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第7章 モンゴル統一と新たな戦い(1207年-1215年)

7.1新たな戦いへの決意(1207年)

焚き火の周りで、モンゴルの将軍たちは静かにチンギス・ハンの言葉を待っていた。彼は炎を見つめながら、ゆっくりと口を開いた。

「金国は、これまでモンゴルの部族を操り、我々を争わせてきた。だが、もはやその時代は終わった。」

スブタイが鋭い視線で地図を見つめる。

「金国の強さは、その規模にある。広大な領土を持ち、数十万の兵を動員できる。しかし、それは同時に、奴らの弱点でもある。」

ジェルメが頷く。

「補給が必要ということか。」

「そうだ。」チンギス・ハンの目が鋭く光る。「敵が弱るのを待つのではない。我々が弱らせるのだ。」

7.2 西夏への進軍(1207~1209年)

金国を攻める前に、モンゴル軍はまず西夏(タングート)へ侵攻した。西夏は金国と関係が深く、戦争になれば金国の援軍を受ける可能性があった。これを防ぐため、モンゴル軍は先手を打った。

「敵の支援を断つ。それが勝利の第一歩だ。」

1209年、モンゴル軍は西夏の首都興慶府(現在の銀川)を包囲した。西夏軍は城にこもり、徹底抗戦の構えを見せた。

「籠城戦では奴らに分がある。」スブタイが険しい表情を浮かべる。

「ならば、水を断て。」チンギス・ハンは冷静に言った。

モンゴル軍は黄河の堤防を決壊させ、城を水浸しにした。西夏軍は混乱し、ついに降伏を申し出た。西夏王はモンゴルの宗主権を認め、莫大な貢納を約束した。

ジェルメが口元をほころばせた。

「これで金国は西からの援軍を得られなくなった。」

「だが、これだけでは終わらん。」チンギス・ハンは静かに言った。「金国を本気で揺るがすには、さらに追い打ちが必要だ。」

7.3 交易路の制圧(1209~1210年)

モンゴル軍は次に金国と西域を結ぶ交易路を制圧し始めた。塩、鉄、布、武器――すべての物資が戦争の命綱だった。これを断つことで、金国の経済に打撃を与えた。

スブタイが報告する。

「交易隊の襲撃は順調に進んでいます。特に馬蹄山(現在のオルドス地方)の要衝を制圧したことで、金国の補給路は大きく寸断されました。」

ボオルチュが笑いながら槍を地面に突き立てた。

「つまり、奴らを飢えさせるわけだ。」

チンギス・ハンは頷く。

「戦わずして敵を弱らせるのが、最良の戦いだ。」

7.4 金国の動揺(1210年)

金国の宮廷では、連日のように悪報が届いていた。

「モンゴル軍が西夏を服属させたと聞きました。」

「それだけではない。交易路が寸断され、南の宋とも交渉を始めたという噂が…。」

金国の皇帝衛紹王(ウェイ・シャオワン)は苛立ちを隠せなかった。

「蛮族どもが、我らを愚弄するか!」

彼は大臣たちを集め、対モンゴル戦略を議論した。しかし、金国の内部には問題が山積していた。

「現在、南宋との戦争で軍を動員しており、すぐに大軍を派遣するのは難しい状況です。」

「ならば、和議を結ぶべきでは?」

この発言に、廷臣たちは静まり返った。

「和議だと? あの蛮族と?!」

しかし、金国の中には、すでにモンゴルの脅威を認識し、現実的な解決策を模索する者もいた。だが、彼らの声は強硬派によってかき消されてしまった。

金国は、モンゴルを甘く見ていた。

7.5 開戦前夜(1211年)


