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ペット用のシャンプーは雑貨だから悪いのか?

ペット用品の高価格帯の需要が高まるにつれペット用商材の品質もしだいに上がってきている昨今。こんな言葉を聞いたことがないだろうか。




「このシャンプーは雑貨ではなく化粧品だからいいですよ」




正直この説明には違和感を覚えている。ぼくはイヌのシャンプーの企画、開発を担当している。毎日トリミング(イヌの美容)をしていて、ヒトの化粧品検定協会のコスメコンシェルジュでもある。だからあえて言わせてもらおう。「化粧品だからいい」とは一概には言えないという事を。





そもそも雑貨と化粧品の差なんてものは線が引かれているかどうかでしかない。博識な方はお分かりだろうが知らない方のために今一度簡単な説明をしておこうと思う。




・化粧品=全成分の表記が義務づけられている
・雑貨=全成分の表記義務がない



これはつまり「雑貨」であるペット用シャンプーのメーカーが「これが全成分です」と言ったところでそれが全成分ではない。という事がありえるということ。消費者には確認する術がありません。化粧品では法律上全成分の表記義務がありますので何が入っているのかがわかるというメリットがあります。(原料のキャリーオーバーの成分については任意)





・化粧品=成分の配合上限が決められている
・雑貨=成分の配合上限が決められていない




これはつまりどういう事かというと、化粧品には「ポジティブリスト」というものがあり「使ってもいいけど配合量に気を付けてね!」という成分があります。



具体的な例として殺菌成分の「クロルヘキシジン」を例に出すと日本では結膜嚢以外の粘膜への使用禁忌扱いとなっています。そして「粘膜に使用されることがない化粧品のうち洗い流すもの」に対して100g中に0.10gまで。つまり化粧品のシャンプーには0.1%しか配合できません。




雑貨ではその配合上限を無視して高濃度で配合される事もあり注意が必要です。個人的にはそもそもイヌのシャンプーは目(粘膜)に入ってしまう可能性もあるため入っていてほしくはないものです。この配合上限をクリアするには基本的には「医薬部外品」や「医薬品」として販売されるべきものだと考えています。




防腐剤に関しても化粧品には配合量に基準があります。しかし海外の雑貨のシャンプーで防腐剤が化粧品の基準値以上に検出された雑貨シャンプーも確認しています。海外製品では日本での使用が禁止されている成分が入っている事も多く、化粧品としては輸入できないが雑貨としてなら通せるというお話しも伺ったことがあります。(輸入に関わったことはないので本当かはわかりませんが・・・)




化粧品とは・・・・

「身体に塗擦、散布その他これらに類似する方法で使用されることが目的とされている物で、人体に対する作用が緩和なものをいう」とされています。
「化粧品である時点で作用が緩和だと考えられる」という事です。そして使用できる原料に関しても日本の「化粧品工業連合会に化粧品の成分として申請・登録をされている原料」しか使用できません。表示名称も決められています。例えば化粧品であれば「ラウリル硫酸Na」と表示されるものが雑貨では「植物由来界面活性剤」と表記する事もできるという事です。(同じものでも優しそうに見えますよね)
ペット用雑貨シャンプーでは登録されていない原料の使用や消費者として判別の難しい原料の表示名称で販売されているのが現状です。



そもそもの土俵が違うので全成分が記載されていない(されていてもそれが本当かどうか確認ができない)という一点が「消費者の判断材料を奪っている」ことになるのではないでしょうか。




そういった意味でもぼくは雑貨であるというだけで「お客様に自信を持っておすすめできるものではない」と考えています。今後ペット用品工業会などの団体がシャンプーの全成分表記の義務付け等で動いてくれる事は期待しています。




雑貨であるからといって全てのメーカーに悪意があるかと言われればそうではありません。きちんと作られているメーカーはあります。




ただそれを客観的に証明できる手段がないという事です。信じるか信じないかは消費者しだいと言ってもいいでしょう。




雑貨では例えば一般人の作る「手作り石鹸」がありますがこれは化粧品ではありません。「手作り石鹸」は雑貨となり、ヒト用に販売してはいけない事になっています。化粧品は製造する場所が「製造業許可」を取得していることと「総括製造販売責任者」の資格を有する事が条件となるためです。




詳しくは薬事法マーケティングの教科書様の「化粧品製造販売許可申請の手続き方法」(クリックで飛べます)に書かれていますが、一般の方で手作り石鹸を作られている場所でこの許可をとっている所はまずないでしょう。製品の安全性は全く担保されていません。(製造の許可を取った上で手作り石鹸を作られている企業様は多数ございます。ここでは手作り石鹸教室など趣味程度で作られている方を対象に書かせて頂いております。)




現在ペット業界では手作り石鹸の被害も拡大しており、ヒトへの商売で失敗した方々がペットに流れてきている印象さえあります。手作り石鹸は自分で作ったものを自分に使用する場合は罰則がありませんが、他者に販売しても無料でプレゼントしても処罰の対象となります。広島県ではHPにて簡単に注意喚起がされておりますのでここから見てみてください。→広島県HP




ここまでの話しだと・・・・では「化粧品」ならばいいのか?という事になってきますがそれはそういうわけでもありません。




まず「化粧品」であるということは「皮膚に良い、悪いを」論じているのではなく「全成分の表記がされている」事と「使用している成分の配合量の違反がない」事と「使用禁止成分を使っていない」という事が確約されただけなのです。




化粧品を販売するにあたっての法律は「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」というものを厳格に守る必要があります。この法律を犯すという事は関わる全ての企業にデメリットしかないのでまずありえません




そう、やっとここから成分の詳細の解析ができるわけです。あくまで「化粧品である」というのはスタートライン。




「化粧品だから良い」ということになってしまうと「じゃあペット用の雑貨よりもヒト用のミノンとかメリットとかで犬を洗ったほうがいいのか?」という話しになってしまいます。




正直なところ「そのほうがいい」雑貨シャンプーもあれば「それはやめておいたほうがいい」という化粧品のシャンプーもある。という事です。




詳しく書くとドラゴンボールのセル編くらいのボリュームになるので割愛しますがまずヒト用に製造されるものに関しては皮膚や被毛へのダメージだけでなく「使用感」が重視される傾向にあります。




すすいだときに手触りがいいとかいい香りがするとか。とくに手触りや質感については重要視されるようです。




ヒト用のシャンプーには基本的にコーティング成分が多めに入っている事が多く、イヌには向きません。すすいだときにヌルつきが残るようなものはあまり皮膚にいいとは言えませんし、ギチギチになる(主に石鹸成分)ようなものは乾燥を誘発させる可能性が高まります。




では逆にヒト用の商材全てがイヌに使えないのか?と言われれば正確に言えば「使えるものもある」というのがぼくの答えです。




イヌにはイヌに適したモノがあります。ヒトにはヒトに適したものがあります。しかしどちらにも対応できるものもあります。




(pHがイヌとヒトとで違うかどうかの点に関してはぼくは思う所があり、どちらも弱酸性が良好な状態だと考えています)





細かい事を言えば「そのイヌの状態」や「そのヒトの状態」で使い分けるべきでしょう。




全成分がわからない。それがどれだけ消費者に不利な条件か。今一度考えて頂きたいと思います。そのためにぼくは「トリマー」としてきちんとした成分知識を持ってお客様に説明していきたいと考えております。

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