ラジオに混ざる声
お気に入りの洋食屋さんはとても静か。
店を切り盛りしてるおじいちゃんとおばあちゃんは一言も話さん。聞こえる話し声は、ラジオぐらい。それが心地よいと思ってる人たちがお店に来てるから、口数が少ない人が多い。うちらはいつもうるさいと思われてるかも。わー。
カウンター6席ほど、四人がけのテーブルが2つ。
私たちの隣に座ったのは、お父さんと息子。ハンバーグセット2つとビール1つ。
「後期の授業もオンライン授業なの?」
「うん。そう。」
「体なまっちゃうね。」
「まあ、だけどバイトはあるし。」
男二人、向かい合って交わした会話はこれだけ。
「ごちそうさまでしたー!」とお父さんが立ち上がると、息子は会計が終わるのを待たず、店のドアを押し、丁寧に「ごちそうさまでした」と言った。
お会計が終わったお父さんが、外にいる息子に向かって「アイスでも食べるか」と言ったその声と姿と柔らかさに、愛を見た。
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