
株式投資自分なりの考え方―No.002:時価総額の見方
株価と時価総額の違い
2つの会社の株価を見てみます。
川崎地質(証券コード:4673):2439円
トヨタ自動車(証券コード:7203):2788.5円
(2023/9/22現在)
株価に大きな違いはありませんが、時価総額で見てみます。
川崎地質:約26億円
トヨタ自動車:約45.5兆円
(2023/9/22現在)
約1.8万倍になります。
例えば、株価が2倍になるには川崎地質は時価総額が約26億円増加すればいいのに対して、トヨタ自動車は時価総額が約45.5兆円も増加しなければいけません。
時価総額が小さい会社は業績次第で株価が大きく上がる可能性があると見ることができます。
2017年に設立した10兆円の運用資産があるソフトバンク・ビジョン・ファンドが川崎地質の株を万が一、数百億円買ったら、株価が10倍どころではなくなります。
しかし、ソフトバンク・ビジョン・ファンドの投資基準は人工知能など最先端のテクノロジーを駆使した「ユニコーン企業」です。ユニコーン企業とは時価総額1000億円以上の未上場企業のことをいいます。
川崎地質は1951年に設立した地質調査の専業会社なので、残念ながら投資基準にまったく適してないことになります。
機関投資家の投資基準
川崎地質はなぜ、時価総額が小さいのでしょうか。業績が悪いのでしょうか。過去10年の決算を見てみます。(図1、図2参照)


悪い決算ではありません。2023年9月時点でのPERは10倍以下、PBRは1倍以下で割安感があります。それでは、なぜ川崎地質の時価総額が小さいかというと、機関投資家に注目されないからです。
個人投資家だけでは時価総額を上げるにも限界があります。機関投資家の大口投資がなければ、時価総額を大きく上げることができません。ソフトバンク・ビジョン・ファンドで触れましたが、時価総額は機関投資家の投資基準に含まれます。
どんなに小規模な機関投資家でも上場企業で時価総額100億円未満には投資をしません。なぜなら、市場で数億円規模の売買をするだけでも株価が大きく変動するからです。
小規模な機関投資家が時価総額100億円ギリギリで買うことはないので、少なくとも時価総額200億円程度あり、将来性があれば、投資判断をすると思います。
しかし、川崎地質は時価総額が26億円で地質調査の専業会社ということで、将来的に業績が大きく伸びる可能性が低く、機関投資家にとっては魅力を感じません。
図3は過去10年の川崎地質の株価の推移です。

過去10年を見ても株価はあまり動いていません。一時的に株価が6000円を超える場面がありますが、小口の投資家が思惑で信用買いをしたように思います。なぜなら、株価の上昇と出来高が一時的に上がっているだけで、数か月で元の株価に戻っているからです。
株価は2000円から3000円のレンジ相場なので、地道に売買して利益を得る方法も考えられますが、出来高があまりに少ないので、簡単に売買ができません。
時価総額100億円のライン
機関投資家は出来高を増やし、株価の上昇に大きく貢献します。そのため、時価総額100億円未満の場合、出来高が少なくなり、株価が上がりにくくなります。
注意するべきことは時価総額200億円程度の会社です。まだ、機関投資家の投資対象内ですが、今後の業績に不透明感が強くなると、機関投資家は売却します。大口の売りがでることで、株価が下がります。時価総額100億円以上をキープできれば、株価が戻る可能性はありますが、時価総額が100億円を割ると、機関投資家が再度、買いに動きにくくなるため、株価の上値が重くなります。
その結果、時価総額100億円が壁になることがあります。機関投資家が再び注目するには数年はかかると見たほうがいいでしょう。
具体的な会社の例として「グッドパッチ」(証券コード:7351)があります。2020年6月30日に上場しました。初値は公募価格690円を大幅に上回る2757円でした。この時点で時価総額は200億円以上でした。図4はグッドパッチの株価の推移です。

グッドパッチはスマートフォンやSaaSのアプリケーションにおけるUI/UXのデザイン支援をおこなっています。上場時は増収増益傾向であったので、機関投資家の注目を浴びました。
2021年初めに大規模な増資(MSワラント)を行ったため、株価の上値が抑えられるようになりました。
図4のAの時期に増収増益の勢いがなくなる印象を与える決算発表がされました。この時に機関投資家の期待感がなくなったように思います。株価が大暴落しました。
図4のBの時期には前四半期比で増収減益の決算発表がされました。この発表による株価の下落で時価総額が100億円を割りました。
図5はグッドパットの直近1年の株価の推移に時価総額100億円のライン(赤の破線)を追加した図です。

2023年の決算発表では業績が反転の兆しが見えました。また、4月にはサイバーエジェントとの業務提携により、グッドパッチが実施する第三者割当増資の引き受けを行ったため、株価が上がりました。
しかし、時価総額100億円のラインは抜いた時期もありましたが、すぐに株価が下落しているところをみると、時価総額100億円の壁があるように思えます。
将来性のある会社なので、いつかは時価総額100億円を超えると思いますが、今年中なのか、それとも何年も先のことなのか、今後を注視していきたいと思います。
--おわり--