構造上の欠陥にふたをして生きるぼくたちは
COVID-19、東京五輪の延期、緊急事態宣言。今まで生きてきた中でありえなかったことが現実に起きている。
このままではだめだと世界中が気づいた。
「今まで」が終わり「これから」があちこちで声高に叫ばれているし、これからに合わない業態はじわじわと、役目を終えていくのだろう。
テレビでは故人のどうぶつ園も終わりを迎え、みんなのどうぶつ園がはじまった。ペット業界に身を置くものとして少し視聴をしてみたけれど、結局は眉間にしわを寄せながら観ることになった。視聴率のためか無知ゆえの放送なのかの真意はわからないけれど、ここはおそらく「今まで通り」なのだと思う。
ペット業界・・・といえば主語が大きくなってしまうので「トリミング業界」に絞って今日は話しをしたい。
ぼくたちの「いままで」と「これから」はどうなっていくのだろうか・・・。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
トリマーの業界はとてもとても狭い世界です。
古き良き(?)徒弟制度。エビデンスレベルの低い情報たち。ネットワークビジネス。低賃金。価格競争。インターネットアフィリエイターの餌場。
この数年トリミング業界をできるだけ客観的に見るようにしてきたのだけれど、これを読む方はトリミング業界に何を感じているでしょうか。
・よくわからない
・好きな仕事できていいなぁ
・イヌの美容師サン
トリマーになら伝わるけれど「トリマーではないヒト」には伝わらない苦しさみたいなものがベタリと肌にまとわりつく。何度ぬぐってもぬぐいきれない。
トリマーの現実と、お客様の思っている「トリマーという仕事」がどんどんかけ離れていく感覚。
うーーーん。。。。。困ったなぁ。。。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
そんなときにSNSをにぎわせる「トリミングサロンに愛犬を殺されました」という声。あまり詳しくはわからないけれど、亡くなったわんちゃんご冥福をお祈りいたします。事故を起こした事が事実であればトリマーはしっかりとお客様と法律に向き合って頂きたいと思います。どうか学生さんに不利な環境とならないよう願っています。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ここにトリマー業界の問題・・・というか構造上の欠点がある。
あまり追えてはいないのだけれど、SNSでのトリマーの反応は様々だった。こんなひどいことが!シンジラレナイ!だったり、ブ○ピタがどうのこうのだったり、無理をせず休ませながら作業しようと言ってみたり、騒がず自分を顧みようとしてみたり、無言を貫いてみたり、体罰への嫌悪感を出してみたり。
様々な反応を見る中で、何が正しいといいたいわけではないけれど絶対的に足りないことがある。それがトリマー業界の問題だとぼくは以前から感じています。
ーーーーーーーーーーー
解説者の不在
こういったセンセーショナルな事故があった場合、やらなければいけないことは業界内での自省だ。トリマーならイヌへの虐待をしているサロンは全国にまだまだあると、肌感覚でわかっているはずだ。
わかっているからこそ「自分は違う」という声が出たんじゃないだろうか。数年前のぼくだったらそれこそ鬼の首をとったように晒し上げたのではないかとも思う。「自分はあいつ/あいつらとは違う」と。
結論を先に言えばトリマーとして、業界としてやらなくてはいけないことは「背景を含めた状況説明」だ。トリマーの業界は慣習的にこうなっていて、体罰を用いるサロンがあっても不思議ではない。とはいえ近年そういった流れではなく「イヌからできるだけ苦痛を取り除いた作業をしていこう」というヒトたちもいる。だけどまだ全体の数パーセントだ。
そういうことを体系的に、情緒的に、感情的に、個人的に語る事が必要なのではないだろうか。良いとか悪いとか悪口とか批判とかどうでもよくて、事実をまず語ろう。そしてその事実をふまえた上で、自分たちは・・・と続ければいい。
トリミングサロンではInstagramやTwitterでの短い文面でどう伝えるかというよりも、長い文章で丁寧に自分の思いを語り、お客様に安心していただくことをおすすめする。
ぽろぽろ見かけるトリミングサロンは「窓から施術風景が見えた方がいい環境だ」というような誤解もといてみてもいいかもしれない。
同業者や、より広くの飼い主様に目を向けるのであれば「業界である程度地位のある人間」がこれをやることで全体を守れるはずだと感じている。
しかし残念なことに、トリマーは地位が上がれば上がるほど口を閉ざす。饒舌にしゃべるときは自分に直接/間接的に利益があるときのみ・・・だ。余計な敵は作りたくないだろうし、その敵がまた自分の利益になるために存在するとしたらなおさらだろう。ぼくもまたその一人なのかもしれない。
だからぼくはトリマー業界の構造に問題があると考えています。直接的に問題を提起したヒトが煙たがられないような仕組みに変えることがより業界全体を素早くよい方向へと向かわせることができる。
解説者不在問題を今ここに提起してみたのだけれど、ぼくにできる解決策としてはやはり「まともな団体を作って公式見解をのせること」だと思う。そうすればおそらく多くのトリマーはそれを読み、引用又は追加説明をしてお客様に見解を示すことができる。引用に足る文章が見られないことが問題なのだと思う。
まだ今のぼくでは解決できそうにないのだけれど、自分で考えて発信してくれるヒトが増えてくれるといいなと感じています。良い主張に年齢も、立場も関係ない。
※ここでは体罰を日常的に行うサロンが「犬に優しい/負担のないトリミング」と自称している問題はまた話しが変わるので割愛しています。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
正直こんな話しをまだまだ下っ端のぼくがする必要はないのだと思うのですが、書かずにはいられなかった。ぼくを駆り立てるのは「イヌが好き」という感情や「義務感」や「正義感」などだけではないように思う。
命を犠牲にしなければ話題にならないほどに、トリミングサロンでイヌへの精神的/身体的体罰はあちらこちらにある。同じ業界の人間としてこれは大変申し訳なく思うし変えたいと思う。自身のサロンでもゼロだとは言い切れない。
業界全体として上がっていくためにはクサイモノにフタをせず、現実をまず受け入れたうえでじゃあぼくは・・・ぼくたちはどうしていくのかを語っていきたい。
その上で、お客様に理解して頂けるような文脈をつむいでいこうと思う。
情報と教育で減らせる人災はまだまだ多い。
ここから先は
¥ 600
取材費や研究費に使わせて頂きます。おなかがすいたらぼくの晩ごはんがアップグレードします。