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【2024松本山雅】vs宮崎 A (2/25)レビュー


・宮崎戦

何はともあれ、ほっとしたというのが1番。
敵地での開幕戦を勝利で終えることが出来た。
今シーズンの山雅の基本形と、現時点で見えている課題を確認していきたい。

・メンバー

山雅は新加入選手が5人(高橋、馬渡、浅川、安藤、山本康)先発。
ユース出身の神田と樋口が入った。

1番のサプライズ要素はGKの神田。
キャンプ時点で横一線との報道はあったが、同じく足元に強みのある大内との競争に勝っての起用。
実績はコロナの影響でビクトル・村山が欠場した2022年シーズンの出場しかない中で、大抜擢と言える。

対する宮崎は新加入選手が8人先発。
昨シーズンから在籍したのは植田、真鍋、橋本のみ。
去年の主力だった代や江口。新加入でベテランの大武などはベンチスタートとなった。

・追い風の前半で2得点

キックオフ直後からトップギアで試合に入ったのは山雅。
昨シーズンからの継続に個々の戦力の特徴が合わさり、自分たちのサッカーを押し付けていた。
この時間帯で見えたポジティブな面は下記の通り。

1.山本康裕を中心としたビルドアップ
2.右サイドのチャンスクリエイトとフィニッシュワークに絡む逆SB

一つ一つ解像度をあげていこう。

1.山本康裕を中心としたビルドアップ

ビルドアップのタクトをふるうのは山本康裕だった。
序盤は彼が色々な場所に顔を出しながら、この試合ではどのパターンが効果的かを探っているように見えた。
位置としては、右CB的or中央CBのように最終ラインに落ちた状態での3バックでのビルドアップが見られた。その瞬間は真ん中にいる菊井がアンカー位置まで落ちて触るシーンもあり、ボランチの相方の住田は高い位置に潜るシーンが多く見えた。

その中で山雅は中盤逆三角形のようなビルドアップに落ち着く。

ルートとしては2CBと顔を出す山本康で2トップを動かしつつ、高さを変えるSBに対して付ける形。SBの出口に対してはSHとIH化した菊井・住田が連動する形でビルドアップからサイドでのプログレッション(前進)に繋げることが出来ていた。

2.右サイドのチャンスクリエイトとフィニッシュワークに絡む逆SB

練度、経験の差もあるからか、ビルドアップからの前進で機能する回数が多かったのは右サイドだった。

馬渡と安藤のコンビネーションでシンプルにパスを繋いで前進。最終的に大外から馬渡のアーリーのクロスと内側のポケットをとるランニングする安藤の2択でチャンスクリエイト。
特に右サイドで効果的だった要因はSBの利き足にある。
シンプルにクロスの脅威という側面もあるが、アタッキングサードに近い位置でボールを持った時、クロスを前提にしたボールの置き所からポケットへのパスへのコースを(若干ではあるが)確保しやすい。
また、手前からパス交換して前進したときに、利き足と同サイドであれば持ち替えのタイムラグがなくプレー選択が可能。
この点を考慮すると、しばらくはサイド打開のメインは右サイドになる可能性が高い。

しかし、左SBは別の形で貢献をすることになる。
オウンゴール判定となった浅川のシュートシーンでは、逆SBの樋口がゴール前に飛び込み折り返している。
このあたり、去年の序盤に見えた形の実行がフィニッシュフェーズで表れていて、右サイドからの攻撃の迫力を高める要因になっている。

・素早い宮崎の修正

山雅は素晴らしい時間を過ごして2点を取ったが、徐々に宮崎が押し返してくる。

まずプレスフェーズでは山雅のサイドでのノッキングを誘った。
2トップが菊井や住田への縦パスを塞ぎながら、山本康裕と2CBを牽制する。それによって逃げどころは低い位置でサポートをするSBになる。
しかしここに対して、スピードあるSHが縦を切ってプレス。
内側を塞いでいるため、キーパーに戻すか蹴り出すしかない。
高橋祥平が前半途中からロングボールで飛ばす選択をする回数が増えるのだが、これは馬渡に入れてハマらないための回避策だ。

馬渡へ渡すと大渕に詰められてノッキングする。
前線の浅川に当てて回避

試合中に見られた回避策はもう一つ。
SBの動きに連動してSHが下がってタッチライン際にポジションし、縦切りしてくるSHの外側を通すプレーを選択、馬渡がひっかけて危うくロスト(ゴールキックになったが)というシーンもあり、選手の質でどうにかできていた。

これに対してほかの対策は、GK神田を使うことや裏へのランニングが考えられる。
GKを使うシーンに関しては、今までよりも増えたもののまだナチュラルに真ん中にGKを置いたビルドアップ(マリノスみたいな)をすることは出来ず、自陣深い位置から関わった時にのみ限定的に効果が出ていたように思う。

