ヒカルはなぜ4630万円誤送金事件の逮捕者を助けたのか ~ヒカル著書『心配すんな。全部上手くいく。』~
今年、私が最も驚いた動画は、ヒカルが阿武町の給付金4630万円誤送金事件の田口翔被告に行った独占インタビューだ。
『4630万円誤送金問題の田口翔を保釈直後に独占インタビューしました』
ヒカルは、回収不能となっていた約300万円程度を代わりに支払い、保釈にも立ち会う。
そして、被告への独占インタビューを行い、仕事まで斡旋した。
絶対にテレビや新聞の報道では起きえない事態を動画にしたのだ。
通常、マスコミは、被告が起こした事件を蒸し返しながら保釈現場を報道して、終わりだ。ワイドショーは、被告を叩いて視聴率を稼ぐだけだ。ネットニュースは、被告が悪く映る写真を使って、イメージを植え付ける。
そうやって、マスコミは、被告を悪者として扱い続け、人生を壊していく。
この事件の田口被告も、既にマスコミの報道によって、このままでは就職は不可能で、普通に生活していくことすら困難なレベルに達しようとしていた。
村社会と揶揄されることもある日本社会では、コースアウトした者に対してどこまでも冷たい。
しかし、ヒカルは、田口に自らの言葉で謝罪と反省、そして、これからの生き方について思う存分語らせる。
そして、田口からこんな言葉を引き出すのだ。
「もう頑張ろう一筋ですね。親孝行とか、周りとか助けてくれた人を逆に助けられるようになりたいです」
それを受けてヒカルもこう述べる。
「田口君がやり直せたら、これって凄いこと。今後、人生・道を踏み外した人にとっても希望になると思う。ネットで潰れた人って世の中に沢山いると思ってて、10悪い事やったとしても100悪い事のように世間が作りだして、10しか罪償わなくていいのに、100以上の罪を償わなくてはいけないことが起こる。(そんな)社会的制裁を受ける人っていると思ってて、そういう人の希望になる可能性があると思う。だからこそ最後までやり切って、立ち上がってほしいと思いますね」
私も、役所に勤める知人がわずかな収賄の容疑で逮捕され、懲戒免職の処分を受けたことがある。なかなか断り辛い状況に追い込まれて、罪を犯してしまったわけだが、それによってその後の人生が絶たれてしまうのは、あまりにも不憫だと憤りがあった。
しかし、何の影響力もなく、雇用の斡旋もできない私は、知人を救ってあげることすら叶わないのだ。
それにひきかえ、ヒカルは、抜群の企画力とトーク力でトップYouTuberに駆け上がり、31歳にして世間に対して絶大な影響力を持ち、一流芸能人を遙かにしのぐ財力を持っている。
そして、吉本興業を契約解除になった宮迫博之を救い、今度は、世間を揺るがす事件の被告を救おうとする。
どうして、そんな思考にたどり着いたのか。
私は、そこに興味を持って、ヒカルが最近発売した著書『心配すんな。全部上手くいく。』を読んだ。
そこには、ヒカルが短期間で積み重ねた膨大な経験に裏打ちされた理論があった。
世間の不条理で窮地に陥った人を思いやり、助けることによって、自らの知名度や人気、動画視聴数を上げる手助けをしてもらえる。
その相互関係を巧みに築きながら動画を作ることによって、ヒカルは、唯一無二の存在になってきたのだ。
マスコミは、数多くの社員がいるから代償を嫌う。テレビ番組も、スポンサーがあるから代償を嫌う。
だから、マスコミも、テレビ番組も、成功者を持ち上げ、失敗者を叩くという単純明快なストーリーを作りだす。
一方、ヒカルは、500万人近い登録者を持ち、マスコミ級の影響力を持つものの、一個人だ。賛否両論あり、1つ間違えば自らも世間から激しく叩かれるリスクがある事に対しても、ヒカルなら挑戦できる。
そして、世間にはびこる不条理を暴くかのように、ヒカルは、新たな視点で救うべき者とニーズを見極め、動画を作って多くの視聴者を巻き込み、世論を動かしていく。
4630万円誤送金事件の被告を救おうとする動画は、これまで決して誰も手を出そうとしなかった領域に足を踏み入れた画期的な作品である。
日本社会における、人々の根本的な考え方さえ覆してしまうほどの。
ヒカルは、今後、いかなる世間の不条理を暴き、世論を変えていくのだろうか。
唯一無二のYouTuberの今後に目が離せない。