死にたくなければ、貧乏人は獣医師を目指すな
これは獣医師4年目の元貧乏獣医学生が、過去の自分を救うつもりで書いた独り言です。文字ばかりで読みにくいかもしれませんが、ご容赦ください。
個人的な経験や解釈を多分に含むため、一意見として、俯瞰して読んでいただけると幸いです。
気分を害される方もいるかもしれませんので、客観的に判断する自信のない方はページバックをお願いします。
金が無いのに獣医大学を目指す人へ
学費と生活費を自分で賄いながら獣医大学に卒業まで通うのははっきり言って"地獄"です。
他の道があるのなら、もっと効率よく稼げる業界にピボットしなさい。
あなたがイメージする"獣医師のやりがい"みたいな価値観は、6年の貧乏学生時代に全て消えます。
金がないまま獣医大学に入るとどうなるか、想像したことはありますか?
獣医学科は医学部と同等の内容とカリキュラムで勉学に励むことが求められます。
通常でもついていくのがやっとなレベルの授業に加え、貧乏なあなたは学費と生活費を稼ぐために、授業以外の時間はアルバイトに捧げなければなりません。
辛くない仕事を選べば良い?
→辛くない仕事は大抵給料も安いです。長時間働いた結果、勉強時間が失われては元も子もありません。
給料が良い仕事を選べば良い?
→給料が良い仕事は大抵心身の負担が大きい仕事だったり、頻度が不安定な場合が多いです。必死に働いた結果、心身ともに疲れ切ったまま勉学に励めると思うのは、自分を過信しすぎですし、その仕事を安定して得られないようでは、生活を脅かします。
あなたは高確率で、安月給かつ長時間労働の仕事をするか、心身と生活を不安定にさせる仕事をするかを選ぶことになります。
サークル活動などの人脈作りにも励めないあなたには、余程運が良くない限りは、人伝に条件の良い仕事を得る機会など巡っては来ないでしょう。
この生活は試験前などはもっと酷いことになります。
同僚の学生が試験を理由に次々と仕事を休む一方、あなたは生活のために仕事を休むことはできません。
それどころか、同僚がいない分、あなたには普段以上の仕事ぶりが求められます。
ただでさえアルバイト三昧で勉学に励むのが難しい生活だというのに、試験前の詰め込みは分が悪い体力勝負となることでしょう。
毎期10万円近い教科書代の購入のために、長期休暇は良い稼ぎ時です。勉学の負担がない分、全体力をアルバイトに注ぐことが可能です。
ここで稼いだ分、学期中の生活が楽になるのですから、無理できる時に無理して、仕事での信頼も勝ち得ていくのが良いでしょう。
経済的に豊かな学生が長期休暇に旅行したり短期留学したりする姿を目にすることもあるかもしれませんが、あなたには他人と比較している余裕など無いのですから、自分のことだけ考えるべきです。
そして高学年になって、動物業界の解像度が高まる
5〜6年生になって就職について考える時間が増えると、あなたのこれまでの頑張りを評価してくれる場を選ぶことになります。
求人票を見たり、アルバイトの隙間に見学実習に行ったりして就職先の値踏みをするのです。
そこで改めて、この業界の給料が"それほど高くはない"と思い知るのです。
ここまで苦労して学生生活を耐え抜き、痛いほど"金と時間の価値"に気づいたあなたには、この現実が重くのしかかります。
「6年間辛苦に耐えたのに、この程度の就労条件しかないのか」
「青年時代の6年間を捧げて得られた結果がこんなもんか」
「成績も良くない自分が、充実した就職先を選ぶことはできないよな」
などと、大学に入った直後から耳が痛いほど聞かされてきたはずの獣医師業界の現実に、改めてショックを受けるのです
貴重な時間と体力を投資して得たものが期待外れだった時の絶望感は実際に経験してみないとわからないかもしれません。
人によってはそれで自殺する人もいますし、私自身、何度も頭をよぎったことがあります。
動物への溢れる愛情があなたを勇気づけることもあるかもしれません。
しかしその美しい心がけも、6年間の金と時間に追われる日々に忙殺されないことを祈るばかりです。
「道徳なき経済は罪悪であり、経済なき道徳は寝言である」
二宮金次郎が言ったとも言ってないともされる言葉ですが、この言葉をよく覚えておきなさい。
それでも獣医師になりたいなら
お金がなくても貧乏でも獣医師になりたいなら、国立を目指してかつ、学費免除を受けたり、一旦就職して、お金を貯めてから入学するのも悪くないと思います。
獣医大学には、30代や40代で入学する方も普通にいます。
業界さえ選べば就職で不利にならずに済みますし、年齢が不利になるような業界は獣医師免許がなくても目指せることも多いです。
わざわざ18や19で大学に通わなければならない理由はありませんし、お金がないなら、職業訓練校などに通って、別の技術とお金を貯めた後で目指しても遅くないと思います。それも十分あなたの武器です。
