Robinhooderの株価への影響考察
はじめに
Robinhooderと呼ばれる新規参入した若い投資家たちが株価の相場を釣り上げているという声がかしこで聞かれるため、その影響力の調査を行い、考察しました。その結果を本記事にて説明します。
結論のみ先に述べると、「小型株等一部の銘柄においてはRobinhooderの影響があると思われる」となります。
Robinhooderとは
証券取引手数料なしで売買を行える点を最大の特徴とする新興オンライン証券の米Robinhoodの利用者がRobinhooderです。設立は2013年です。
出典:Wikipedia
Robinhoodはミレニアル世代の需要をうまく取り込んでおり、Robinhooderの平均年齢は31歳です。株取引は初心者でもモバイルアプリは使い慣れている若者を中心に、2020年5月時点で1300万人の規模となっています。
しかしながらRobinhooderの平均口座金額は1000〜5000ドルにとどまります。
仮に平均を5000ドル、口座数を1300万で計算すると、85Bドルとなります。
参考情報:ミレニアル世代が支持するFintechの姿【第3回】
機関投資家の資金力
機関投資家は、米国の全金融資産のかなりの量を支配しており、すべての市場でかなりの影響力を発揮している。...機関投資家は株式時価総額の約 80%を保有している。
マッキンゼーの推計によると、北米の資産運用業界は2017年末時点で88.5兆ドル以上を支配している。
引用:Introduction to Institutional Investing
上記のように米国において株式の約8割を機関投資家が保有しているとのこと。(ちなみにSmartAssetの記事によれば株式の約2割がインデックスファンドのようです。)
米国の株式総額は日経の記事によると35Tドルのため、米国における機関投資家の保有額は26Tドルとなります。
Robinhooderと機関投資家の資金力比較
上述からラフに両者の資金力を比較すると以下となります。
Robinhooder:85B USD
機関投資家:26T USD (26,000B USD)
Robinhooderの資金力は機関投資家の約1/300に過ぎません。
よって、Robinhooderは資金力においてプレゼンスはほとんどない、ということがわかります。
ただし、インデックスファンドのようにほとんど売買を行なっていない機関投資家もいるので、この資金力の差がそのままに株価への影響力ではありません。また、Robinhooderが特定の銘柄に集中し売買を行うシナリオも考える必要があります。
そのため、資金力のみでなく、個別の銘柄の出来高についても考慮が必要です。しかしながら出来高の適当な情報を入手できなかったため、代替情報を用い次章で考察します。
一般的にRobinhooderの保有者数と株価の変動に相関はみられない
Robinhooderの出来高の情報は残念ながら公開されていませんが、代わりにRobinhoodは2020/8まで個別銘柄の保有ユーザ数を公開していました。
https://robintrack.net/
などで株価と共に保有ユーザ数の推移を見ることができます。
これを元にユーザ数と株価の相関を調べたサイトがあったため、以下にその結果を引用します。
Robintrackで人気の高い上位200銘柄についてこの演習を行った後、私は、これらの銘柄のほとんどについて、株価の1日の変化と、それらを保有するRobinhoodユーザーの数の1日の変化との間にはほとんど相関関係がないことがわかりました。
出典・引用:No, Robinhood Traders Aren’t Affecting the Stock Market
この調査結果は前述の資金力を踏まえると納得の行くものかと思います。
具体的に$KOのRobinhoodの保有者数と株価は以下の通りです。
Robinhooderが参入しても株価は低迷したままです。
ちなみにKOの個人投資家保有率は15%程度であり、Robinhooderはこの一部です。
特定の銘柄においてRobinhooderの強い影響が見られる
前章において、一般的にはRobinhooderの影響力はほとんどないことがわかります。しかしながら、実際には多くのメディアや個人がRobinhooderの影響を指摘しており、トウシドリ(私)も同意です。
Robinhooderの資金力は相対的に乏しく影響力を基本的に持たないのですが、これが小型株や機関投資家が触らないような株となると話が変わります。
