彼らの半分

私たち人間は
彼らの半分しか知らない。
彼らの半分しか知らないのに
全部を知っているつもりになっている。

彼らの足は速く
彼らの持久力は人間のそれを軽く超える。
彼らの顎の力は石をも砕き。
彼らのジャンプ力や突破力は常に想像を超える。
彼らの耳は人間の耳では捉えられない遠雷を聞きつけ
彼らの鼻は人間の放つ感情まで嗅ぎ分ける。
彼らの目はあまり良くないと言われるが
人間の正体をいとも簡単に見抜いたりもする。

ざっと、思いつくだけで
これだけの能力がありながら
彼らがそれを振りかざすことはない。
彼らは無能なフリでやり過ごす天才なのだ。

私たち人間は
彼らの半分しか知らない。
彼らの半分しか知らないのに
全部を知っているつもりになっているから
彼らの「何もしない」という知性に
気づくことが出来ないでいるのだ。