おならの妖怪がかわいい。《妖怪の音報告書#1》
おならをする妖怪を見つけましたので、急ぎ報告いたします。
あ、わたくし妖怪研究家でして、目下、「妖怪の音」の研究を志している者でございます。
今回発見しましたのは、
「オッケルイぺ」又の名を「オッケオヤシ」
というオナラの妖怪、
樺太はアイヌに伝わる妖怪でして、名の意するところは、
オッケ 屁をする
ルイ 猛烈すぎる
ぺ 者
オッケ 屁をする
オヤシ おばけ
ということでございます。
屁をする猛烈すぎる者
もうここで、わたくしはたまりません。
猛烈すぎる者ってなんだよ。だれだよ。
意味が分からないけど、胸に迫ってくるものがあります。
…さて、どんな妖怪かといいますと、
室内に一人でいると、突然炉でボアと音がする。とたんにあちらでもボア、こちらでもボアと際限がない。部屋中、くさくてたまらない。このときはこちらも負けずにボアと放てば退散する。ボアが間に合わないときは口真似するだけでも退散するというから、気はやさしいらしい。
(知里真志保編訳『アイヌ民譚集』)
出典:千葉幹夫 2014 全国妖怪事典 講談社学術文庫
という妖怪でございます。
あれ、なんかかわいい・・・
ボア。
気はやさしい猛烈すぎる者の放つ、ボア。
あれか、猛烈すぎる者というのは、力持ち的な、おすもうさん的なことか。
マッチョマンか。
いかつくてゴツいのに、おならをする。
ボア。
かわいい。
ボアされたい。
癒されそうな気がしてきた。
すぐに退散しちゃうのもかわいい。
最後に、もうひとつこの部分、
こちらも負けずにボアと放てば退散する。
呪文を唱える、みたいなノリでオナラを放てば退散できるって言ってるけど、普通のひとはそんなふうに即オナラできないって。意思でオナラを操れる人間はおりませぬ。
もし、修行を積んでその術を手に入れたとしても『オナラを自由自在に操る陰陽師』では格好がつきませぬ。締まりがありませぬ。
尻だけに。
以上、取り急ぎとなりますが、まずはご報告のみにて失礼いたします。
ボア!
引用・参考文献
千葉幹夫 2014 『全国妖怪事典』 講談社学術文庫
村上健司 2015 『日本妖怪大事典』 角川文庫
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