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Arm Holdings $ARM 2Q2025決算レビュー

Arm Holdings($ARM)は、ソフトバンクグループ傘下で、半導体設計の世界最大手企業です。スマートフォン向け半導体設計では9割を超える圧倒的なシェアを誇り、省電力設計に強みを持っています。同社の収益は主に、半導体企業にライセンスを供与した際のライセンス収入と、チップ出荷の際のロイヤリティ収入で構成されています。近年は、AI向けなど大量の電力を消費するチップ向けにもシェア拡大が期待されています。


決算サマリー

今回の2025年度第2四半期決算は、売上高と調整後EPSが市場予想を上回るというポジティブな結果となりました。

  • 売上高:8億4400万ドル(予想8億1100万ドル) 前年同期比+4.7%

    • ロイヤリティ売上高:5億1400万ドル(予想5億900万ドル) 前年同期比+23%

    • ライセンスおよびその他売上高:3億3000万ドル(予想3億ドル)前年同期比-15%だが市場予想を上回る

  • 調整後EPS:0.30ドル(予想0.26ドル)

  • 調整後売上総利益:8億2000万ドル(予想7億8500万ドル)

  • 調整後粗利益率:97.2%(予想96.9%)

  • RPO(Remaining Performance Obligation):四半期比10%増

  • ACV(Annualized Contract Value):前年同期比13%増

特に、ロイヤリティ収入が大幅に増加し、Armv9アーキテクチャの採用とAI需要の高まりが業績を牽引しました。

しかしながら、時間外取引では株価が下落しており、市場はQ3 2025およびFY2025通期の売上高見通しが市場予想を下回ったこと、そして高バリュエーションに対する警戒感を示しています。
長期的な成長戦略は順調に進捗しているものの、短期的な収益性と今後のガイダンスに対する懸念も残る結果となりました。
また、Qualcomm訴訟問題に対する懸念も要因の一つでしょうか。

ポジティブな側面

好調な業績

Armの2025年度第2四半期決算は、市場予想を上回る好調な結果となりました。

ロイヤリティ収入(グラフの濃い青)は前年同期比で23%増と大幅な成長を遂げています。
特にスマートフォン向けArmv9アーキテクチャの伸びが成長を牽引したようです。


調整後粗利益率は97.2%と高い水準を維持しており、収益性の高さが際立っています。


RPO(残存履行義務)は前Q比で10%増加しています。

補足:
RPOとは、企業が顧客との間で締結した契約に基づいて、将来的に履行する義務(サービス提供、製品納入など)のうち、まだ収益として認識されていない部分の合計金額を示します。
将来的に収益として認識される可能性がある金額を示すため、企業の収益ポテンシャルを測る上で重要な指標となります。
現在の数値は、過去から積み重ねられた契約の未履行部分を合計したものであり、過去の契約の状況も考慮する必要があります。


ACV(年間契約額)も前年同期比13%増と、ライセンスビジネスが堅調に成長していることを示唆しています。

補足:
ACVは、契約期間が複数年にわたる契約の場合、1年間当たりの契約価値を均した金額を示します。
契約を獲得した時点での年間契約額を示すため、企業の営業活動の成果を測る上で重要となります。
一方でライセンス売上高は、契約締結時に収益が認識されるわけではなく、ライセンスの提供開始時点や、契約で定められたマイルストーンを達成した時点で収益を計上します。
そのため、Q2 2025は収益として認識したライセンス売上高が少なかった一方で、ライセンス契約の獲得自体は順調に伸びているとみることができるでしょう。

テクノロジーの優位性

Armの技術的な優位性も今回の決算で改めて確認されました。

Armv9アーキテクチャの採用が着実に進み、ロイヤリティ収入の25%を占めるまでになりました。

Armv9チップのロイヤリティフィーはArmv8のそれに比べ2倍以上と言われているため、Armv9アーキテクチャの採用がさらに進むことでARMの成長が加速することが期待できます。

ただし、Armv9比率は前Qと比べ伸び悩んでいるように見えるため、次回以降の決算でもこの値は注視する必要があるでしょう。

個人的にはスマートフォンやデータセンターのみならず、Windows PC 向けチップにもArmv9の採用が進み、これがさらなる成長のドライバーとなることを期待しています。


カンファレンスコールでは、より複雑なチップ設計に対応するためのArm コンピュート・サブシステム(CSS)の採用も拡大していると語られています。
顧客のニーズに合致したソリューションを提供できていると言えるでしょう。

CSSとは、Armが提供する、複数のArm IP(Intellectual Property、知的財産)を事前に統合・検証した、半導体チップ設計のためのモジュールです。

CSSへの需要が予想を上回っており、ライセンス収入の成長にも貢献している。
過去1年でCSSライセンス数が倍増した。
MediaTekがArmのv9 CSSを搭載した最新のチップセットDimensity 9400を発表し、モバイル分野で初めてCSSが採用された。
ADASとIVIの両方のアプリケーションでCSSの強力なパイプラインを確認している。また、CPUアクセラレーションによるエッジAI製品の需要は非常に強い。

Shareholder Letter, Conference call 抜粋

Mediatek Dimensity 9400や、Microsoft Azure Cobalt 100などが代表的でしょう。

CSS substantially increases Arm’s royalty revenue per chip

とあるように、CSSの成長もARM全体の成長ドライバーの一つになりそうですね。

従来のスマートフォンのみならず、データセンターや自動車分野でも、ARMはそのプレゼンスを急速に高めていると思います。


ATA(Arm Total Access)、AFA(Arm Flexible Access)の契約数も順調に伸びていますね。

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