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第10章:第二次ヨーロッパ遠征(1236-1242年)

10.1 第二次ヨーロッパ遠征(1236-1242年)

「西方には未だ我らの名を知らぬ者たちがいる。だが、すぐに思い知ることになるだろう。」
—バトゥ・ハーン

1236年、モンゴル帝国は新たな遠征を開始した。
その目標は、ユーラシアの西端――ヨーロッパだった。

オゴデイ・ハーンの命により、チンギス・ハーンの孫であるバトゥが遠征軍を率いることとなった。
彼の右腕には、名将スブタイが控えていた。

「西へ進軍し、すべての敵を討つ。我々の行く手を阻むものは何もない。」

モンゴル軍は東ヨーロッパの草原を駆け抜け、ルーシ(ロシア)諸国、ポーランド、ハンガリー、神聖ローマ帝国を震撼させる ことになる……。


10.2 ルーシ侵攻(1237-1238年)

「我々の前に立つ者は全て倒す。それが、我らモンゴルの掟だ。」
—スブタイ

1237年、モンゴル軍はルーシ(ロシア)諸公国へと進軍した。

冬の到来とともに、バトゥとスブタイは大胆な作戦を決行する。
凍った川を渡り、ロシアの諸都市を次々と急襲したのだ。

「彼らは冬に守られていると思っている。だが、我々には関係ない。」

スブタイの言葉通り、モンゴル騎兵は極寒の地でも驚異的な機動力を発揮し、ルーシ諸侯を圧倒した。

1238年、ウラジーミル公国、リャザン公国、トヴェリ公国が陥落。
モンゴル軍はロシアの大地を焦土と化していった。

しかし、唯一ノヴゴロドは冬の泥沼地帯に守られ、モンゴル軍は撤退を余儀なくされた。


10.3 ハンガリー・ポーランド侵攻(1240-1241年)

「ルーシが落ちた今、次は西方だ。」
—バトゥ

1240年、モンゴル軍はドニエプル川を渡り、ポーランドとハンガリーへ進軍した。

ここで、バトゥとスブタイはヨーロッパの防衛網を試すこととなる。
待ち構えていたのは、ポーランド王国とハンガリー王国の連合軍。

しかし、モンゴル軍は圧倒的な戦術で彼らを打ち破ることになる……。


10.4 ワールシュタットの戦い(1241年)—ドイツ・ポーランド連合軍との激突

「敵を戦場に引きずり出し、一瞬で飲み込む。それがモンゴルの戦いだ。」
—スブタイ

1241年、ポーランドと神聖ローマ帝国の騎士たちは、モンゴルの進軍を阻止するため連合軍を結成した。

「奴らは騎兵戦に強いが、正面からの力比べでは勝てるはずだ。」

ポーランド王ヘンリク2世は、ドイツ騎士団と共にワールシュタット(リーグニッツ)近郊で防衛陣を敷いた。

「我々はこの戦場で奴らを迎え撃つ!」

だが、それこそがモンゴル軍の罠だった。

スブタイは、いつもの偽装撤退 を仕掛ける。

「奴らに勝ったと思わせろ。」

モンゴル軍はわざと退却し、ポーランド軍が追撃に転じた瞬間、伏兵が両翼から包囲。

「閉じ込めろ!」

モンゴル軍は一気に攻撃を仕掛け、敵軍は混乱に陥った。

「退却しろ!」

ポーランド軍は総崩れとなり、ヘンリク2世は討ち取られた。

ワールシュタットの戦いは、ヨーロッパの戦士たちにとって悪夢となった。


10.5 モヒの戦い—ハンガリー侵攻(1241年)

「ハンガリー軍は我らを見くびっている。ならば、思い知らせてやる。」
—バトゥ

ポーランドに続き、モンゴル軍はハンガリーへと進軍。
ここで、モンゴル軍はさらに大規模な戦いを迎えることとなる。

1241年4月、ハンガリー王ベーラ4世は10万の軍勢を集め、モンゴル軍を迎え撃った。
彼は、自らがモンゴル軍を打ち破り、「ヨーロッパの守護者」となることを望んでいた。

だが、スブタイはそんな甘い考えを許さなかった。

「奴らの計画はすべて読めている。」

モンゴル軍はハンガリー軍を巧みに誘導し、モヒ平原に誘い込む。
そして、橋を封鎖し、敵の退路を断った。

「ここで奴らを殲滅する!」

モンゴル軍は四方から攻撃を仕掛け、ハンガリー軍は壊滅的な敗北を喫した。

「ヨーロッパに敵なし!」

この戦いを経て、モンゴル軍の恐怖はヨーロッパ全土に広がることとなった。


10.6 突然の撤退—オゴデイの死(1242年)

「ここで終わりではない。だが、一度戻るしかない。」
—バトゥ

モンゴル軍は、さらに西へと進軍し、ウィーン近郊まで到達した。

だが、その時、オゴデイ・ハーンの死の報が届く。

「オゴデイが……?」

バトゥとスブタイは、モンゴル本国へ戻る決断を下した。

ヨーロッパの君主たちは、この撤退を「神の奇跡」と考えた。

「モンゴルが引いた。これで終わったのだ!」

だが、それは間違いだった。

モンゴルの脅威は、まだ終わっていなかったのだ……。


10.7 モンゴルの影—ヨーロッパの未来

バトゥ・ハーンは、ロシアを完全に支配し、キプチャク・ハン国 を築いた。

「我らはいつでも戻る。我々の支配は終わらぬ。」

スブタイは静かに語った。

この戦いを経て、モンゴルの脅威はヨーロッパ全土に刻まれることとなった。

しかし、新たな時代が動き始めていた――


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