下図のようにKodak、Nikola、Modernaなどでは強い相関が見られます。
出典・引用:No, Robinhood Traders Aren’t Affecting the Stock Market
Modernaのグラフを見てもこれは一目瞭然です。
ただしここで注意したいのは、Robinhooderと株価に相関が見られるのみであって以下の①、②のいづれであるかはわかりません。
①Robinhooderが株価を上げているのか(影響力がある)
②株価が上がる銘柄をRobinhooderに上手く購入できているのか(影響力がない)
しかしながら、KOに見られるように株価が上昇する銘柄のみをRobinhoodが購入している訳ではないことが分かるので、①である可能性が高いのではないかとトウシドリは考えています。
Robinhooderの影響力まとめ
Robinhoodはミレニアル世代を中心とした新しい投資家の集団ですが、ここの資金力(85B)は小さく、また集団としても資金力は小さく、機関投資家(26T)の1/300の資金力に過ぎません。また、個人投資家(機関投資家が80%でありその残りである20%の4T)と比べてもその資金力は非常に小さいです。
しかしながら、特定の小型株等においてはRobinhooderの影響は大きいと考えられます。先日IPOした$AIの時価総額は10Bであり、Robinhooderが集中すれば十分に影響を与えることができるのではないかと思います。
さらに推測ですが、Robinhooderの成り行き注文を多用するといういった情報があること、Robinhooderの動きに合わせた投資家が存在すること、そしてRobinhooderにはコロナショック後の上昇相場しか知らないためにそして含み益が大きいために大胆な売買ができること、などがRobinhooderが資金力以上の影響を株価に対し与えている可能性が考えられます。
その他の相場をつくるプレーヤーについて
ここまでRobinhooderという新しい存在と、そして最大のプレーヤーである機関投資家を軸に話を進めてきましたが、Robinhooder以外の個人投資家とアルゴリズムに従うシステムトレードについても最後に軽く触れたいと思います。なぜなら、同様にこのコロナ以降で相場への新しい影響を与えていると思われるためです。
Robinhooder以外の個人投資家の影響
Robinhood以外の証券も現在売買手数料の引き下げや無料化を行なっており以下の引用のような状況にあります。
数年前に登場したロビンフッド(Robinhood)、イートロ(eToro)、フリートレード(Freetrade)などの、スタートアップによる証券取引プラットフォームは、「売買手数料ゼロ」「単元未満株が売買可能」「ゲームのようなインターフェース」などの特徴を持つ。これらのサービスは株式市場を「民主化」し、これまで証券取引とは縁がなかった顧客層を取り込むことで収益を上げている。
これを受けて、TDアメリトレード(TD Ameritrade)やイー・トレード(E*Trade)のような古参のネット証券や、フィデリティ、JPモルガン・チェースのような大手金融機関も手数料をカットし、デジタル化を押し進めることで対抗している。
引用:変ぼうする証券業界「売買手数料ゼロ」「ゲーム化」投資アプリが促す変化:eMarketerレポート
この結果、Robinhooder以外もRobinhooderと同様の特徴を持つ取引を行うプレーヤーとなっている、あるいはなっていくことが推測できます。
また、前述の通りRobinhooderの成功を見てそれを模倣することが予測できますし、さらにRobinhooderは若く、モバイルやSNSを使いこなす集団であり、その模倣の速度は非常に早いものとなるでしょう。
定量的に見ても個人投資家の影響力は増しており、市場の活動の25%が個人投資家によるものであり、2019年の10%から2.5倍の活動比率となっているようです。
参考:MARKET INSIDER
アルゴリズムの影響力
アルゴリズムに従った取引が、Robinhood等がつくるモメンタムを増幅させている可能性があるそうです。
すこし株価が上がるとそのまま吹き上げる現象が多く見られる近頃の相場に合わせたアルゴリズムが機械的にモメンタムを助長する方向に取引を行なっているというのは至極真っ当に思われます。
参考:How the Robinhood effect is moving the stock market
最後に
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