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投資|何から始めたら良いか分からないという人へ。

⏰ 読了時間の目安:15分 ⏰

〜この記事でわかること〜

・違法業者に騙されない方法が、わかる
・投資を語る人々の意見がなぜバラバラなのか、わかる
・じゃあ結局どうすればいいのか、わかる

〜初っ端から結論〜

これから始める方にまず伝えたいこと
① ワナは日常に潜んでる!お金はゼッタイに自分で管理すること
② 世の投資術に「絶対」「正しい」「正攻法」などない
③ だからこそ「原理」を学ぼう


*本編*

あらためまして米国個別株投資13年目の一般人、なおです。
新NISAの開始、日経平均の高値更新など
投資界隈も非常に盛り上がっている今日この頃。
新たに資産運用デビューを飾った方、これから考えているという方も多くいらっしゃると思います。

一方「情報がありすぎて混乱する」
「みんな言ってることバラバラで誰が正しいの?」
最終的には「分からないから信頼する人にやってもらったら結局詐欺だった」なんてことにもなりかねません。

最近この手のニュースが多いですね

この記事では、初めて株式投資に挑戦する方が適切なスタートを切るために、まず知っておきたいポイントを3つご紹介します。

❗️注意❗️
まず前提として、私の専門は米国株式投資です。
不動産投資や金などの材料、仮想通貨などには全く詳しくありません。
あくまで株式投資に関する記事となります。

その1. 投資のお金はゼッタイに"自分で管理"する

さてクイズです。


あなたの友人に経済学の教授Aさんがいます。
Aさんの市場分析は正確で、投資で年50%のリターンを常に叩き出しています。
その事実から、あなたはAさんに100万円を預け1年間運用してもらい150万円になりました。
あなたはAさんに報酬として20万円払いました。

Q. この一連の行為、違法でしょうか?合法でしょうか?


答えは「違法」です。
意外と知られていないですが、他人の資産運用を行い報酬を貰って良いのは金融商品取引業者のみに限られます。

そして金融商品取引業者になるには、資本要件や構成要件を満たし、内閣総理大臣への申請、および金融庁の厳正な審査を受ける必要があるのです。
それほど「人の金を預かる」というのはハードルが高い業務なのです。

代表的な金融商品取引業者。聞いたことのある組織ばかりですね

つまりそのへんの個人や小さな団体が、他人の資産運用を行い報酬を得ることは、そもそも法律違反なのです。(具体的には、金融商品取引法第29条2第13号違反となります)

ですから「ノーリスクで毎月2割リターンがあります」などの広告を見たり、
「○倍にして返すから貸して」などと言われても、ゼッタイにお金を預けてはいけません。金融商品取引業者はゼッタイにそんなこと言わないからです。

金融商品取引業者には金融商品取引法にて、以下の義務が課されています。

・広告規制(第37条):広告は、金融商品取引業者の商号、登録番号、業務内容などを表示し、虚偽や誇大な表示をしてはならない。
・損失補てん等の禁止(第39条):顧客の損失の全部または一部を補てんすることは禁止されている。
・不当勧誘の禁止(第38条):断定的判断の提供、損失補てんの約束、不確実な事項の断定的判断など、不当な勧誘を行ってはならない。

「金融商品取引法」原文から参照

いかにその人(or 団体) が成功していようと、投資の成績が良かろうとです。
投資サークルや塾などもってのほか、
SNSなどでの勧誘も100%違法です。

結論:『SBIや楽天、その他金融機関で自分の証券口座を開くのは良いですが、管理は必ず自分で行ってください。』

そして、「〜〜〜氏が教える推奨銘柄」「9割の人が知らない10倍株」とかいうコピーも論外です。
一定の銘柄を推奨することも金融商品取引業者しかできません。

こういった広告は全て詐欺広告、違法です

経済エコノミストの森永卓郎も、ジャーナリストの池上さんも、服屋の前澤社長も金融商品取引業者では決してありません
確かに詳しいかもしれませんが(業務として)銘柄を推奨すること自体、違法なのです。

