【2020松本山雅】vs北九州(8/2)H レビュー
1.3連敗
ホームでの2試合を含む3連敗。
内容こそ町田戦より善戦したように見えたが、根本的な問題はまだ未解決。
現実的な策を講じるとしても、どのように攻略するかという部分において、以前より苦戦していた部分がそのまま現れた形となってしまった。
いい部分、悪い部分にそれぞれ触れながらこの試合を振り返ることで、今後1ヶ月続く強敵との連戦に備えることとしよう。
2.スタメン
・松本山雅FC
フォーメーションは3-4-2-1
前節から変更は3人。
浦田・彰人・阪野がスタメン復帰。
サブにアウグストが初めて入った。
・ギラヴァンツ北九州
フォーメーションは4-4-2
前節からはGK永井→高橋拓への変更のみ。
好調なディサロと町野のセットを2試合連続で使ってきた。
3.機能したプラン
山雅が用意したプランは、ある程度前線3枚でプレッシャーをかけながら、中央だけは封鎖しようというものだった。
攻撃においては、阪野にロングボールを当てる形で打開しようと言うのが見えた。
結果的に、ビルドアップ時の北九州の形を大きく変え、相手のやりたいことを抑えることにある程度成功していたと言える。
シャドーが引きすぎず、中央に残ったことで加藤が最初からダウンスリーすることが出来ず、SBは上がれない。(上がった場合は山雅のWBの迎撃にあう)
SBが上がれないことによって、幅を上手く広げることも出来ず、縦パスが入った際のサポートも遅れる。
北九州の選手としてはやりたいことを自由に出来たとは言い難い前半だったのではないか。
また、ボールが上手く収まり、押し込んだ際には、左サイドの龍平・浦田を中心に効果的な攻撃を見せた。
浦田は外に張った龍平の内側を上がり、ペナルティエリアに侵入するなどCBながら積極的な攻撃参加が光る。
個人的には髪を切って爽やかにして欲しいところ。
龍平は阪野が上手く合えば!というクロスボールを供給。
プレッシャーを受けても慌てずに繋ぐことが出来ていたのも良かった点。
守備においても役割がシンプルになり、少しヒヤッとしたシーンがあるものの、カバーに助けられ事なきを得ていた。
4.裏目に出たプラン
実は上手くいっているように見えて、山雅は苦しんでいた。
先程北九州のビルドアップについて述べたが、北九州が普段のビルドアップでないことによって、後ろ重心になっていたことは、山雅にとっては不利に働いていたのである。
山雅は阪野に当てていくことをメインに大きなロングボールを敵陣奥深くまで供給していた。
ここで、山雅は奥だけではなく手前に落とすという選択肢を持つことで、阪野が圧力を受けずに足元に収め、鈴木や彰人へと展開するオプションをつけることができるはずだったのだが、北九州のビルドアップが変形したことでスペースが出来ず、そこを狙うことが出来なくなってしまった。
ほぼ唯一この狙いが出たのが15分50秒に、鈴木がプレスバックでボールを奪ってからのプレー。
鈴木が阪野に当て、リターンを貰い彰人へとパスを供給し、一気にペナルティエリアまで侵入。
このようにシャドーの選手が前を向いてボールを受ける展開を理想とし、3人(と久保田)がいっせいにスイッチを入れ、プレーすることができていた。
このようなプレーはフロンターレが得意としており、ビルドアップで前進する為の十八番。(直近のガンバ戦前半で多用)
さすがフロンターレから来ている鈴木という感じはするが、この打開は素晴らしかった。
しかし、このように脅威を与えたプレーも実行できる回数は少く、北九州のビルドアップを変更してしまったことが、この点においては裏目に出ていたと考えられるだろう。
5.2失点、議論すべきは
山雅はボールを保持する時間を意図的に少なくし、前半を乗切ることに成功。
しかし、セットプレーの流れから失点を許してしまった。
このプレー序盤で、森下と浦田が接触。
双方足を引きずる仕草を見せ、その前から痛めていたとの情報もある森下が大野と交代している。
こぼれたところもあり、不運な失点だったと言う他ない。
2点目は浦田が裏に出たロングボールの処理に行き、足元に入りすぎたところをフレッシュな鈴木に狙われてしまった。
上下動をしていた浦田にこの失点の全責任を負わせるのは可哀想とも言え、結局のところ点が取れなかったツケが回ってきたとしかいいようがない。