モンゴル軍は着々と準備を進め、ついに金国領へと進軍を開始した。

「奴らは未だに我々を脅威とは思っていない。」スブタイが言う。

「だが、それも長くは続かん。」チンギス・ハンの目が鋭く光る。

1211年、モンゴル軍はついに金国の領土へ侵攻を開始した。目標は、金国の北辺を制圧し、さらなる打撃を与えることだった。

「これまでの戦いは序章に過ぎない。」チンギス・ハンは戦士たちに告げる。

「今こそ、本当の戦いが始まる。」

7.6 金国侵攻と野狐嶺の戦い(1211年)

1211年、ついにモンゴル軍と金国の大軍が激突する時が来た。
モンゴルは遊牧民特有の戦術を駆使し、金国は組織化された重歩兵と強力な弩兵を擁する。
この戦いの舞台となるのは、万里の長城の防衛拠点であり、金国軍の要衝となる**野狐嶺(やこれい)**だった。


7.7 モンゴル軍の南下と金国の迎撃

モンゴル軍は、草原を越え、一気に金国の北部へと侵攻を開始した。
チンギス・ハン率いる軍勢は、数万人の騎馬軍団を編成し、広範囲に展開しながら金国の防衛線を探っていた。

「奴らの城壁は厚いが、それだけでは勝てん。」
スブタイが地図を広げ、指を走らせた。

「金国の弱点は、防衛戦に頼りすぎていることだ。」
ジェルメが頷く。

「つまり、敵の防衛線を崩し、戦場へと引きずり出せば、我々の機動力が活きる。」

チンギス・ハンは地面に木の枝で戦略を描きながら静かに語る。

「金国は正面からの大軍同士の戦いを望んでいる。ならば、そう思わせたまま、こちらの戦場に誘い込むのだ。」


7.8 金国の大軍と防衛戦略

金国皇帝衛紹王は、モンゴル軍の侵攻を受け、大軍を動員した。その数、およそ30万。
金国軍は、遊牧騎兵に対抗するため、重歩兵を前面に配置し、弩兵をその後ろに控えさせた。
さらに、騎馬部隊も側面に配備し、万全の態勢を整えていた。

金国の将軍・**完顔承裕(ワンヤン・チャンユー)**は、野狐嶺の地形を利用した防衛戦を計画した。

「敵は騎馬隊だ。ならば、我らの厚い防衛陣を突破できるはずがない。」

金国軍は、高地に陣を敷き、弩兵を配置し、モンゴル軍が近づくと一斉に矢を放つ戦術をとった。
モンゴル軍が前進すれば、弩兵の矢の雨が降り注ぎ、騎兵の突撃を無力化できると考えていた。

