三菱鉛筆。学生だった時にお世話になった人も多いのでは? 今も三菱鉛筆製の筆記具を使用されている人も多いのではないかと思います。
ところで、企業名も三菱を冠していますし、三菱グループではないかと思っている人もいると思いますが、実は三菱鉛筆は三菱グループではないのです。
三菱鉛筆のサイトには、以下のような記述があります。
このように、三菱鉛筆は三菱グループではない旨、書いてあります。
ちなみに三菱鉛筆も三菱マークを使っていますが、これについては以下。
ということで、三菱鉛筆が三菱マークの商標を取ったのは、岩崎彌太郎率いる三菱グループよりも10年早かったようです。
一方の三菱グループのサイトも見てみましょう。
このように三菱グループ側も、三菱鉛筆は同グループではないと明確に記載しています。
これで、三菱鉛筆は三菱グループではないことが明らかになりました。しかし、三菱鉛筆と三菱グループの共存は問題ないのでしょうか。
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裁判所の判例を見てみましょう。今回は、「三菱クオンタムファンド株式会社事件」(2002年)の判例を使います(PDF参照)。この事件は、原告である「三菱商事」「東京三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)」「三菱信託銀行(現・三菱UFJ信託銀行)」が、被告である「三菱クオンタムファンド」に対し、同一ないし類似する表示を使用していたとして、これが不正競争防止法2条1項1号の「不正競争行為」にあたるとして同表示の使用差し止めを求めたものです。
判決は、「三菱」の名称およびスリーダイヤのマークは原告らをはじめとする企業を表すものとして著名であり、不正競争防止法2条1項2号にいう著名な商品等表示に該当するものとして差止請求を認容しました。ゆえに、被告は「三菱」の名前とスリーダイヤのマークは使えなくなりました。
この裁判で、被告は「三菱グループに属さない企業でも『三菱』の名を冠しスリーダイヤのマークを使用している会社があるのであるから、三菱の名称とスリーダイヤのマークが、三菱グループ及びこれに属する企業を表すものとして著名であるとはいえないと主張しました。
これに対し、東京地裁は以下のような見解を述べています。
これに対し、被告である三菱クオンタムファンドは「じゃあ三菱鉛筆はどうなんだ」と主張しました。これに対する、東京地裁の見解は以下。
以上、裁判所の見解でした。
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結果として、三菱鉛筆も三菱グループも、お互いに「同じグループではない」旨サイトに記載していることからも、どちらも良好な関係を築けているようです。
まあ、三菱鉛筆のほうが商標を取ったのが先ですし、三菱グループ側も筆記具事業に進出しなかったことから、「お互い様」の精神で良い関係が築けたのかもしれませんね。