中のポジショニングについてもスタメンから走り続けてる藤田が間に合わなかったのも致し方なく、そこを責めることも出来ない。
説明不可能の2失点となってしまった。
ここで議論するべきはやはり攻撃。
ロングボールがゴールラインを割る度に高い位置を取りプレスをかけた山雅が90分間耐えられるとは到底思えない。
先程の通り、ロングボールが北九州の最終ライン裏・その付近一辺倒になった事で北九州の体力消費が思ったよりも抑えられ、山雅の体力のみが着実に削られていく原因となってしまっただろう。
結果的に致命的な2点目を与えた部分は、その体力的な面を考慮せざるを得ない。
6.交代策
個人的には途中投入の選手に、短時間ながらふたつのポジションを与えるということに合理性を感じない。
将也は確実に右でスピードを活かすべきだし、左において不自由にさせてしまった時間がもったいない。
左WBに抜ききらなくていい同じ右利きを置くとしたら、右でスピードを使える将也よりも隼磨の方が適任だろう。
インスイングで制度の高いボールが入れば、キーパーも出づらい。
また、チーム状況にも寄るが、服部のFW投入はこれきりにする必要がある。
本格的に再コンバートさせる気があるのならば良いが、明確な志向スタイルを崩して一点を取りに行く戦術は結果を求め成長を捨てる事に他ならない。
また、布監督がどのような攻撃スタイルを志向し、どのように攻撃したいかというのは正直読み解くことは出来ないが、
CB陣のロングボール精度や、当てる選手のプレー適正を総合的に勘案するに、この編成に縦ポンスタイルは不適合であると言わざるを得ない。
下から繋ぐ攻撃に力を入れ、スペースを作り前線の選手のコンビネーションで打開するスタイルの方が、怪我で離脱している選手を含め適している。
そのように私は思ってしまうのである。
7.気になったこと
前項までで指摘してきたこと以外にも、気になった点がある。
一つ目は、ロングボールに走り込む前線の動きだ。
基本的に蹴られてからその落下地点に向かうか、落下地点で待ち構えるかの二択。
自ら飛び出し、呼び込むような動きは(画面外であるのかもしれないが)見受けられない。
また、素直に縦に走るのではなく、斜めに走るダイアゴナルランが少ないというのを非常に実感する。
北九州は2列目のSHが、山雅最終ラインのギャップを見つけ、そこに走り込むことでロングボールの供給を受けていたが、このような動きはDFを引き付け、前へのアタックに集中させない効果がある。(下図)
このようないやらしい攻撃を意図して作り出すことが、ゴールへの近道ではないだろうか。
また、鈴木が試合終了間際に相手選手ともめていたが、上手くいかなくてフラストレーションが溜まってしまうのは理解できる。
その点においては即刻にすべての問題が解決するということはないだろう。
問題は感情のコントロール。
前節含めかなりイライラがプレーに出ており、そのようなプレーをしたところで何か改善するわけでもなく、相手からしたら自分たちのやっていることが正しいと声高に宣言されているようなものだ。
去年ならうまくいかなくても仕方ないと思っていたのかもしれない。
ただ、今年はどうだろうか。
J1の気持ちを引きずってはないだろうか。
このような細部のマネジメントも重要になってくるだろう。
8.永遠に…
根本的なゲームプラン自体は現実的で、勝ちに行くんだという姿勢をまざまざと感じることが出来た。
本編で大いに触れた浦田はもちろん。
隼磨は、SBに対してプレスをかける役回りをWBが担っていたともあり、敵陣深くまでプレッシングに出てチームをもり立てていた。
途中交代上等の隼磨のプレーは、劣勢のチームに勇気を与えたに違いない。
横浜F・マリノスで偉大な日本の背番号3とプレーした2人が、それぞれのサイドで、彼がたった同じピッチで、彼の思いを背負いプレーしたこと。
これはきっと届いている。
私は2014シーズンから本格的に見始めた、比較的新しい人間である。
だとしても、このクラブを愛する人として、彼の存在を無くして語れない。
それを自覚している。
彼への感謝、その気持ちを背負う選手に感謝、今までこのクラブを創り、繋げてきた人達に感謝。
その思いを晴らすのは、勝利でしかない。