また、山雅の守備フェーズではSBのインバーテッドへの対応に苦労する。
そもそもギアを上げて入った山雅は途中からミドルプレス気味にプレー。
そこで余裕を持った宮崎の最終ラインから、大外に張った同サイドのSHへのプレー展開が増加。
それと連動してSBがハーフスペースをインバーテッドし始め、安藤が対応に苦労した。

大渕と吉田の2つの選択肢で安藤が迷う

この点1つの動きで簡単に迷いが生じてしまい、後手に回るのは現状の弱点だ。
おそらくマークの受け渡しはフィールド内での判断に委ねられている。(おそらく全てを決めすぎると、段々と後ろに重たくなり本来のアグレッシブな守備がしづらくなるため。)
内部で解決策を決めてからはそれで良いのだろうが、簡単に言うと「初見」に弱い。しかも、今回に関しては全体のオーガナイズが出来ず、後半にも後手に回る要因を作り出してしまった。

・押し込まれる後半

全体のオーガナイズという点で、馬渡のコメントがキーになる。

ミドルサードから(守備が)スタートしてる中で、できれば左利きのセンターバックよりは右のセンターバックに持たせてプレスをスタートしたかったんですが、うまくいかなかったです。うまくいかない時に自分がもっと(周りを)動かしていければよかったけど、解決が難しかったので、映像を見返して反省します。

山雅プレミアム 【試合後コメント】第1節 宮崎戦

前半インバーテッドを仕込まれて後手に回った左サイドから、ロングボールで一気に楠のアイソレートを活用するルートが加わった。
馬渡が言うように相手の右CBに誘導する形であれば、おそらくここまでの決壊をすることは無かっただろう。
質の高いボールを蹴れる左CBに余裕を持たせてしまったことで、ラインが高い状態から一気にひっくり返せるという状況を与えてしまった。
さらに、後半は宮崎の追い風。
疲れたところに向かい風でプレスに行き、ひっくり返されることで疲弊・トーンダウンしてしまった。

選手交代でもいまいち盛り返せず。
というのも根本の構造はあまり変わっておらず、プレスに行く浅川、菊井は交代がなかった事でギアアップをできる状況ではないからだ。
自分たちが意図したからと言って相手をコントロールできるとは限らないが、1つ構造的には負けている状態でプレーしていたのは事実だ。

・苦しい時間の耐え方

今年は苦しい時間をどう耐えるか。が課題になる。
失点シーンや最後のFKの2回、流れが悪い中でキープしようとして相手にチャンスを与えてしまったのは大きな反省点だ。
加えて今年は前線にターゲットとなる選手が居ない。
割とあるあるなのはSHが攻め残りしていてよーいドンをするパターンだが、割と頑張ってSHが戻ってくる山雅はそれも難しい。

そうなると、何とかボールがつながりカウンター発動というシーンが出るまでは耐えることが必要になる。
今回の試合であれば、滝や山口が長い距離を持ち運ぶカウンターシーンがあった。
そこでひっくり返して相手陣にボールを運べば、マイボールだろうが相手ボールだろうがまた前向きにプレーできる。

その瞬間を以下に作り出すかは重要だが、ゴールまでの距離を踏まえてリスクをおかすべきかそうでないのかの判断を正確にしなければならない。

・今年も対策を上回れるかがカギ

去年もあった対策に対する回答。
選手のクオリティが上がったことにより、個々人の力と連動しての打開は見られた。
例えばSBがSHに縦切りでプレスを食らった場面。SHが呼応して降りて、外側のレーンでもらい、内側を使って外すというシーンが散見された。
全てが上手くいったわけではないが、去年は藤谷・下川の単独突破というところだったため、まだ組織的な対応にはなってきている。
とはいえギリギリの交わし方をしているのでリスクは高め。
初見が続く昨季とは違い今年はほとんどのチームが霜田山雅との3回目の試合を迎える。原則が同じ以上もちろん相手にとっての想定外は少なく、試合の中で対応されるタイミングは早まるだろう。

山本康裕を筆頭に手を変え品を変えには経験がある選手が揃うし、神田のように足元に特徴のあるGKの起用もあり、着実に原則の中でのバリエーションを持てるチームにはなっている。

そして、それが補強したベテランのみができるものになるのではなく、しっかりと受け継がれるべきものであることはしっかりと言及しておきたい。

それぞれがそれぞれの個を持つ中で、全く同じことをする必要はなく、状況応じた選択肢を持つことが出来ればこのチームはさらに層が厚く、より強くなる。

まだまだ開幕したばかりなので、今後の試合での成長に期待したい。

ツヨクナル