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8月12日公開オススメ映画『ストーリー・オブ・マイ・ワイフ』『ブライアン・ウィルソン/約束の旅路』『灼熱の魂』

映画ライターの松 弥々子が、今週末、8月5日に公開されるオススメ映画3作品をご紹介します。

ストーリー・オブ・マイ・ワイフ


本作『ストーリー・オブ・マイ・ワイフ』は、しおっからい海で生きてきた無骨な船長が、結婚し、人生はままならないものだと学び、自分の無力さに打ちのめされていく物語です。

有能な貨物船の船長・ヤコブ(ハイス・ナバー)は、ふとしたことから結婚を決意。初めて会った美しい女性・リジー(レア・セドゥ)にプロポーズし、早速結婚します。しかしヤコブは海の男。ひとたび船に乗れば、4カ月は家を留守にしなければなりません。

陸に上がり、家に帰るたび、ヤコブは美しい妻・リジーと社交場に出かけます。そこで洗練されたリジーの友人や親戚に会うたびに、彼は自分が何もできないでくの棒のような感覚を味わうのです……。

レア・セドゥ演じるリジーは、本心を何も明かしません。ヤコブのことを愛しているのか? 陰で何も知らずに金を稼いでくるだけの男だと嘲笑っているのか? ヤコブは疑心暗鬼に苛まれ、リジーへの態度も硬化していくのです。

この物語は、一番近い他人である夫婦が理解しあうことの難しさと、他人を疑うことの愚かしさを描いています。既婚者だけでなく、パートナーがいない人にもぜひ観て欲しい、濃密な人間ドラマです。

『ストーリー・オブ・マイ・ワイフ』(169分/ハンガリー・ドイツ・フランス・イタリア/2021年)
原題:A feleségem története
英題:The Story of My Wife
公開:2022年8月12日
配給:彩プロ
劇場:新宿ピカデリー、シネスイッチ銀座、ユーロスペースほか全国公開
Official Website:https://mywife.ayapro.ne.jp/
© 2021 Inforg-M&M Film – Komplizen Film – Palosanto Films – Pyramide Productions - RAI Cinema - ARTE France Cinéma – WDR/Arte

ブライアン・ウィルソン/約束の旅路

1961年にデビューしたアメリカのバンド「ザ・ビーチ・ボーイズ」。さすがに私はリアルタイムで聞いていたわけではないですが、「グッド・ヴァイブレーション」「サーフィン・U.S.A.」などの名曲の数々は、昔からよく知っています。

ドキュメンタリー映画『ブライアン・ウィルソン/約束の旅路』は、元ビーチ・ボーイズのリーダーであるブライアン・ウィルソンを追ったドキュメンタリーです。
ブライアン・ウィルソンは、1964年にビーチ・ボーイズから離脱しながらも、80代となった今も現役のミュージシャンとして活動しています。

大のインタビュー嫌いとして知られる彼をリラックスさせたのは、ローリング・ストーン誌の元編集者であり、古くからの友人でもあるジェイソン・ファイン。ブライアンはジェイソンの運転する車で思い出の地を巡りながら、じょじょに本音を口にしていきます。

さらには、ブルース・スプリングスティーン、エルトン・ジョン、リンダ・ペリーといったレジェンド級ミュージシャンたちが、ブライアンについて語る様子も収められています。

若いうちに成功しながらも、その後、メンバーとの確執や薬物中毒など、絶望と悲哀のなかで生きてきたブライアン・ウィルソンが、80代にして辿り着いた心境を語る本作。未公開のデモ音源やアーカイブ映像などもあるので、「ザ・ビーチ・ボーイズ」の現役の頃を知らない人でも、じゅうぶんに楽しめる作品となっています。

『ブライアン・ウィルソン/約束の旅路』(93分/アメリカ/2021年)
原題:Brian Wilson: Long Promised Road
公開:2022年8月12日
配給:パルコ/ユニバーサル映画
劇場:TOHOシネマズ シャンテ、渋谷ホワイトシネクイントほか全国にて
Official Website:https://www.universalpictures.jp/micro/brian-wilson
Ⓒ2021TEXAS PET SOUNDS PRODUCTIONS, LLC

灼熱の魂 デジタル・リマスター版

『ブレードランナー 2049』『DUNE デューン 砂の惑星』など、数々の大作を手がけ、今となっては巨匠の風格漂うドゥニ・ヴィルヌーヴ監督。
このドゥニ・ヴィルヌーヴの出世作ともなった2010年の映画『灼熱の魂』が、デジタルリマスターで公開されます。

この物語は、中東を舞台に一人の女性の壮絶な人生を、焼け付くような映像で描いた一作です。

彼女の灼熱の太陽、乾いた赤土、銃撃の炎などに彩られた前半生を送った彼女は、中東の地から出てカナダに移住し、自らが産んだ双子と暮らし始めます。

そして、何も知らずに中東系カナダ人として育った双子は、母の死をきっかけに今まで知らなかった母の人生を知るために、中東にある母の祖国を訪れ、母の軌跡を追うのですが……。

すぐ近くで生きてきた人、自分の家族が、戦争やテロ、宗教などの理由で地獄のような経験をしてきたかもしれない……。
平和な土地で生きてきた人間には想像もつかない悲劇が、そこにあるのかもしれません。北の地で戦争が起こっている今、終戦の日の間近に控えた今だからこそ、未見の方にはぜひ観てみて欲しい一作です。

『灼熱の魂』(131分/カナダ・フランス/2010年)
原題:Incendies
公開:2022年8月12日
配給:アルバトロス・フィルム
劇場:ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテほか全国にて順次公開
Official Website:https://incendies-movie.com/
©2010 Incendies inc. (a micro_scope inc. company) - TS Productions sarl. All rights reserved.

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