【要約】ジム・クレイマーのローリスク株式必勝講座【米国株】
Twitterで有名な「じっちゃま(@hirosetakao)」こと広瀨隆雄が米国株投資をするにあたって推薦しているジムクレイマーの書籍を要約したノートです。ジムはMad Moneyの司会者としても有名です。
要約といっても、本書は全体で500ページ超あるのでそこそこのボリュームになりました。プレミア価格ゆえに読めていなかった方はこの機会に読んでみて下さい。セクターごとにココをチェックすればOKというのも簡潔にまとめています。
本書は2014/12月時点の情報をまとめた内容となっておりますが、機関投資家の間で常識とされている知識が網羅されている書籍ですので、内容は2020年にいても風化しておりません。他方で特定の銘柄について言及している部分は2021年1月現在に照らし合わせて補足コメントを記載しております。
ジム・クレイマーが説く「じっくり長者」のための株式投資術
①トップダウン・アプローチ
マクロ → セミマクロ(産業全体)→ セクター・業種 → 個別銘柄の順に銘柄を絞り込む。短期の相場変動に左右されない7つのメガトレンドに乗った、安定成長銘柄群を推奨する。
②企業のファンダメンタル重視
1株当たりの利益の持続的成長を達成する銘柄を重視。10項目の評価方法を紹介する。
③株主価値重視の経営者かどうか
④集中分散投資
個人投資家はセクター・業種を考慮した5-10銘柄への分散が最適
⑤バイ・アンド・ホームワーク(買ったら宿題をする)
バフェットは割安優良銘柄(バリュー株)を購入した後、相場を忘れるように推奨しているが、クレイマーは購入後も動向をフォローして適宜入れ替えることを重視。ファンダメンタルな理由もなく株価が一時的に下落した時を狙ってさらに追加投資することを推奨。そのためにどんな勉強をすべきか。
⑥自分好みのポートフォリオ(以下、PF)を作り、自分がファンド・マネージャーとなる
(1)上記①~⑤に従って10銘柄以内のPFを作成
(2)自分がファンド・マネージャーになって保有銘柄の業績動向と相場の動きを注視しながらPFの中身を適宜入れ替えることを5~15年続けていけば長者になれる。
本書を読むと何が分かる?
①株価の変動メカニズム(実際のプロセス)
②かなりの信頼度をもって明日の相場の動き
③正しい銘柄を正しい株価で選択する方法(最高のPFの作り方)
④正しい取引ルール
第1章 何が株価を動かすのか
単なる需給関係が株価を動かす。当たり前だが、材料が出れば株価は動く。しかし、材料がでなくても株価が動く場合がある。これは圧倒的な買いもしくは売り注文によるもの。
このようなダイナミクスを踏まえて注意しなければならないのは「成り行き」注文を基本的に使わないこと。成り行き注文は言い換えると、「どんなに株価が上がっても買いたい」ということ。
例えば誰かが何万株も買い注文を入れれば株価は上がる。この時、成り行きで買い注文を入れてしまうと、思わぬ高値で株を掴む可能性がある。そして、すでに株を保有していた人たちは、株価の上昇を見て売りの判断を下す。すると、成り行き注文で高値掴みした株の価格はみるみる下落し、含み損を抱えてしまう。
つまり、「いくらなら買うんだ」というこだわりが重要なのだ。株価の激変というリスクがある以上、指値注文を心がけてほしい。
S&P500の先物が急騰ないし急落した時はインデックスに含まれる銘柄の株価も上昇ないし、下落する可能性が高い。この影響は大きく、個々の銘柄が好決算をだしたり、アナリストが業績見通しを引き上げたりした日であっても、S&P先物が大きく下がった日にはその銘柄の株価も下がってしまう。
平均的に株価の50%の変動はセクター起因(長期の変動も含めて75%がセクター起因という説もある)。つまり、株価が変動している時にはそれがセクター起因なのか調べてみる価値がある。
極端な例は石油セクターである。石油セクターは原油先物の価格に反応するという関係は認められているが、ひとたび原油先物が跳ねると、セクター内で最も業績の悪い会社(ウェザーフォード社など)も、最高の企業と同程度に株価が上昇するようになってしまった。これはセクター単位での売買を機関投資家が行っているからである。これをセクター・プルの引力と呼ぶ。
★重要
このセクター・プルの引力によってできた歪みにつけこむべき。
