
伊藤若冲の樹花鳥獣図屏風 #57
2024年度収蔵品展 第1部 異国への眼差し
静岡県立美術館
2025年2月15日(土)
今日の一枚は、伊藤若冲「樹花鳥獣図屏風」。伊藤若冲があみだした升目描きという手法で描かれている。

伊藤若冲の升目書きの作品は現在3点が残っているようで、その1つとなる屏風である。
NHKの日曜美術館で、伊藤若冲の失われた升目描きの傑作「釈迦十六羅漢図」のデジタル復元プロジェクトを見た(24年夏ごろ)。そこで、升目書きのお手本として登場していたのが、静岡県立美術館の樹花鳥獣図屏風(静岡本)であった。
という経緯もあり、かねてから静岡本が展示されるのを待っていた。
静岡本は、とても奥行き感を感じる屏風であった。

もう一つの升目描き屏風である旧プライスコレクションの鳥獣花木図屏風(プライス本)は、静岡本と構図は同じである。プライス本を東京の出光美術館で見たときは、あまり気にしなかったのだが、背景は濃い青である。
一方、静岡本は、背景の青が淡い。そのため背景が目に入ってきやすいのだが、恐るべきことに、この背景は遠近法である。

ヨーロッパで確立された一点透視法などの遠近法とは異なるが、伊藤若冲は、明らかに奥行きを表現しようとしている。
それに気付くと、なんと奥行き感がある屏風ではないか。

奥行きのある三次元の屏風のなかで、たくさんの動物が思い思いに生きている。豊かな世界である。
静岡県立美術館の今回のには展示、伊藤若冲の第3の升目描きの作品(個人蔵)も展示されていた。
初めて見た。個人蔵とのことだが、他の美術展にも出展されているのだろうか。ゾウの形が可愛らしいのだが、暗くて渋いトーンである。

中国の晋時代の書聖である王羲之が蘭亭でひらいた宴の屏風である。狩野永納は狩野山雪の子で京狩野派の三代目。狩野派の典型的な屏風と思われる。

淡いピンクで美しく描かれている富士山。日本画では珍しい色合いではないだろうか。