見出し画像

岡本節炸裂!一度は観たい戦争映画『肉弾』

みなさんは、いつか観よう観ようと思いつつ、観ていない映画ってありませんか。私にとって、そんな映画のひとつが鬼才・岡本喜八監督の『肉弾』です。この度、戦後76年を迎えた今年の8月、ようやく観ることができました。今回は、kayserが映画『肉弾』の魅力について紹介します!

岡本喜八渾身の戦争映画『肉弾』

『肉弾』は1968年に公開された岡本喜八監督、オリジナル脚本の戦争映画です。岡本監督の戦争体験をもとに作られたといわれています。全編モノクロのスタンダード作品。

岡本監督作品『日本のいちばん長い日』でもナレーションを務めた仲代達矢が、『肉弾』でもナレーションを担当しました。主演は、映画初主演となる寺田農が抜擢され、この作品で毎日映画コンクール男優主演賞を受賞しました。ヒロインを務める大谷直子は一般公募で選ばれ、スクリーンデビューを果たしています。

主人公・あいつは21歳と6カ月という若さながら、特攻隊に任命されます。そこで、作戦直前に1日だけ自由を与えられることに。その大事な日に、観音様のような女学生うさぎに偶然出会います。彼女との出会いに勇気をもらい、いざ作戦に向かうあいつでしたが、戦局はますます悪化するばかりなのでした。
そうしてついに迎える作戦決行の日。魚雷をしばりつけたドラム缶の中で漂流しながら、敵船を待ち続けます。しかし、あいつが知らぬ間に日本は敗戦していた、という物語です。いつまでも心に残る衝撃的なラストは、ぜひその目で確認してほしいと思います。

ATGとの出会い

東宝所属の監督として、『独立愚連隊』や『日本のいちばん長い日』などの作品を作ってきた岡本喜八。そんな岡本監督が、東宝ではなくATG(日本アート・シアター・ギルド)で製作した作品がこの『肉弾』です。制作費を捻出するために、自宅を抵当に入れてしまったなんていうエピソードも。

独自の語り口で、戦争への痛切な批判を繰り広げる『肉弾』。コミカルでスピーディーな展開を得意とする岡本節はもちろん、演劇的なセリフ回しの上手さ、言葉選びのセンスのよさなど観る者をグッと惹きつけます。

個性派俳優として現在も活躍する寺田農の飄々とした演技や多くの映画賞を受賞する大谷直子の新人とは思えぬ大胆な演技もみどころのひとつ。この2人のシーンで特にお気に入りは、2人が2度目に再会し語り合うところです。息の合った掛け合いが、束の間の癒しの時間を与えてくれます。

また、笠智衆や北林谷栄、小沢昭一、菅井きん、田中邦衛といった日本映画界の錚々たる俳優陣が脇を固めていることも見逃せません。特に、古本屋の老夫婦、笠智衆&北林谷栄コンビは必見です。

反戦への強い思い

派手な爆撃シーンなどは実写ではなくイラストで表現。涙ながらの感動的なシーンもありません。そこにあるのは、「たいしたことはない、本当にたいしたことはない」といった仲代達矢のとぼけたようなナレーションにもあるような皮肉で滑稽なものばかり。その皮肉こそが、反戦への強烈なメッセ―ジにほかなりません。

あいつが出会った両親をなくした兄弟。弟が心配になり工場を飛び出してきた兄を教師が追ってきました。兄への罰として、日本に都合よく書かれた嘘ばかりの教科書を音読させます。そんな光景を目にしたあいつは、「狂ってる。あんな教科書こさえたやつも教えるやつも」とつぶやきます。戦争が人をその心を狂わせてしまったとやり切れない思いが募る印象的なシーンでした。

そんな戦争の不条理や狂気を滑稽かつ幻想的な演出で魅せる『肉弾』。今回私は動画配信で鑑賞しましたが、いつかまた映画館で観ようと思っています。この作品、ごく稀にミニシアター系の劇場で特集が組まれることもあるので、興味のある方はぜひ映画館で観てはいかがでしょうか。

寺田農主演最新作『信虎 信玄陣没!国主の帰還』

今回、主演を務めた寺田農が53年ぶりに主演を務めた映画『信虎 信玄陣没!国主の帰還』が、2021年秋に公開されます。武田信玄の父・信虎を演じました。豪華キャストに豪華スタッフが勢ぞろい。こちらも見逃せませんね。
『信虎 信玄陣没!国主の帰還』は、2021年11月より、山梨県にて先行公開の後、全国公開となります。

詳しくは、公式Twitterまで。



kayser

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?