投資の話を持ちかけられた、お金を何倍にして返すと言われた、
そんな時は必ず金融商品取引業者であるかどうか確認してください。

その2. 世の投資術に「絶対」「正しい」「正攻法」などない

テレビやネットなど、さまざまなメディアで「投資」をテーマにした番組が制作されていますね。

色んな人が色んなオススメを発信してます

ですが「みんな言ってることバラバラじゃない?」と疑問に思ったことはないでしょうか。
経済学者やエコノミスト、実業家、資産家など、みなエキスパートと言われる人たちばかりですが、それでもてんでバラバラです。

なぜなのでしょうか?
日本を代表するファンドの代表で、運用額1兆円を超える藤野英人さんが、ある対談で仰ったことが、まさに真理だと私は思います。

世界には正しい投資家、正しくない投資家、がいるわけじゃない。
儲かった投資家、儲からなかった投資家がいるだけ。

【後藤達也vs運用1兆円投資家】投資初心者が陥りがちな「落とし穴」とは?

本当にその通りだなと。投資術に正しいも間違ってるもありません。
相対的に得した投資家と、損した投資家がいるだけです。
そして、得した投資家が "自らの経験を元に"「これが正しい方法だ」と主張しているだけなのです。

ある男は「オルカンなんてバカだよね、事業投資の方がマシ」と言い
他の男は「一番無難なのはオルカン」と言う。
(オルカン=世界中のあらゆる株式に分散投資するオールカントリー株式のこと)

右は元楽天証券経済研究所研究員の山崎元氏、左は省略

あるエコノミストは「米国株は今後20年横ばい、投資するな」と言い
またあるエコノミストは「米国投資信託に、長期投資せよ」と言う。

左:エミン・ユルマズ(エコノミスト、グローバルストラテジスト)
右:永濱利廣(第一生命経済研究所 首席エコノミスト)

意見が異なるのは今に始まったことじゃありません。
株取引200年の歴史を見ても、みんなバラバラです。

「財務諸表を見るのが正解だ!」と言う人もいれば
「株価の値動きだけで予想ができるんだ!」と言う人もいます。
「占星術で決める」のが投資術の人もいるし
「カエルの神様のお告げ」が投資術の人もいます。

カエルの神の人はのちに詐欺事件で捕まりましたが、
それでも一時期は銀行が数千億を融資するほどでした。カエルの神に数千億はヤバイ

今も昔も、世の中に溢れかえる投資アドバイスがバラバラに見えるのは
誰ひとりとして「何が正しいか」は分かっておらず、自分の経験に沿ってアレコレ言っているだけだからです。

誰もが0.00000001%の世界で生きている。

Morgan Housel, Psychology of Money

という言葉を聞いたことがありますか?
これはベンチャーキャピタルのパートナーで作家、モーガン・ハウゼル氏の世界的ベストセラー「Psychology of Money(お金の心理学)」での記述です。

500万部以上のベストセラーで、世界で最も売れたオカネ本の1つ

本書によれば「ある人の金に関する個人的な経験は、世界で起こった出来事の0.00000001%にしか相当しないが、その人の思考の8割を構成している」とのこと。

まさにその通りで、どんな専門家や実業家であっても(例え投資歴70年のウォーレン・バフェットであっても)全ての時代の、全ての国の、全ての金融商品に触れた訳ではありません。

自分がたった数十年というキャリアの中で扱った、たった数百〜多くて数万の取引の経験を元に"主張"しているだけなのです。

また同書には、一例を信じる危険性についても書かれています。

特定の人物や事例を良い(あるいは悪い)手本にしようとするのは危険である。そのような場合、対象になるのはたいてい億万長者やCEOの成功例、ニュースで話題になる大失敗など極端な例である。
だがこうした極端な例から誰にでも当てはまる教訓を導くのは難しい。

"Psychology of Money" -Chapter.2, p.55


Mary Meeker, All Things Digitalの講演会にて(2012年)

[ちょっと逸話]
〜「女王」とあがめられ、「裏切り者」と糾弾され、そして最後には「最も影響のある人物」と認められた女性の話〜

2000年代初頭、モルガン・スタンレーのトップアナリストで「最も偉大なディールメーカー」「インターネットの女王」と謳われた女性がいました。
彼女の名は、メアリー・ミーカー。

