見出し画像

~~株式投資の我流説明~~            その7:入門編5/7 PBR、BPS

PBRとBPS

PBR、BPSは純資産が基準となる参考指標です。まず、純資産について説明します。

純資産について

純資産は決算書に記載されている貸借対照表(バランスシート)の純資産の部の金額になります。

貸借対照表は会社の資産からみた決算です。
 
【資産の部】
会社が保有する資産価値を金額で表したものです。注意することは株式でもわかるように日々、資産価値は変化します。会計基準に則り、資産の部に書かれている資産価値が時価と大きく乖離しない限りは変動しません。
 
【負債の部】
将来、会社から流出する現金の総額です。
 
【純資産の部】
資産の部から負債の部を引いた金額です。

貸借対照表の区分を簡単にまとめると図1のようになります。

図1 貸借対照表の区分

資産=負債+純資産
が成り立つように、区分されています。
 
仮に図1の状態で会社を清算します。資産を全て現金化して、負債を債権者に全て返済します。その結果、純資産だけが残ります。この純資産は株主に分配されることになります。

資産に対して純資産の割合を数値化したものを自己資本比率といいます。単位は(%)です。
 
図2は自己資本比率の例です。
左側は資産の20%が純資産なので自己資本比率は20%になります。
右側は資産の60%が純資産なので自己資本比率は60%になります。

図2 自己資本比率の例

自己資本比率が高ければ、負債が少ないので財務体質は健全といえます。
 
しかし、上場企業の場合、自己資本比率があまりに高すぎると、経営効率が悪いと投資家から悪いイメージを持たれることがあります。
 
金融機関の場合、顧客の預金(個人でいえば預金口座に預けているお金)は金融機関にとっては負債になるので、自己資本比率が低くなります。

「会社が倒産したら、株式は紙切れと同じだ」という言葉を聞きますが、倒産時の貸借対照表の区分は図3のようになります。

図3 倒産時の貸借対照表の区分

資産を全て現金化しても、負債を債権者に全額返済できない状態です。
 
この時には純資産はマイナスとなります。これを債務超過といいます。
 
倒産時に資産を現金化して、分配されるのは債権者が最優先なので、株主に分配されることはないです。そのため、「会社が倒産したら、株式は紙切れと同じだ」ということになります。
 
債務超過だからといって、倒産になるわけではありません。純資産の部をプラスに戻せる可能性があれば、会社は存続できます。
 
例えば、債権者に負債の返済を一部免除してもらう(負債の圧縮)、新株を発行して売却する(純資産の増加)などの対応があります。
 
上場企業の場合、債務超過になった時点で、原則1年間で解消されない場合、上場廃止になります。

PBRとは?

PBR(Price Book-value Ratio)とは株価純資産倍率といいます。
PBR=時価総額÷純資産で計算します。
単位は(倍)です。
 
時価総額は会社の市場価格です。
 
PBRがN倍の時の関連図が図4になります。

図4 PBRがN倍の時の関連図

PBRは時価総額が純資産の何倍かを知ることができる参考指標です。
時価総額と純資産の金額が同じであれば1(倍)になります。
債務超過の場合にはPBRは“なし”になります。
 
PBRの数値が小さいほど株価の割安感が強くなります。割安感の定理はありませんが、PBRが1(倍)未満の場合、会社を清算した時の株主への分配額が株価を上回るので、収益性がある会社であれば割安といえます。
 
会社の存続性が疑われる場合にはPBRが1(倍)未満でも割安とはいえません。

PBRの変動要因

PBRは株価と純資産の変動によって数値が変わります。発行済み株式数が変わらないという前提でPBRがどのように数値が変わるか表1にまとめました。

表1 PBR:株価と純資産の関連性

株価が2倍、3倍、‥‥になれば、PBRは2倍、3倍、‥‥になります。
逆に株価が1/2倍、1/3倍、‥‥になれば、PBRは1/2倍、1/3倍、‥‥になります。
 
純資産が2倍、3倍、‥‥になれば、PBRは1/2倍、1/3倍、‥‥になります。
逆に純資産が1/2倍、1/3倍、‥‥になれば、PBRは2倍、3倍、‥‥になります。
 
すなわち、
株価が上がる、または純資産が減るとPBRは高くなる(割高感がでる)
株価が下がる、または純資産が増えるとPBRは低くなる(割安感がでる)
ということになります。

PBRの注意点

【資産の部】の説明で少し書きましたが、資産の部に書かれている資産価値が時価と大きく乖離する場合は資産価値を更新します。
 
純資産は資産の部から負債の部を引いた金額なので、資産の部が変動すれば、純資産も変動します。その結果、PBRも変化するので、PBRだけで割安感を判断するのは危険です。
 
資産価値の更新の例として2021年度と2022年度のシャープの貸借対照表を見てみます(図5)。

図5 シャープ貸借対照表(2021年度と2022年度)

シャープは2022年度にディスプレイ事業の子会社等の資産価値が大きく下がっていたため、約2205億円の減損損失をしました。資産が減り、それに伴い純資産も減りました。
 
前年の2021年度の純資産が4692億円に対して、2022年度は2223億円と半分以下になることで、PBRは2倍以上に上がりました。

BPSとは?

BPS(Book-value Per Share)は一株当たりの純資産です。
BPS=純資産÷発行済み株式数で計算します。
単位は(円)です。
 
発行済み株式数は会社の全株式数です。
 
BPSの関連図が図6になります。

図6 BPSの関連図

同業種と比較した場合、BPSが高いほど、企業の財務状況は良いといえます。

PBRとBPSの関連式

PBR=時価総額÷純資産
BPS=純資産÷発行済み株式数
ですので、
 
PBRとBPSを掛けると、以下のように純資産が消えます。
PBR×BPS=時価総額÷発行済み株式数
になります。
 
時価総額=株価×発行済み株式数
を代入すると
 
PBR×BPS=株価
すなわち
PBR=株価÷BPS
になります。

次回はこれまで説明した参考指標から適正株価を導く方法を説明します。

=つづく=



次回は入門編6/7:適正株価


いいなと思ったら応援しよう!