しかし、完顔承裕はモンゴルの真の脅威を理解していなかった。

7.9 包囲の罠とモンゴルの一撃

モンゴル軍は、金国軍を巧みに谷間へと誘導し、そこで一気に包囲を開始した。
両翼から待ち伏せていたモンゴル騎兵が一斉に突撃を開始した。

「矢を放て!」スブタイの号令が響く。
丘の上から、モンゴル軍の弓騎兵が雨のように矢を射かける。

金国軍は動揺し、弩兵の陣形が崩れた。さらに、モンゴル軍は騎兵の機動力を活かし、敵の背後を断ち、退路を遮断した。

「包囲された……!」
金国の将軍たちは焦りを見せる。

モンゴル騎兵は、矢を放ちながら素早く動き、敵を混乱させる。
やがて金国軍の隊列は乱れ、指揮系統が崩壊した。


7.10 完顔承裕の敗北と金国軍の壊滅

完顔承裕は、混乱の中で必死に兵を立て直そうとしたが、モンゴル軍の包囲が強まり、打開策を見つけることができなかった。

「退却しろ! 退路を確保せよ!」

しかし、すでに退却の道は断たれていた。

チンギス・ハンは最後の命令を下す。

「突撃せよ。」

モンゴル騎兵は一斉に突撃を開始し、敵陣を切り裂いた。
金国軍は完全に崩壊し、将兵たちは四散していった。

完顔承裕は辛うじて戦場を脱出したが、彼の軍の大半は壊滅した。


7.11 モンゴル軍の勝利と金国への進撃

野狐嶺の戦いは、モンゴル軍の圧倒的な勝利に終わった。
金国軍は約30万の大軍を動員しながら、壊滅的な敗北を喫した。

戦場には、数え切れぬほどの屍が横たわり、この敗戦は金国に大きな衝撃を与えた。

ジェルメが戦場を見渡しながら呟いた。

「これで、奴らは我々を単なる蛮族とは思わなくなる。」

スブタイが頷いた。

「いや、むしろ、奴らは本当の恐怖を知ることになる。」

ボオルチュが槍を肩に担ぎながら笑った。

「次は、金国の城が我々を待っている。」

チンギス・ハンは静かに頷き、遠くの地平線を見つめた。

「これは始まりに過ぎない。」

7.12 金国領への侵攻(1212~1215年)

「野狐嶺の戦い」に勝利したモンゴル軍は、金国の防衛線を突破し、ついにその領土の奥深くへと進軍を開始した。
遊牧騎兵の機動力を活かし、金国の補給路を襲撃しながら着実に南下していく。
しかし、金国はただ敗北を待つつもりはなかった。彼らは戦場を選び、モンゴル軍を迎え撃つ準備を進めていた——。


7.13 金国の反撃とモンゴルの策

「奴らは、馬を駆り、草原で戦うことに長けている。」
金国の将軍・**完顔霆(ワンヤン・ティン)**は、厳しい表情で戦略を練っていた。
「ならば、馬が使えぬ場所に誘い込み、奴らの戦い方を封じるのだ。」

彼の考えは単純明快だった。金国の本拠地に近づくにつれ、山岳地帯や森林が増える。
モンゴル軍の騎兵が自由に戦えない地形に誘い込み、そこに伏兵を配置することで壊滅させようとしたのだ。

「奴らを森の奥へと誘い込み、一気に叩く!」

金国軍は、モンゴル軍の進軍ルートに目をつけ、戦場を選んだ。
だが、それを見抜いたのは、チンギス・ハンだった。


7.14 モンゴル軍の策略——森を利用する

モンゴル軍が金国の支配地域に入ると、突然、戦術を変えた。
今まで平原での機動戦を得意としていた彼らが、あえて森へと進軍し始めたのだ。

「森の中に入るのか?」
ボオルチュが驚いたように言った。

「金国は、我々が森では戦えぬと思っている。ならば、それを逆手に取る。」
チンギス・ハンが冷静に答える。

「彼らの伏兵をそのまま使うわけか……。」
スブタイが笑みを浮かべた。

モンゴル軍は、あえて森林地帯へと軍を進め、敵が伏兵を配置しそうな場所を偵察した。
そして、先に敵よりも森を支配することを決めた。

「敵が来る前に、森を制圧し、罠を仕掛ける。」
ジェルメが地図を指しながら言った。

チンギス・ハンは頷いた。
「そうだ。森を利用して、逆に奴らを誘い込むのだ。」


7.15 金国軍、モンゴル軍の罠に嵌る

金国軍は、モンゴル軍が森に入ったと聞くと、すぐに攻撃を仕掛けた。
「今が好機だ!」
完顔霆は、森の中に伏兵を潜ませつつ、正面からの攻撃を仕掛けた。

しかし、彼は知らなかった。モンゴル軍はすでに、森の地形を利用する策を練っていたのだ。

金国軍が森に踏み込むと、突然、矢の雨が降り注いだ。
「伏兵だ!」
金国軍の兵士が叫んだが、もはや遅い。
森の木々の間から、モンゴル軍の騎馬弓兵が矢を放ち、敵を視界の悪い森の奥へと誘い込んでいった。

