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Nu Holdings($NU)の株価が冴えない理由、最新決算、そして将来性について
2024年も暮れですが、今年前半調子の良かったNu Holdings($NU)の株価が後半は下落基調に転じ、「実際どうなの?」と不安に思っている人も多いはずです。(私もその一人です)
直近の株価低迷の原因、最新の決算内容、そして将来の利益成長の展望について、まとめます。
なぜ直近の株価が冴えないのか?🔥
株価が冴えない理由は主に 2つの要因 があると考えます。
① 為替の影響(ドル高・レアル安)
Nubankの主要市場はブラジル、メキシコ、コロンビアなどラテンアメリカです。Nubankは現地通貨(主にブラジルレアル)で得た収益を米ドルに換算して決算を報告するため、為替変動が大きく影響します。
例えば、ブラジルレアルが対ドルで安くなると、現地通貨建ての+20%成長もドル換算では+5%にしか見えなくなることもあります。
つまり、レアル安では「決算での見かけの数字が鈍化して見える」のです。
USD/BRLの長期チャートを見ても2024年11月ごろからブラジルレアル安が進行していることがわかりますね。(右上に行くほどレアル安)
2024/12/19現在の1USD=6.29BRLは過去最安水準です。
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レアル安が進んだ理由は以下の複合要因と考えられるでしょう。
米国の金融緩和の遅れ
ブラジルのインフレ見通しの悪化(インフレ再燃)
財政赤字の悪化
米国の金融緩和の遅れ
ブラジル中央銀行が利下げを開始した時期は2023年8月です。一方、米連邦準備制度理事会(FRB)は2024年3月にも利下げを開始すると予想されていたものの、インフレ鈍化のペースが緩やかであったため、利下げ開始時期が遅れました。これにより、ブラジルと米国の金利差が縮小し、レアル安の要因となったと考えられます。
ブラジルのインフレ見通しの悪化(インフレ再燃)
11月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比では4.87%の上昇となりました。ブラジル中央銀行は2024年12月19日に公表した四半期インフレ報告で、2027年第2四半期までのインフレ見通しを全般的に引き上げています。
さらに、ブラジル中央銀行は2024年12月10日から11日にかけての金融政策委員会(COPOM)で、政策金利を1%引き上げ、12.25%としました。これは3会合連続の利上げであり、前回の0.5%から引き上げ幅を拡大しています。
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財政赤字の悪化
ブラジルの財政赤字は2024年にGDP比で約9%に達すると見込まれています。(この数字は新興国の中でも非常に高い水準です)
赤字の主な原因は、2023年に発足したルラ政権による社会福祉プログラムや公共投資の拡大です。
これらの政策は短期的には成長促進を目指したものですが、財政規律を犠牲にする形となっています。
市場の懸念は「国債の増発」と「通貨の信任低下」でしょう。
財政赤字を埋めるため、政府は国債を増発する必要があります。
これにより金利上昇局面では国債の調達コストが高まり、財政負担がさらに増加します。
また、財政赤字の拡大は、投資家にブラジル政府の信用力への疑問を抱かせ(通貨の信任低下)、通貨レアルの売り要因となります。
金利上昇は通常は通貨高圧力ですが、市場は財政赤字増大のリスクを嫌気しているためレアル安が進行していると考えられます。
② Citiの投資判断引き下げ
2024年11月12日、Citi(シティグループ)がNubankの投資判断を「中立 → 売り」に引き下げ、目標株価を 14.60ドル → 11.00ドル に修正しました。
背景には「高いバリュエーション(割高感)」や「ブラジル市場での成長鈍化への懸念」が挙げられています。
この発表が投資家心理を冷やし、売り圧力につながった側面もあるでしょう。
これらが複合的に働き株価は冴えない状況にありますが、次に実際の事業成績を見ていきます。
最新の決算(2024年第3四半期)
サマリー
NubankのQ3 2024決算を確認すると、事業の成長は引き続き堅調です。
ブラジルに加えメキシコ・コロンビアでの顧客基盤拡大とARPACの増加が進んでおり、FXN(為替中立基準)ベースでは売上高が堅調に増加し純利益が拡大していることが確認できます。
売上高: 29.4億ドル(FXN前年同期比 +56%)
純利益: 5.53億ドル(FXN前年同期比 +107%)
年換算のROE(自己資本利益率)は30%に達した。
顧客数: 1億970万人(純増 520万人、YoY +23%)
メキシコで約900万人、コロンビアで200万人以上の顧客を獲得
1人当たりの月間平均収益(ARPAC): 11.0ドル(FXN前年同期比 +25%)
アクティブ顧客1人当たりの月平均コスト: 0.8ドル(FXN前年同期比 -4%)
15~90日間の延滞率(NPL)は4.4%に低下(前年同期比10ベーシスポイントの減少。4.5%→4.4%に減少)。
利上げの影響について
ブラジル中央銀行による利上げは、特にNII(純利息収益)とNIM(純利息マージン)に影響を及ぼします。
NII(純利息収益)とは、貸出資産や預金などの金融商品から得られる利息収益から、調達コスト(預金者への利息など)を差し引いたものです。
NIM(純利息マージン)とは、NII(純利息収益)を収益資産(貸付金や投資資産)の総額で割った割合のことで、銀行の収益性を示す指標になります。
Q3 2024 決算を見ると、
NIIは17.13億ドルでした。(FXN前年同期比 +63%)
NIMは18.4%でした。
貸出資産やクレジットカード利用残高の成長に支えられNIIが拡大したことが確認できる一方で、高金利環境により調達コスト(例えば預金金利)が上昇するため、NIMが圧迫されていることが推察できます。
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マクロ環境要因により、しばらくはブラジル中央銀行の政策金利は高止まりすると予想されるためNu Holdingsにとっては逆風でしょう。
今後の決算においても、顧客数や1人当たり月間平均収益(ARPAC)の伸びに加え、NIIやNIMについても注意深くみていく必要がありそうです。
EPSの伸びと株価の割安感
Q3 2023に黒字転換して以降、EPSは順調に伸びています。
一方で株価は下落を続けているため、2024/12/27現在のPERは28倍程度まで下がってきており、割安感が出てきています。
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おまけ:アフリカ戦略🌍
Nu Holdingsは、2024年12月18日にアフリカおよびアジアで急成長中のデジタル銀行であるTyme Groupに1億5,000万ドルを投資し、同社の株式の10%を取得しました。 
Tyme Groupは、南アフリカやフィリピンでハイブリッド型のデジタル銀行モデルを展開し、既に1,500万人以上のユーザーを獲得しています。
今回の投資は、評価額15億ドルとされるシリーズDラウンドの一環であり、Tymeの事業拡大に向けた資金調達となります。
同社は2025年にインドネシアとベトナムへの進出を予定し、2028年には米国でのIPOを目指す計画です。
Nu HoldingsのCEOであるデイビッド・ヴェレス氏は、「Tymeとの提携で得られる知見を活かし、数億人規模への拡大を視野に入れる」と述べています。
この投資により、Nu Holdingsはアフリカ市場への間接的な参入を果たし、Tyme Groupの成長を支援することで、新興市場におけるデジタル銀行サービスの拡大を目指しています。
まとめ
為替変動、財政懸念、金利の影響といった短期的な逆風があるものの、Nu Holdingsの業績は堅調に思えます。
顧客基盤の拡大、ARPAC(1人当たりの月間平均収益)の向上、そして力強い収益性は、同社が長期的な成長ポテンシャルを秘めていることを示しています。
今後の展望を見極めるために、同社の業績に加え、マクロ経済要因や財務指標を引き続き注視することが重要です。
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