1991年にアナリストとしてモルガン・スタンレーに入社した彼女は、当時のインターネットバブルを追い風に、インターネット関連企業への投資を強く勧めていました。

特に1998年ころから強烈に勧めていたのが、上場したばかりのeBay, Amazon, Priceline, Yahoo!などの会社。これらは、その後大幅に株価を伸ばしました。中でもeBayはたった2年で608%成長、Amazonに至っては7,013%成長を遂げました。
一般投資家は彼女のサインを欲しがるようになり、メアリーはいつの間にか「インターネットの女王」とまで言われるまでになりました。

しかし2000年後半に入るとバブルが崩壊。
推奨した銘柄は、ピーク時と比べ85%から97%下落し、投資家から「偏見的でミスリードな分析を行った」として訴訟を起こされてしまいます。
その後しばらくは「エンロン事件の再来」「ウォール街の裏切り」など批判の的となり、多くの投資家が彼女の推奨銘柄から資金を引き上げてしまいました。

ですが2005年以降、彼女の推奨していた銘柄の一部はバブル崩壊後回復するどころかさらに成長を遂げ、Amazonは20,000%超の成長、Pricelineは30,000%超の成長を遂げました。

2010年代以降はベンチャーキャピタリストとして、初期のSlack, Spotify, JD.com, Airbnbなど20余りの重要な取引を実行し脅威的なリターンを実現。

そして2020年代には、Forbes誌による「世界で最も影響のある女性」84位にランクイン、世界女性投資家リストで2位に選ばれ米国を代表するベンチャーキャピタリストと認められています。

………………………………………………………
さて、ここで問いたいのは「結局、彼女は正しかったのでしょうか?」
バブル期に彼女の言う事を信じ、儲けた投資家にとっては "正しかった"でしょう。文字通り女王だったはずです。
一方、崩壊を共に経験した投資家には "正しくない"と思われたでしょう。
ですが、崩壊後も彼女を信じ続け、株を持ち続けた投資家は "信じ続けて良かった"と思うでしょう。

1人の専門家の意見でも、時代と共に正しくなったり、間違いになったりします。あなたの投資判断も同じです。1年後には間違っているかもしれないが、5年後には大正解!なんてこともあり得るし、その逆も然りです。

つまり言いたいことは(繰り返しになりますが)
「正しい投資家、正しくない投資家」などいない
「儲けた投資家、損した投資家」がいるだけ、ということです。

CNN: "Where Mary Meeker Went Wrong? She may be the greatest dealmaker around. The problem is, she's supposed to be an analyst." (2001)を参考に記述

その3. だからこそ「原理」を学ぼう

では、私たちはどうすれば良いのでしょうか?

それは、先述のような、エキスパートである彼ら彼女らの発言であっても
「個人の経験からくる意見である」とまず受け止めること。
そしてそれを比較したり
なぜその主張なのか?原理を追求すること、だと私は信じています。

専門家どうしは意見がそれぞれ違えど、その根幹を成す原理は一緒です。

私たちはどうしても「〜〜した方が良い」など
枝先のアイデアに目がいきがちですが
そもそもなぜそう考えるのかを学ぶことで
「自分にとって最適な方法は何か?」そして儲けた時も損した時も「なぜ損したのか?なぜ儲けたのか?」と振り返ることができます。

原理の中には例えば、

・粗利益から各費用を引くと純利益になる
・投資には「複利」という力が働く
・利上げはインフレを抑える効果がある
・利下げは失業率を低減する効果がある


などの基本的な知識もあれば

・近代ポートフォリオ理論 / CAPMモデル / ブラックリターマンモデル
・適正な株価を算定する、DCF法 / マルチプル法
・ボラティリティを計測するストキャスティクスやRSIなど各モデル

などの専門的な知識もあります。

基本的な知識は市販の書籍や、証券に関するオンラインコースでも学ぶことができます。ご興味のある方はぜひ。

あるいは!基礎〜専門知識をまさに今勉強中の私が記事にまとめています
なるべく分かりやすく&楽しく学べるようにこれからも記事を書いていくので、お手隙に読んでいただけるととても嬉しいです!


[利上げ/利下げの基礎]

[財務分析の基礎]

[複利のメカニズムの基礎]

[株価算定法の基礎]

そのほか色んな知識を鋭意執筆中…これからも応援よろしくお願いします!




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