「敵が混乱している。」
スブタイが冷静に分析する。

「今だ!包囲を狭めろ!」
チンギス・ハンの号令が飛ぶ。

モンゴル軍は、金国軍を森林の奥へと引き込み、包囲の輪を縮めていく。
視界が遮られ、隊列が乱れた金国軍に対し、モンゴル軍は正確に射撃を加えていく。

「金国軍、退路を断たれました!」
金国の伝令が叫んだ。

「しまった……!」
完顔霆の顔が青ざめる。

彼らは気づかなかったのだ。
森が彼らの罠ではなく、モンゴル軍の罠だったことを。


7.16 モンゴル騎兵の襲撃

金国軍が完全に森の奥へと入り込んだその時、モンゴル軍は動いた。

「突撃!」
チンギス・ハンの号令とともに、騎馬隊が一気に森の外から突入した。

「森の中で騎兵戦など……!」
金国の将兵は驚愕したが、モンゴル軍は森林戦に適した戦術を用いていた。

彼らは馬を一列に並べ、狭い道を縦に突破し、次々と金国軍を突き崩していった。
さらに、事前に準備していた落とし穴や倒木が、金国軍の逃走を妨げる。

「敵が森の出口に向かっています!」
ジェルメが報告すると、スブタイが低く呟く。
「ならば、そこに止めを刺す。」

森の出口には、モンゴルの主力騎兵隊が待ち構えていた。
金国軍が逃げようとした瞬間、一斉に弓矢が放たれる。

「奴らは終わった。」
ボオルチュが槍を掲げ、最後の突撃を命じた。

こうして、金国軍は自らの仕掛けた森の罠に嵌り、完全に壊滅した。
完顔霆は数人の側近とともに辛くも逃げ延びたが、彼の軍勢はもはや見る影もなかった。


7.17 中都(北京)包囲戦へ

金国軍を撃破したモンゴル軍は、その勢いのまま金国の中心部へと進軍を開始した。

「目標は、中都(現在の北京)だ。」
チンギス・ハンは戦士たちを鼓舞する。

「金国の都を落とせば、奴らはもはや立ち上がることはできまい。」
スブタイが静かに言う。

1213年、モンゴル軍は中都へと迫り、金国との最終決戦の火蓋が切られようとしていた——。

7.18 中都包囲戦(1213~1215年)

モンゴル軍がついに金国の首都・中都(現在の北京)へと迫った。
この戦いは、単なる一都市の攻略ではなく、金国全体の命運を決める決戦となる。
チンギス・ハン率いるモンゴル軍は、どのようにしてこの堅牢な城塞を攻略したのか——。


7.19 モンゴル軍、城を包囲する

1213年秋、モンゴル軍はついに中都の目の前に姿を現した。
都の城壁は巨大で、強固な石造りの防壁が周囲を囲んでいた。金国はこの都市を守るために数万の守備兵を配置し、食糧も十分に蓄えていた。

