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ジャパンカップ2022海外馬血統 1/2

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シムカミル

シムカミルの父は、ミスプロ直系のタマユズです。ミスプロ系らしい豊かなスピードを持ったタマユズは、フランスのマイルG1・ジャックルマロワ賞を勝利しました。先行して止まらないタマユズのレースぶりは、まるでアメリカの強い馬のようでした。

シムカミルの母父は、ヌレイエフ直系のピヴォタルです。こちらもスピードのある馬で、イギリスの1000mG1・ナンソープSを勝利しました。現役時代のタイトルはこれ1つでしたが、種牡馬になって才能が開花します。自身のようなスプリンターから、2400mを走り切る中距離馬まで、距離不問で多くのG1馬を輩出しました。これはピヴォタルの母系に入っているバスティノ(イギリスの菊花賞にあたるセントレジャーSの勝ち馬)の影響と思われます。

また、ピヴォタル産駒でシムカミルの母スウェルティアは、ミルリーフ直系のシャーリーハイツという、スタミナ・持続力・精神力を大幅に底上げする血が流れています。タイトルホルダーとパンサラッサにもシャーリーハイツが流れていると聞けば、その影響が何となくイメージできるのではないでしょうか。血統表の奥深くにいても主張してくる血で、スウェルティアも2400m前後の距離で結果を残しました。

シムカミルは日本ダービー馬・ドウデュースを向こうに回し、フランスの2400mG2・ニエル賞を勝ちました。そのスタミナの根源は、母スウェルティアから来ていることは間違いありません。父が短距離志向のミスプロ系で、母が中距離志向でシャーリーハイツ持ちという配合は、どこかパンサラッサを思わせます。

ただ、サドラーが入って重厚さが強調されたパンサラッサよりは、ミスプロ、ヌレイエフ、コジーン、ダンジグといったスプリンターが散りばめられたシムカミルの方が、むしろ東京向きの軽さを感じます。

一方で、東京の最終直線における瞬発力を強化するような血は特になく、馬場に適応できても展開に適応できず、いわゆる切れ負けする可能性があります。その意味では、前を引っ張ってくれるユニコーンライオンの参戦は、シムカミルにとってはプラスになります。

オネスト

オネストの父は、サドラー直系のフランケルです。スタミナやタフネスの代名詞ともいえるサドラーを祖父に持つフランケルは、圧倒的な身体能力を持ちながら、気性難のため祖父よりも適性距離が短くなりました。マイルを中心に1400mから2000mまで10個のG1を制覇し、無敗で締めくくった真の怪物です。その能力は産駒にもしっかりと受け継がれ、日本ではソウルスターリング、モズアスコット、グレナディアガーズといったG1馬を輩出しました。

オネストの母父はダンジグ直系のシーザスターズです。初戦こそ敗れたものの、イギリスクラシック二冠や最終戦となった凱旋門賞を含む、6つのG1を制覇しました。こちらは2000mを中心に、1600mから2400mまでと、フランケルよりも長めの距離に対応しており、産駒も同様の傾向があります。

オネストで特筆すべきは、名牝アーバンシーの3×3というクロスを持っていることです。アーバンシーは、ガリレオとシーザスターズという世界的な名種牡馬を産んだ偉大な母で、日本ならシーザリオみたいな立ち位置の馬です。凱旋門賞を制覇し、同年のJCにも出走しましたが8着に敗れました。余談ですが、この時のJCには、ウイニングチケット、ナイスネイチャ、メジロパーマー、ライスシャワー、マチカネタンホイザといったウマ娘転生勢も多数出走していました。

フランケルについては、日本ですでに産駒が活躍しており、馬場適正は十分に期待できます。一方で血統全体を見ると、サドラー、レインボークエスト、ニジンスキーと、重厚なスタミナを伝える血が多く、シムカミル同様、東京の最終直線における瞬発力には疑問が残ります。ただし、父フランケルにスタミナが強調された牝系という配合は、ソウルスターリングを彷彿とさせるものです。

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