討論家による東洋建設vsYFOの討議評価
2023/6/23 初稿
昨年より私は東洋建設とYFOの議論を追いかけているが、非常に膨大なやり取りがあり、少しずつどういう論点が今あるのかが理解しづらくなっている気がしている。
開示資料は非常に分量が多く、また数も多いため読むだけでもめちゃくちゃ時間がかかるが、私は投資家であることに加えて討論家であり、双方の主張を聞いた上でどちらの主張がより妥当なのかを判断したいと考えているため、開示資料はとても時間をかけてすべて読み込んでいる。
今回、私は討論家として、双方の主張を吟味したうえで、どちらの主張に理があるかを分析し、ディベートのように勝敗を付けてみている。
ディベートの勝敗は「一般的な教養のある市民」により裁定されるため、双方の主張は最大限勘案しつつ、自身のもつ知識を合わせて判断するものである。それゆえ、判断を下すときは私の価値観が入っていることは先に断っておく。
ちなみに感想からいうと双方、相手の反論を踏まえた議論の展開ができておらず、完全に反論するには至っていない論点が多いと感じるが、それでもYFOの方が現時点(2023/6/23時点)ではわずかに優勢であると感じている。
本件の経緯は今回の主要なトピックではないため割愛するが、大まかな流れを最後のコラムに記載したいと思う。(まだ疲れていてできていないが、少しずつ更新する)
議論の進展に従い、本稿も少しずつ更新予定である。
それぞれの公式HPは以下である。興味のある人はぜひ一次情報を確認してほしい。
なお本コラムについては、投資勧誘を目的にしたものではない。あくまで個人の考えであり、実際に投資を行う際は、当コラムの情報に依拠して投資判断を下すことは控えていただき、投資に関するご決定は皆様ご自身の判断で行うようお願いする。
東洋建設特別委員会によるTOBへの意見「反対」は妥当な結論か
投資家/討論家の見解
特別委員会の主張は一部合理的なものも存在するが、最重要であるTOB価格に関する意見がYFOに論破されており、なぜ少なくとも応募推奨しないのかは不明
・特別委員会の言い分もわからなくはないが、最も重要なTOB価格の主張つまり、「TOB価格1,000円は積極的にサポートできない」はYFOに論破されており、妥当性は一切ない。(①ならなぜ700円はサポートできたのか、②YFOを責めるときに使った1,000円が妥当なら700円をサポートしたときにそれを信じた個人投資家への配慮の足りなさ、これは私の所感だが③1,000円近辺の株価推移はそもそもYFOによる改革期待とニュースが出ているため、それをベースにしたプレミアム~3%は低い、というのは主張としては弱い)
・特別委員会の主張する「事業崩壊のリスク」も崩壊までは言えなくとも、事業に一定のネガティブな影響が出るのは、ある程度合理的と言え、またYFOもからも効果的な反論はない。
・YFOの資力が不明確で蓋然性が分からないとの主張はYFOから完全な反論はできていない。しかし届出書においてはそういったものが結局添付されるため、添付されるまでは判断を留保してもいいのでは。(いずれにせよ現時点で大きな論点ではないとの理解)
・YFOによる法令違反の疑惑については、法律の専門家ではないため評価不可。法令違反については、「事業崩壊のリスク」の一論拠として扱う。(モラル的な問題は非常に難しい)
・事業崩壊のリスクは否定できない。しかし投資家/討論家としては、TOBによりキャッシュアウト(現金を対価に株式を強制的に買い上げること)される少数株主にとっては、享受できないTOB後の事業運営より実際に還元されるTOB価格の方が重要と考える。
YFOの「東洋建設ガバナンス上の問題点・疑惑」という主張は妥当なのか
投資家/討論家の見解
東洋建設の対応は確かにYFOに対しては差別的であった。一般株主の利益よりも、20%程度しか株式を保有しないインフロニアグループの利益を優先しているように見える。
・そもそも特別委員会がTOB価格1,000円をサポートできないとする主張は少し不自然であり、なぜインフロニアの770円はサポートできたのか、という疑問には真正面から回答できていない。(不正なプロセスはないとの主張を繰り返すのみ)そのためインフロニアへの特別の配慮があったと邪推されても仕方がない状況と考える。
・「インフロニアと東洋建設(orその役員)の間で非公開化後、東洋建設役員がインフロニアの取締役に就任する密約が交わされたのではないか」という点はそこまで問題としては評価していない。統合後に親会社となる会社の取締役会に参画し、東洋建設の意見を反映することは重要だからである。
・ただし、経営統合の在り方については賛同表明前に議論を詰めるべき事項であると考える。東洋建設は非公開化後インフロニアの子会社となり、交渉力は全くなくなる。そのため「賛同表明」という交渉カードが残るうちに経営統合契約を議論すべきであり、この交渉戦術はFAやLAからのインプットが必要だっただろう。
・なおもし当該統合契約が締結されていれば、公開買付届出書の「(6)本公開買付けに関する重要な合意」に開示されるはずであり、そのような統合後の契約は存在しない様子である。
・東洋建設はYFOの提案は具体的でなく、取締役会等に図るレベルではなかったとの主張である。インフロニアとYFOからの提案の具体性については、これまでの協業歴が違うため、違うのは当然と主張しておりこれは一定程度合理的であると考える。YFOがインフロニアより具体的な提案を求められるのは一定程度合理的な主張であるといえる。
・これに対するYFOからの効果的な反論はなく、ここにもYFOから反論が欲しいところである。なお投資家/討論家の所感としては、①大株主からの提案を特別委員会に諮らない対応は少し違和感があり、②投資計画やPL将来予測、BS将来予測を凌駕するこれまでの協業経験というのはよくわからない。
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