Nebius Group ($NBIS)について
AIブームが過熱し、関連銘柄が高騰する中で、市場の喧騒に埋もれてしまっている企業があります。
その名は、Nebius Group (NBIS)。
NVIDIAやMicrosoftのような巨人の影に隠れて、あまり知られていないかもしれませんが、潤沢な現金、欧米での積極的なAIインフラ投資、そしてNVIDIAが資本参加するという事実は、同社が単なる脇役ではなく、今後のAIインフラ市場を揺るがす可能性を秘めた「ダークホース」であることを示唆しています。
本記事では、このNebius Group の事業構造、強み、成長戦略、リスクを、より具体的かつ多角的に分析し、そのポテンシャルと課題を掘り下げていきます。
Nebius Group 誕生と歴史
Nebius Group は、ロシアのテクノロジー大手 Yandex から事業分離した企業です。
Yandex
Yandex は、1997年に設立され、検索エンジン、電子メール、翻訳サイ、さらにはタクシー配車サービスなど、多様な事業を展開するロシア最大のIT企業でした。
特に検索エンジンは、ロシア国内で圧倒的なシェアを誇り、「ロシアのGoogle」とも呼ばれていました。
法的にはオランダにある持株会社 Yandex N.V. が本社であり、アメリカの株式取引所 NASDAQ にも上場していましたし、2021年11月には、時価総額が300億ドル(約3兆4500億円)を超えるなど、グローバル企業としての地位を確立していました。
しかし、2022年2月にロシアがウクライナへの軍事侵攻を開始したことで、Yandex を取り巻く状況は一変します。
NASDAQはYandex株の取引を停止し、その時価総額は半年で75%も下落しました。2023年3月には、Yandexを含むロシア企業4社に対して上場廃止が通告されます。
Yandexはこれに異議を唱えますが、NASDAQは「ロシア事業の再編と売却を2023年中に完了すること」を条件に、上場の維持を認めました。
これを受け、Yandex N.V. は、検索エンジンや配車サービスなどの主要事業を、Yandexの時価総額の半額程度である4750億ルーブル(約7700億円)で、ロシアの投資家グループに売却することを決定しました。
(これは、ロシア政府が、外国企業がロシア国内から撤退する際に資産を半値で売却することを義務付けているためです。)
残ったのは、
AIクラウドプラットフォーム「Nebius AI」
大規模言語モデル開発のためのデータソリューションパートナー「Toloka AI」
自動運転技術開発を行う「Avride」
教育工学サービスを提供する「TripleTen」
といった事業部門でした。
2024年7月15日に「脱ロシア化」が完了したのちに、残ったこれら事業部門で再出発したのが Nebius Group です。
Nebius は Yandex の技術力と1000人以上のエンジニアや経営幹部を引き継いでいるようです。
CEO: Arkady Volozh
この「脱ロシア化」を主導した Arkady Volozh 氏は、Yandex の創業者兼元CEOであり、Nebius Group の設立者兼CEOでもあります。
事業構造
Nebius Group の中核事業は、AIインフラストラクチャの構築とソリューション事業です。
Nebius AI
Nebius AI は、GPUクラスター、クラウドプラットフォーム、AI開発者向けツールなどを、単なるインフラとしてではなく、AI開発を加速させるための統合的なソリューションです。
特に、最新のNVIDIA GPU (H100, H200) を採用し、効率的なGPU間通信を実現する InfiniBand ネットワークなど、AIワークロードに特化した技術を駆使することで、高い計算能力と効率性を実現しています。
Toloka AI
Toloka AI は、AIモデルの学習データを生成するためのデータソリューションを提供しています。
アノテーション、データ収集、評価など、AI開発の全段階をサポートします。顧客のニーズに合わせて柔軟にサービスをカスタマイズすることができ、特に生成AIプロジェクトでは高い成長を遂げています。
TripleTen
TripleTen は、米国やラテンアメリカで展開するEdTech事業で、実践的なブートキャンプ形式の教育プログラムを通じて、テクノロジー人材を育成しています。
AIを活用した学習アシスタントを導入し、学習効率を向上させており、単なる技術スキルだけでなく、実践的な能力を持つ人材を育成している点が特徴です。
Avride
Avride は、自動運転車と配送ロボットの開発を行っています。
Uberとの戦略的提携は、単なる技術提携ではなく、自動運転技術の社会実装に向けた大きな一歩です。Avride は、自律走行技術の競争が激化する中で、Uber という強力なパートナーを得て、市場でのプレゼンスを高めようとしています。
Nebius Group は、データセンターを自社で運営しており、高い柔軟性と制御を実現しています。
フィンランドでは、既存のデータセンターを拡張することで、ヨーロッパでのAIインフラを強化
米国ミズーリ州カンザスシティにデータセンターを建設
パリのEquinixデータセンターのような大手プロバイダーとの提携
これらのデータセンター拡充には10億ドル以上の投資が予定されており、AIインフラの構築を加速させることでグローバルな市場アクセスを拡大しています。
強みと競争優位性
この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?