。

そういえば!わたしがパースを描いて造られた家は、あの森の中で見た白い外壁の家とどことなく似ている!

家を建てたのが上の子が8歳、下の子が3歳のときで、あのときの子供たちと同じだ! 

そしてわたしは初夏になるとレモネードを作っている!


小さな頃の傷ついたわたしを癒してくれたのは未来のわたしと子どもたちだった!

                            続く→3へ



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