ETF業界によるセクター・プルの引力で、本来は長期的には同質化が不可能なものを、短期的には完璧に同質化した。つまり、長期的に非常に優れた企業群も、平均的企業群も、劣悪な企業群も、短期的には同じ評価しか下さされない。しかし、賢明な我々は差別化ができる。すなわち、石油価格が急騰して、劣悪な銘柄グループの株価がふさわしくないほど高い水準に上昇した局面では、それらを空売りし、逆の場合にはつられ売り出された優良グループを買えばいい。とりわけ、長期投資を目指す人は、優良な銘柄の株価が安くなった時に投資し、将来値下がり損が発生しないような十分低い水準で取得することができるのだ。これらの戦略はセクターETFがもてはやされるどんなセクターにも当てはまる。例えば、住宅、銀行、小売、REIT、半導体、外食チェーンなど。
これらのセクターの短期的な株価変動は基本的にETFの動きによって決まる。しかし、この人工的な短期株価とファンダメンタルとの乖離が、セクター内の優良グループに長期投資する投資家に素晴らしいチャンスをもたらしてくれる。
例えば銀行セクターの場合、XLFと呼ばれるETFの存在によって、劣悪な銀行グループと比較すると信じられないような低PER(株価収益率)で、選りすぐりの銀行グループが買える。最優良銀行であるUSバンコープを、最悪の銀行グループ並の低いPERで購入できたのもそのおかげ。サン・トラストをかなり高値で処分できたのもそのおかげ。
以降の銘柄選択の話を読む際はこの歪みを念頭に置くこと。
■長期金利と株価
企業の株価を最も動かすのは企業のファンダメンタルであるが、そのほかにも債券市場の動向と、FRB(連邦準備制度理事会)の金融政策は株価に影響する。
株は投資市場の中の1つのコーナーで売られているが、それよりはるかに大きな規模で売られているのが債券である。債券保有者が資産の差し押さえができない唯一の相手が連邦政府。その代わり、国債は債券保有者に対して「返済を完全に保証する」ことを約束している。しかし、連邦政府が債務不履行になることもありうるため、そのような噂が流れるだけで、すべての金融市場がパニックに陥る。
2011年には2台格付け機関であるS&P500とムーディーズがアメリカ国債を格下げするかもしれないという懸念から株価指数が20%暴落した。
FRBが国債を購入することで長期金利は低下する。つまり債券の利回りが低下し、多くの人は利回りの高い株式の購入に走る。その逆に、長期金利が上昇、つまり、債券の利回りが上昇する場合を考える。
株価が低い所で株を購入できた人は、値上がり益と高い配当利回りを得ているが、新しく金融スーパーに買い物に来た客にとってはその時の株式と債券の比較をする。つまり、長期金利が上昇し、債券の利回りが株式の利回りより魅力的であれば債券の方が魅力的に映る。
また、それまで株を購入していた人にとっても値上がり益を確定させ、債券に乗り換える人が増える。つまり、株が売られ、株価指数が下落するという仕組みである。
重要なのは、今、株式市場に怒っている変化の背景と、なぜいろいろな銘柄が売られたり買われたりしているのかを十分理解すること。
さらに、金利の上昇はほとんどの企業の業績にマイナスの影響を与える。
アメリカ10年債券利回りのチャートを確認し、金利が下がってれば株価は上昇しやすく、金利が上昇している日は株価は下落しやすいと判断すればよい。
金利の上昇による株価の下落は株式市場全体に波及するため、それを利用し、金利が上昇した時に金利の影響が業績と無関係なグロース株(Amazonやネットフリックス等)を購入するのは賢明である。
結局はFRBが我々の敵に回るようなときは抵抗しない方が良い。
■ファンダメンタル
様々な外部要因で株価は変動するが、中長期においてはファンダメンタルが圧倒的に重要である。
特に重要なのは企業の成長率である。最も重要なことは、投資家のコンセンサス予想値に対して実際の売り上げや利益がそれをどれだけ上回り、あるいは下回って成長しているかということ。コンセンサス予想値は複数の専門家による予想なので最大の関心を払うべき。今日ではYahoo financeなどで調べればすぐに分かる。コンセンサスを上回れるかどうかは中期的だけでなく短期的にも株価に影響する。売上と税引き利益の伸び率、特に売上粗利益率(グロスマージン)の見通しに注目すること。グロスマージンが次の四半期決算のベンチマークとなる。
重要なのはコンセンサスを上回る(ビート)ことに加えて、同時に税引き利益の目標水準も引き上げる(レイズ)ことである。コンセンサスを上回るだけでは不十分である。ビート&レイズが確認できたらその銘柄のリストを作り、その銘柄が値下がりするのを待って投資するなら、それが「慎重な投資家」である。ビート&レイズが確認された日にマイナスの外部要因のニュースがあっても無視すべき。
業績の見通しはコンファレンスコールで確認すること。それを怠って投資判断を下さないこと。
第2章 トップダウンアプローチの手引き
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