「入る大学を間違えた」と後悔してももう遅いのです。
5〜6年生になったタイミングで、この後悔を後悔のままにしないために何ができるかを、ここで改めて自分自身に問いかけ、戦略を練ることでしか明るい未来は得られません。
その苦しみから自殺を選ぶぐらいなら、貧乏のまま獣医大学に入るのではなく、獣医になれなかった後悔を抱えたまま、他の業界で生きなさい。
ここはあなた方の来る業界ではありません。
残酷な資本主義と向き合える人間だけの世界です。
動物への愛情を保ったまま獣医師になりたければ、学費と生活費と勉強時間のアテを作って出直して来なさい。
すでにこの業界に片足を突っ込んでしまった貧乏獣医学生へ
今は金を稼いでも、学費や生活費で全て溶けて、何のために頑張ってるのかわからなくなることもあるかもしれません。
特に5年生〜6年生あたりで就活と卒論が迫る段階はキツいと思います。
業界研究をすればするほど、この業界の閉塞感とブラック体質に吐き気がするはずです。
しかし、それも就職するまでの辛抱です。
思っていた以上にお金と時間が生まれ、奨学金の返済に充てても余るお金と、好きな勉強に好きなだけ打ち込めるほどの時間が心に余裕をもたらしてくれます。
これまで、経済的に豊かな学生達が旅行やら娯楽やらのために適度に働くのを横目に、生活費と学費のために全時間を注いで働き続けるのはさぞ辛かったことでしょう。
毎日を必死に生きても学校の成績が思うようにならないこともありますよね。
まるであなたの頑張りを誰も評価してくれないように感じることもあったかもしれません。
でもどうか、今だけ、国家試験に合格し、就職先が決まるまでの毎日は、
あなたが頑張ったことをあなただけは褒めてあげてください。
「今日も一日よく頑張ったな」
と褒めてあげてください。
僕は自分が挫けそうになった時に、死んだ父が仕事後に呟いていたこの言葉を一人で口にしていました。
誰かと比べるのではなく、自分だけの絶対評価で生き抜く術を身につけましょう。
どうせ、社会に出たら、誰も皆の生き方を評価してくれはしないのですから、今から自分に満点をつける練習です。
就職すれば、金も時間も余るようになります。
好きなことに好きなだけ時間を使えるようになるまで、後少しだけ生き抜きましょう。
貧乏獣医学生にとって社会人生活は薔薇色、ですがいくつか注意点があります
それは「給料と労働条件が充実した就職先を厳選すること」です。
あなた方のような金銭感覚を有した貧乏学生には、いわゆる"獣医師のやりがい"みたいな価値観には反吐が出ることでしょう。
"金"と"時間"に対してシビアになったあなたが、"やりがい"を語る組織で働いても決して幸せにはなれません。
個人的な意見ですが、院長社長従業員の人柄や雰囲気で選んではいけないと思います。
動物医療業界で働いていた人間の離職理由の大半が"人間関係の問題"です。
これを避けられる業界で働こうとするのは当然だと思います。
しかし、"関係構築に問題のある人間を、数日の見学で判断する"という行為にほとんど意味はないと思います。
数日の見学実習や人伝のポジショントークで判断できるのは、組織のシステムとルールに過ぎませんし、法律は職場の雰囲気や従業員の人柄まで保証はしません。
主軸に据えたはずの人間関係の課題を避けられなかった上に、「労働条件も職場環境も酷い職場」で働くのが最悪のシナリオです。
獣医師を目指すなら"まずは最悪の可能性を潰す"行動を心がけるべきです。
上辺だけの情報で物事を判断するのは今すぐやめなさい。
法によってあなたに保証されるのは、給料と労働条件だけです。
最後に
私も貧乏母子家庭で育ち、学生時代にはアルバイトに明け暮れていました。
最初はキープできていた成績も徐々に影を落とし、気づけば再試験の常連になっていました。
それでも獣医学の勉強が好きで、なんとか卒業まで辿り着きましたが、上述したように細かな計画と絶望を繰り返した辛い学生時代でした。
最悪だったのは、在学中に母が病で倒れたことです。
母に十分な医療と看護を施してやりたくても、金も時間も限界でなにもしてやれなかった無力な自分と、過去に下した自分の選択を心底恨みました。
幸い母は今でも生きてくれていますが、あの時の絶望感は私の価値観を一層変えたと思います。
この資本主義の世界では、娯楽も、勉学も、時間も、命も、すべては金次第です。
あなたのお金と時間を大切にする価値観は、獣医師免許なんかよりももっと価値のある資産です。
免許は捨てても、その価値観と命はどうか大切にしてください。
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