整理するには、まず目的を定めよ……とも限らない。
楽しく、早く、いい仕事をして、人に喜んでもらって、自分もハッピーになりたい
本書はこの書き出しで始まる。
早く、いい仕事をするために必要なのが整理整頓のスキルである。というのが本書の趣旨だ。
整理の本質とは、最も重要な要素を浮き彫りにする(それ以外の要素を整理する)ことにある。
整理にあたり不可欠であり最も難しいのは、自分なりの視点を導入することである。
と、本書は述べている。
これは、「まず目的を定めよ」ということだと読んだ。
①デスク周りを整理する場合
→目的:スッキリした空間で、効率よく仕事する
→手段:検討過程の資料やメモを廃棄。
重複している資料を廃棄。
更新を重ねている資料は最終版以外廃棄。
使わない文房具を廃棄。
使用頻度が低い資料や私物は机以外の場所にしまう。など
②自分のキャリアを整理する場合
→目的:2年後までに育児家事を含むワークライフバランスをとりながら、自分がやりがいを感じる年収600万円以上の仕事に転職する。
→手段:何が自分にとってのやりがいか、自分自身を整理する。
やりがいを叶えられる仕事を見つける。
その仕事に生かせる強みを洗い出す。
強みのブラッシュアップ方法を検討。
1年後のスキルアップ目標を決定。
スキルアップの時間を捻出するため、夜のゲームの時間を1時間減らす。
これもまた、前回の「エッセンシャル思考」にあった、「目的を完全に明確にせよ」に通ずる。
結局、目的がないと整理できないのだ。
だか私は思う。結局、その目的を見つけるのが難しい人もいるのだ。
(私もそうだ)
かつて私は、「大切なものがあるから、それ以外を整理する」と思っていた。
それはそれで正しいのだろうが、もうひとつ別の道があると考えた。
それは、「整理する中で自分の価値観や基準が明確になった結果、本当に大切なものが浮き彫りになる」という道だ。
整理することで、いちばん大切なものを見つけるのだ。
たまに、「忙しすぎて整理する時間がない」という人がいる。
これはかなりの確率で、優先順位の付け方が甘かったり、勘所がつかめ切れていなかったりする人だと観察している。
こういう場合、順番が逆なのだ。
まず整理する。
すると重要なものだけが残る。
結果、重要なもののみに絞って仕事ができるようになる。
それが、仕事が早く、成果を出すと言われる人のやり方だろう。
(前回、「エッセンシャル思考」で「80対20の法則」を解説したが、2割の重要なことに集中することこそ大切なのだ)
これは捨てられない。
と思っても、厳しく自分に問いかける。
これを最後に使ったのはいつだ?
もし今これを持っていなかったら、改めてコストを払ってまでこれを入手するか?
「捨てる勇気が、価値観を研ぎ澄ます」(P81)
この本を読んでいて思ったことがもうひとつある。
自分は、自分のことを整理できているのだろうか?
例えば、
自分の好きな色は何か?
好きな形は何か?
好きな食べ物は何か?
好きな服は何か?
好きな季節は何か?
好きな動物は何か?
・・・
これらを理由ともに明確に語れるだろうか?
こういった言語化を積んでいけば、自然と自分に対する解像度が高まり、本書が言う「自分なりの視点」を持ちやすくなるはずだ。
余談だが、私も今回よく考えてみた。
例えば、色は以前から青や紺を好んでいた。
理由は青が知性を表す色だと言われているからだ。
しかし今回、それは本当かもう一度考えた。
chatGPTに問いかけたら、いろんな視点から好きな色を考えるためのヒントを出してくれた。(私はよく考えるヒントをchat GPTに出してもらう)
その結果、好きな色は白だったことに気づいた。
白。それも、雪の白だ。
私は小さい時から、雪が降る夜の静けさが好きだった。
誰も足跡をつけていない雪も、山や木々を白くする雪も好きだった。
加えて言えば、雪や白というイメージに付随する、「静けさ」を好んでいることにも気づいた。
(そして、そういう自覚なく、私はスマホやデスクトップの壁紙を雪に関わるものにしていることに気づいた)
この気づきは今後、自分のライフスタイルや仕事に「自分なりの視点」をもたらしてくれるだろう。
ちなみに、冒頭と若干矛盾するように聞こえるかもしれないが、著者は「整理した結果、大切なものが見えた」パターンも含めて、「自分なりの視点を持て」と言っていると思う。
なぜなら著者自身も仕事のなかで、最初はわからなかったキーコンセプトが試行錯誤の整理の中で見えてきた、という経験を幾度もしているからだ。
ただ捨てるだけ、しまうだけが整理じゃない。
「それが自分にとってどういう意味を持つのか」を厳しく見極めていくこともまた、整理の道なのだ。
まとめ
今回は本書記載の具体的なノウハウは捨象してまとめた。
そのあたりは本書、並びに整理術やミニマリズムの本を参考にしていただければと思う。
本書は読みやすいが、かなり奥深い本だと思う。私は折に触れて読み返し、その度に著者の思考の深さを感じている。
ぜひみなさんにも手に取っていただければと思う。
●書き手 綜一
滋賀県庁職員。児童虐待・児童養護施設を担当時、行政の重要さを実感。意欲的に仕事をした結果、「あなたみたいな人が県庁にいて本当によかった」と幾度か言っていただいた。その経験から、県庁職員も県民もハッピーになれる働き方を模索し始めた。施設担当時作成したインタビュー記事「Sai」も掲載