「これは今までの戦とは違うな。」
ボオルチュが城を見上げながらつぶやいた。

「これほどの城を、どうやって落とす?」
ジェルメが腕を組む。

モンゴル軍はこれまで、機動戦と野戦を得意としてきた。しかし、ここでは馬を駆けることもできず、敵は城壁の上から弩(クロスボウ)や火炎瓶を投げつけてくる。

「力攻めは愚策だ。」
スブタイが冷静に言った。

「だが、城は内部から崩せる。」
チンギス・ハンは静かに言った。

彼は金国が内部から崩壊するのを待つつもりだった。


7.20 街道封鎖と飢えの戦略

チンギス・ハンは、まず中都の外部との接続を断つことを決めた。

「奴らは、この城に何万といる。食糧がなければ戦えまい。」

モンゴル軍は城の周囲を完全に封鎖し、補給路を遮断した。
さらに、中都の周囲に散らばる小都市や村々を襲撃し、農地を焼き払い、食糧供給を完全に遮断した。

「金国の皇帝は、援軍を送るだろう。その軍を叩けば、城の運命は決まる。」

予想通り、金国はモンゴル軍を撃退するために救援軍を派遣した。
しかし、それこそがチンギス・ハンの狙いだった。


7.21 救援軍の壊滅

1214年、金国は数万の援軍を中都へ送った。
この軍が到着すれば、中都の防衛は盤石になるはずだった。

しかし、モンゴル軍はあらかじめ援軍の進軍路を予測し、待ち伏せを行っていた。

「敵軍が接近しています!」
ジェルメが報告すると、スブタイが地図を指し示した。

「敵の通る道は狭く、両側に丘がある。絶好の待ち伏せ地点だ。」

モンゴル軍は、伏兵を潜ませ、奇襲をかけた。
弓騎兵が丘の上から矢を射かけ、敵が混乱したところを騎馬隊が突撃し、完全に包囲した。
金国軍は城へたどり着くこともできず、わずかな生存者を残して全滅した。

「これで、中都は完全に孤立した。」


7.22 城内の混乱と降伏交渉

中都の城内では、飢えと混乱が広がっていた。
食糧は減り続け、兵士たちの士気は低下していた。市民の間でも、戦争を続けるか降伏するかで意見が割れていた。

「もう持たない……」
金国の高官たちは、皇帝**完顔永済(ワンヤン・ヨンジー)**に進言した。

「モンゴルに降伏するしかないのでは?」

しかし、皇帝は答えた。
「私は、金国の皇帝だ。そう簡単に屈することはできぬ。」

だが、現実は厳しかった。食糧はほぼ底を突き、暴動が頻発するようになっていた。
もはや、戦いを続ける力は残されていなかった。


7.23 金国、ついに屈する

1215年春、ついに金国はモンゴルに屈した。
金国の皇帝は、都を捨てて南へ逃れ、汴京(開封)へ遷都することを決定した。
しかし、逃げ遅れた貴族や将軍たちは、モンゴル軍に捕らえられた。

「皇帝は逃げたか……。」
チンギス・ハンは淡々と呟いた。

「だが、これは始まりに過ぎない。」

1215年5月、モンゴル軍はついに中都を占領した。

都の住民たちは、すでに飢えと混乱の中にあり、戦うことすらできなかった。
チンギス・ハンは城を徹底的に略奪し、大量の財宝を持ち帰ったという。


7.24 中都陥落後の影響

この勝利により、モンゴル帝国は初めて中国本土の主要都市を征服することに成功した。
金国は大打撃を受け、もはや完全な統制を失っていた。

「これで金国の時代は終わる。」
スブタイが静かに言った。

「だが、奴らはまだ滅んではいない。」
ジェルメが地図を指しながら続けた。

「金国は南へ逃れ、新たな拠点を築こうとしている。」

チンギス・ハンは頷き、次なる目標を定めた。
「金国はまだ滅びていない。ならば、次の戦場は南だ。」

こうして、モンゴル軍の侵攻はさらに続いていくことになる——。

7.25 金国南部への侵攻(1216~1218年)

