産業観光とワーケーションの新局面
POTLUCK FESのまとめシリーズ。今回のテーマは「産業観光」。POTLUCK CARAVAN尾州、そして「ひつじサミット尾州」の開催直前に、予習も兼ねて振り返り。
登壇者の3名
・岩田眞吾さん からは「ひつじサミット尾州」のお話し
・島田由香さん からは「梅ワ―ケーション」のお話し
・三谷航平さん からは、北海道上川町の取組のお話し
※詳細はリンク参照
ひつじサミット尾州が地域にもたらしたコト。
まずは岩田さんから。
「尾州」は愛知と岐阜にまたがる、かつての尾張の国。愛知県一宮市・津島市・岐阜県羽島市にわたるエリアで、木曽川、長良川、揖斐(いび)川という「木曽三川」があり、その水を生かした繊維業が盛ん。ウールの産地として名高い世界三大毛織物産地。
※上垣も尾州ウールのパーカーを愛用しているが、本当に肌触りが良くて温かい。匂いもつかない。昨年買ってよかったものランキング3位内には確実に入る。
しかし、コロナを機にリモートワークが一般化すると、ビジネスパーソンはスーツを着なくなった。さらに、外に出なくなったことでおしゃれ着自体の需要が減った。そして、そんな中でも実は尾州エリア内の企業は横横で連携があまり取れていなかったという。(尾州に限らず以外と地域内では横連携はできていない事の方が多い)
そこで、モノを作るだけでなく、横横で連携し人と交流するイベントを仕掛けようということで始まったのが、ひつじサミット尾州。
洋服ができるまでは、糸を紡ぐ、撚る、織る、編む、染める・・・と多様な工程があり、それぞれが別の企業が工場を設け役割を担っている。それを同じに日に各工場に足を運ぶことで、見学ができるオープンファクトリーが「ひつじサミット尾州」だ。
さらに工場見学だけでなく、「ひつじ」という緩やかな象徴の下、羊の丸焼きまで食べられるというのがひつじサミットの良いところで、家族友達とも楽しめる開かれた場所でもある。
そして、「人が来るならモノを作って売ろう」とい事で、各企業がファクトリーブランドを作るきっかけにもなったという。
、、、ここで私が感じたひつじサミットの凄さは、①域外の人を呼び込む、②域内の事業者を繋ぐ、③それにより各企業の新たな動きに繋がる、ことが、一つのイベントの実施を通じて実現されていること。
一過性ではない「一石X鳥」のイベントだと感じた。
和歌山県紀南(きなん)の一次産業ワーケーション
続いて島田由香さん。
日本の梅の30%を生産している和歌山県南部町、25%を生産しているお隣隣田辺市。そんな紀南エリアで実施しているのが「梅ワーケーション」。
「1億2千万人が1日一粒梅を食べる」そんな世界を目指しているという、島田さんが手掛ける「梅ワー」のキーワードは「ありがとうの循環」だという。
南部町の梅農家が困っている事、それは、収穫の時期に人が足りないこと。ただ、収穫の時期だけに足りていないから、通年で雇う事も出来ず、時給を上げて募集をかけても人が来ないという課題を抱えていたそう。
そこで「梅ワ―ケーション」では、東京から来たワーケーション人材に、収穫体験として農家をマッチングしているとのこと。
参加者は去年は138人、今年は238人とここ1年でも増加している。さらに、参加者全員が、農家からめちゃくちゃ感謝されることに加え、自分の貢献が収穫した梅の量という形で可視化されることに感動するとのことだ。
都会の人が土に触れる、地域に触れ合うことで、well-beingを高める5つの項目をすべて満たすという。そしてそれにより本業のクリエイティビティにも大きく寄与したとのこと。
和歌山には行ったことないので行かねば、と思いつつ、私自身、葡萄畑に、草刈りのお手伝いをしに行った記憶が蘇った。実際、農家が当たり前にやってる「草刈り」とかでさえも、普段会社でパソコンに向かって仕事をしている自分にとっては非日常な体験であり、感謝もされ、充実した経験だった。(この辺り、文字で書いても上手く言語化できないんだよなぁ・・・)
上川町の取り組み
最後は上川町東京事務所の三谷さん。
そもそも人口3000人の小さな町が、東京事務所を構えていることに、北海道の田舎出身の自分は驚いたのだが、この町は行動力と対話力が本当に凄い。コロンビアやニューズピックをはじめ東京の企業とも連携協定を巻いて、次々と町に変化を起こしている。
「大雪山の自然とともに生きる」ことを中心に、景色が良い事、ご飯が美味しいのは当たり前の北海道。それに加え、地域産業を盛り上げ暮らしを、エンタメ化する事を目指しているという。
観光業は、ホストとゲストが明確化してしまう。それでは限界があるので、受け入れる人も豊かになる観光や、うちも外を関係なく産業を共に作っていく共創型の観光・ワーケーションを作ろうとしている。
そんな上川町は、町長が「前例を作るな」というほどアグレッシブな事もあり、町の人皆本当にが生き生きしているようだ。そしてそれを言い切れる自信も凄い。
その町の人の雰囲気は、丸井グループのリーダーシップ研修で来た東京のビジネスパーソンも驚いたとのこと。
産業観光の未来
本セッションで私が感じたこと。「産業観光」という言葉には、「産業」というB2B的な言葉と、「観光」というB2C的な言葉が混ざり合っているが、この越境感が、個人のWell-beingにも、企業としての生産性にも、地域の経済にも寄与するのだと思う。
一方で、POTLUCK CARAVANの企画をしていて感じるのは、この「出張と旅行の間」ともいえる産業観光・ワ―ケーションは、大企業に所属している従業員からすると、「出張申請」「上司への説明」というハードルが残る。
勿論、個人でお金を払ってでも行くという熱量の高い人が増えるのに越したことはないのだが、より多くの人に「取り合えず一度体験させる」ために、POTLUCKとしても何ができるか考えていきたいなと思った。