銘柄分析#1 4917 マンダム②
カタリストその2 政策保有株式
前回に続き、マンダムのカタリストを挙げていこう。
今回は、マンダムが保有している政策保有株式について。そもそも政策保有株式とは何かというと、
であり、取引先と持ちつ持たれつでやっていく方策として日本企業で広く行われてきた慣行だが、政策保有株式の保有が多い会社はTOPIXから除外されるとなり、近年急速に縮減が進められている。
マンダムも主要な取引先であるマツキヨ、PALTAC、イオン、ツルハ等の株式を保有しているのだが、2022年の中計策定にあたり、これら政策保有株式の売却を2021年度末ベースでの保有額から30%以上売却する方針を示していた。(下図、マンダムレポート2023参照)
2021年3月期の簿価は8,976百万円なので、30%以上削減するためには約3,000百万円分を圧縮する必要があるが、2023年3月期の簿価は7,195百万円と、1,800百万円分の売却にとどまっている。
そのため、2024年3月期には少なくとも1,200百万円の売却が必要となるが、2023年中に現在進行形で起きている株高により実際の簿価はより大きくなっている可能性が高く、目標達成のためには少なくとも2,000百万円程度の売却が必要となるのではないか。そして余剰の売却益が増配や上方修正の要因となるカタリストになりうると見込んでいる。
カタリストその3 外国人持ち株比率
最後のカタリストとなりうる事象は、外国人保有比率の高さである。
マンダムはもともと外国人持ち株比率が高めの会社であり2018年には40%を超えていたのだが、コロナ禍の最中に売却が進み、2023年3月期には26%まで下がっている。(なお、2023年3月時点の同業の外国人持ち株比率は、資生堂が44%、花王は33%となっている。)
1回目の記事で見たように、マンダムはインドネシアやマレーシア等東南アジアでの販路を拡大しており、あと数年で国内売上比率と海外売上比率が逆転しそうなところまで来ている。少子高齢化で国内市場の縮小が見込まれるため、海外市場の開拓は会社の死活を分ける最重要課題と考えられる。それを見越してか、2023年には海外で一般的な人事制度であるジョブ型人事制度を導入した。
ここからは私の推測であるが、グローバルで企業活動を有利に進めていくためには、海外投資家に会社の成長性が評価され、買われる必要があると思われる。そのためにも、外国人持ち株比率をコロナ禍前の比率にまで高めることが、会社の次なる課題となっているのではあるまいか。
もとより40%以上外国人保有率のあった会社であり、海外投資家も認知はしているだろう。2023年4月にはアメリカのグランサム・マヨが大量保有報告書を提出している。外国人投資家による買戻しが、株価上昇のカタリストになるとみている。
まとめ(保有方針・リスク・目標株価)
まとめると、私がマンダムに期待する変化は以下の3つだ。
① 海外市場拡大による売上要因の増加
② 政策保有株式の売却による特別利益の計上
③ 海外投資家による買戻し
最後に、私なりの当銘柄の保有方針、目標株価を記載しておく。
保有方針
2023/10/31に予定されている2Q決算で、1Q以降の強い業績が続いているか確かめる。マレーシアの好調が一過性であれば厳しいが、日本の業績予想に今夏の特需は織り込まれていないので、結果的に上振れもありうる。
配当利回り2.89%に加え株主優待もあり、チャートも底値から上昇中。いずれにせよ、よほどのネガティブサプライズがない限り継続保有する。
リスク
いずれの変化要因も実現しない場合売却を検討することとなるが、その要因となりうるのは以下の事象だ。
① 想定以上に為替が円高に振れる(目安として、1ドル=130円より円高となる)
② 東南アジア地域の政治・経済状況の悪化
目標株価
当期会社予想の経常利益1,660百万に、上の政策保有株式売却益(800百万円と試算)、業績の上振れを加味して2,500百万円と推測する。EPSは56円/1株となる。PERの推定は難しいが、過去年度の高値平均30から現在の四季報予想の35を上限とすると、目標株価は1,680円~1,960円となる。