「金国はまだ死んではいない。」

中都(現在の北京)が陥落した後も、金国の皇帝 宣宗(宣和帝) は完全には屈していなかった。彼は 南遷 を決意し、新たな拠点として 開封(現在の河南省)へ逃れた。

「金国は滅びぬ。我らが団結し、戦えば、モンゴルを撃退できる!」

皇帝は配下の将軍たちを鼓舞し、再起を図る。南部の広大な土地には、まだ数十万という兵力が残っていた。

しかし、それこそが、チンギス・ハンの狙いだった。


7.26 モンゴル軍、南方へ進撃

「奴らが逃げたということは、まだ戦う意思があるということだ。」

チンギス・ハンは焚き火の前で地図を広げ、南部の戦略を練る。

「敵がまとまる前に、我々が叩く。」

彼は、スブタイとジェベに別働隊を率いさせ、南部の要衝を攻め落とすよう指示した。

「金国軍を徹底的に分断し、補給を断つのだ。」


7.27 森林戦—金国軍の待ち伏せ

「奴らは草原では勝てぬと悟ったのだ。」

モンゴル軍が南へ進軍する中で、金国軍は奇襲戦術を試みた。
彼らは 森の中に潜み、伏兵を展開 し、モンゴル軍を誘い込もうとした。

ある日、ボオルチュの偵察隊が警告を発した。

「森に敵の気配がある。」

スブタイが地図を見つめながら呟く。

「待ち伏せか。」

モンゴル軍は、従来の戦術では苦戦する可能性があった。
草原の戦いでは騎兵の機動力を活かせるが、森の中ではその利点が失われる。

しかし、チンギス・ハンは冷静だった。

「ならば、敵を森から引きずり出せばよい。」


7.28 森に誘い込む罠

「まず、敵に勝ったと思わせる。」

モンゴル軍は わざと前線を崩し、森の入り口へと撤退 した。
金国軍はこれを見て 勝機と誤認 し、一気に追撃を開始する。

「モンゴル軍が退いているぞ!」
「今こそ反撃の時だ!」

金国軍は、森の中から飛び出し、モンゴル軍を追う。

その時だった。

「今だ!」

チンギス・ハンの号令が響く。

モンゴル軍の弓騎兵が 急旋回し、矢の雨を降らせた
さらに、森の両側から 伏兵が突撃 し、金国軍を包囲する。

「しまった! 罠だ!」

金国軍は混乱し、森の中へと後退しようとするが、すでに遅かった。
モンゴル騎兵が一気に突進し、敵陣を切り裂いた。

金国軍の将軍が叫ぶ。

「退却せよ!」

しかし、逃げ道はなかった。


7.29 森の終焉

戦いは数時間に及んだが、金国軍は統制を失い、壊滅的な被害を受けた。

生き残った者たちは、森の奥へ逃げ込んだが、そこには モンゴル軍の追撃部隊 が待ち受けていた。

ボオルチュが戦場を見渡しながら呟く。

「奴らは、もう戦える力を残していない。」

金国の南部防衛軍は、こうして壊滅した。


7.30 開封包囲戦(1218年)—金国、最後の拠点

「敵の心臓を撃て。」

チンギス・ハンはついに 開封(河南省) への侵攻を開始する。
金国の最後の拠点であるこの都市を落とせば、王朝の命運は尽きる。

しかし、開封は中都と異なり 強固な城塞都市 であった。
皇帝 宣宗 は、残された兵を総動員し、モンゴル軍を迎え撃つ準備を整えていた。

「モンゴルに屈するわけにはいかぬ!」

開封の城門には 強力な弩砲火炎瓶 が用意されていた。
さらに、戦象まで導入され、モンゴル軍を迎え撃つ構えを見せる。

「これまでの都市とは違うな…。」
スブタイが慎重に分析する。

しかし、チンギス・ハンは動じなかった。

「どれほど強固な城であろうと、戦の本質は変わらぬ。」

彼は都市の 補給線を断つ戦略 を取る。
モンゴル軍は開封の 水源と食糧供給路を遮断 し、長期戦へと持ち込んだ。

開封の住民たちは、日に日に飢え、疲弊していく。
数ヶ月後、ついに城門が開かれた。

開封、陥落。

皇帝 宣宗 は降伏し、金国は完全にモンゴルの支配下に置かれた。


7.31 金国の終焉—モンゴル、さらに南へ

開封の陥落により、金国の運命は決した。
しかし、チンギス・ハンは 完全な滅亡 を確認するまで動きを止めなかった。

「逃げ延びた者たちを追え。」

彼は将軍たちに命じ、逃亡した金国の貴族や将軍を狩り尽くした。


7.32 さらなる遠征へ(1219年)

金国を制圧したチンギス・ハンは、次なる目標を見据えていた。

「東だけではない。我々の帝国は、西へも拡がる。」

彼の目は、シルクロードの西、ホラズム(現在のウズベキスタン) へと向けられていた。

次なる戦いは、ホラズム遠征へと続く——。


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