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~~株式投資の我流説明~~        その9:入門編7/7 適正株価の具体例

適正株価を導く

実際にYahoo!ファイナンスの参考指標を使用して、「三ツ星ベルト」の適正株価を導いてみます。三ツ星ベルトは伝動ベルトの大手企業で、高配当銘柄でもあります。
 
やり方は「その8:入門編6/7 適正株価」の通りに進めていきます。

三ツ星ベルトの成長性を判断する

図1は三ツ星ベルトの株価と参考指標です。

図1 Yahoo!ファイナンスで記載されている参考指標

参考指標から、PER=15倍以上、PBR=1倍以上なので、高成長株でなければ、割高感があります。

三ツ星ベルトの成長性を知るために過去10年間の決算を調べてみます。有価証券報告書には過去の決算が記載されているので、そこから調べることができます。
 
上場企業のホームページには過去の有価証券報告書を見ることができます。有価証券報告書の1ページ目は表紙、2ページ目に過去5年間の経営指標が記載されています。
 
有価証券報告書の雛形は同じなので、他の企業を調べるときも同じです。ただし、過去5年間の業績を見たいときには四半期のものではなく、通期のもので見てください。

図2は三ツ星ベルトの有価証券報告書の2ページ目の左上部を抜粋したものです。

図2 三ツ星ベルトの有価証券報告書の2ページ目の左上部を抜粋

直近の有価証券報告書より5年前の有価証券報告書を見れば、さらに過去5年分の経営指標を見ることができるので、過去10年の決算を集めることは容易にできます。
 
今回はPERとPBRを使って、適正価格を導くので、純利益と純資産が含まれた決算が必要になります。

表1は図2の赤枠の経営指標の金額と今期の業績予想を加えた過去10年分の決算表です。

表1 三ツ星ベルトの決算

純利益は期によって波がありますが、上昇基調とはいえないので、低成長株と判断できます。高成長株ではないので割高感があります。
 
しかし、2023年3月期の業績予想は最高益になっています。決算説明資料を見ると主要因としては円安によるものです。

図3は三ツ星ベルトの純利益とドル円(年間平均)を年度で示したグラフです。

図3 三ツ星ベルトの純利益とドル円(年間平均)のグラフ

円安になると純利益が上がりやすい傾向があります。

今後、毎年5%程度、円安が進むのであれば、安定成長株と判断することもできますが、今のところ考えにくいので、低成長株と見なします。

三ツ星ベルトの適正株価を導く

PER=15倍とPBR=1倍の割安基準株価を算出してみます。
 
割安基準株価=割安基準の参考指標÷現在の参考指標×現在の株価
で求めることができます。

【PER=15倍の割安基準株価】
割安基準の参考指標は15
図1より
現在の参考指標は15.83
現在の株価は3790
なので

割安基準株価=15÷15.83×3790
      =3591.28円
 
【PBR=1倍の割安基準株価】
割安基準の参考指標は1
図1より
現在の参考指標は1.27
現在の株価は3790
なので

割安基準株価=1÷1.27×3790
      =2984.25円
 
【三ツ星ベルトの適正株価】
現在の株価とPER及びPBRの割安基準株価を当てはめたものが図4になります。

図4 三ツ星ベルトの割安基準株価

低成長株の適正株価はPER及びPBRの割安基準株価未満ですので、現在の三ツ星ベルトの適正株価は2984円になります。
 
 
今回は割安基準株価をPER=15倍、PBR=1倍にしましたが、損失リスクをできるだけ取りたくないという場合は、PERとPBRをもう少し低めに設定してみる方法もあります。ただし、条件が厳しくなるので、条件に合った銘柄を見つけるのが大変かもしれません。

適正株価の誤差

表2は年度別の適正株価と株価の高値と安値を比較したものです。適正株価が安値と高値の範囲内であれば誤差はなし、範囲外であれば誤差率を示しています。

表2 年度別三ツ星ベルトの適正株価

PERとPBRだけで適正株価を導いても、誤差率はそれほど大きくないことがわかります。2020年は新型コロナの影響が強かったため、適正株価との誤差率は大きくなっていると考えられます。
 
低成長株なので、将来予想がしやすい分、適正株価になりやすいのだと考えられます。高成長株だと、将来予想が難しいので、誤差率はかなり大きくなる年もあると思います。

適正株価の注意点

純利益が赤字の場合、PERは使用できません。
通期予想を発表しない会社もあります。
 
その場合は過去の決算や決算説明資料などを参考にして、自分で通期の業績予想を立てなければいけません。
 
楽な方法としては証券会社や金融アナリストが発表している中長期の利益予想から、適正株価を導く方法も考えられます。ただ、適正株価を導かなくても、証券会社が目標株価を示していると思います。競馬予想と同じで記事内容には説得力がありますが、予想通りになる確率は高いとはいえません。
 
リスクを一番少なく済む方法は適正株価を導くことができない会社の株を買わないことです。

これで入門編は終わりです。
次は基本編(全4回):株式投資のリスク管理を説明します。

=つづく=




次回は基本編1/4:株式投資のリスク




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