9月24日公開オススメ映画『秘密の森の、その向こう』『スーパー30 アーナンド先生の教室』『LAMB/ラム』
映画ライターの松 弥々子が、今週末、9月24日に公開されるオススメ映画3作品をご紹介します。
秘密の森の、その向こう
『燃ゆる女の肖像』のセリーヌ・シアマ監督の新作、『秘密の森の、その向こう』。この作品の主人公は、8歳の女の子です。
おばあちゃんが亡くなって、森の奥にあるおばあちゃんの家の片付けにやってきた8歳のネリー。不安定になったママはおばあちゃんの家を出ていき、パパと二人でおばあちゃんの家に取り残されてしまいます。
ママもおばあちゃんもいないことにどこか不安を感じていたネリーは、森の向こうで自分とそっくりな8歳の少女・マリオンと出会います。実はそのマリオンは、幼かった頃のママ。なぜか8歳のママと出会い、仲良くなったネリーは、若い頃のおばあちゃんとも出会い、彼女たちの知らなかった一面を知ることに……。
自分の親が自分と同い年の頃はどんなふうだったんだろう。そんな疑問を映像化した本作。
ママも今の自分と同い年の頃は、自分と同じように不安を抱いたり、日常の何気ない出来事を楽しんだりしていた……。
将来、ママはやがて死んでしまうけれど、自分もママになり健康な生活を送ることができる……。
8歳のネリーとマリオンは、お互いに知らなかったことを知り、少し成長していきます。
セリーヌ・シアマ監督は、ネリー役とマリオン役に双子の姉妹を起用しました。それは、母と娘が同じような本質を持った存在であることを示唆しているのかもしれません。
美しい森の奥で出会った、少女たちの奇跡の瞬間をうつしとった本作、映像も美しい、宝物にしたくなるようなやさしい映画でした。
『秘密の森の、その向こう』(73分/フランス/2021年)
原題:Petite Maman
公開:2022年9月23日
配給:ギャガ
劇場:ヒューマントラストシネマ有楽町、Bunkamuraル・シネマほか全国順次ロードショー
Official Website:https://gaga.ne.jp/petitemaman/
©2021 Lilies Films / France 3 Cinéma
スーパー30 アーナンド先生の教室
インドに実際にある教育プログラム「SUPER30」。経済的に恵まれていないものの、学習意欲と才能のある子どもたちを30人選抜し、1年間、衣食住の面倒をみながらインド工科大学(IIT)の入試対策を無料で行うというプログラムです。
アジアで最も優れた学習塾とも言われるこのプログラムの創始者、アーナンド・クマールが、このプログラムを苦労しながら軌道に乗せようと奮闘する姿を描くのが、この『スーパー30 アーナンド先生の教室』。
自身も数学の才能にあふれ、ケンブリッジ大学の入学資格を持ちながらも、経済問題で大学進学をあきらめたというアーナンド先生。学習塾の講師となり大金を得た彼が、かつての自分と同じような恵まれない子どもたちを救うために立ち上がります。
カースト制もあり、貧富の差が激しいインドでは、すばらしい才能があってもそれを活かせるとは限らないのです。アーナンド先生の元には、学習の喜びに瞳を輝かせた、痩せた子どもたちが集います。そこで切磋琢磨し、日常のすべてに疑問を持ちながら、勉学に励むようになりました。
しかし、アーナンド先生には次々に試練が襲いかかります。資金は尽き、ライバル塾の妨害にあい、マフィアに狙われ……。すさまじい苦労をしながらも、アーナンド先生は子どもたちのために、信念を貫こうとするのです。そして子どもたちも、アーナンド先生の思いに答えようと必死で努力するのでした。
154分という長尺の作品ですが、インド映画らしいダンスシーンや歌唱などもあり、エンターテインメント要素も満載。一人の偉人の人生を、パワフルに描いた一作です。
『スーパー30 アーナンド先生の教室』(154分/インド/2019年)
原題:SUPER30
公開:2022年9月23日
配給:SPACEBOX
劇場:全国にて
Official Website:https://spaceboxjapan.jp/super30
(C)Reliance Entertainment (C)HRX Films (C)Nadiadwala Grandson Entertainment (C)Phantom Films.
LAMB/ラム
アイスランドの山間部で暮らす羊飼いの夫婦のもとに訪れたある“奇跡”を描いた映画『LAMB/ラム』。
気鋭の映画スタジオ・A24が製作した本作は、何もしゃべらない動物たちの視線が、言葉よりも雄弁に何かを語っている物語です。
本作の主人公である羊飼いの夫婦・イングヴァルとマリアは、大きな喪失感を抱え、ただ日々を生きていました。そんな彼らのもとに、羊のような人間のような“アダ”がやってきます。彼らの生活に、久しぶりの幸福が訪れました。
そして、マリアは母としてアダを育てようと決意。すべてのものからアダを守ろうとするのですが……。
体が人間、頭が羊という、アダのそのビジュアルを見ただけで「この映画、ただものではない」と感じさせる本作。
世界の映画人からも高く評価されており、第74回カンヌ国際映画祭ある視点部門では「Prize of Originality」を受賞しています。
『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』などの特殊効果を担当したアイスランドの親衛・バルディミール・ヨハンソンが手がけた本作、映画好きなら見逃すわけにはいかない一作です。
『LAMB/ラム』(106分/アイスランド・スウェーデン・ポーランド/2021年)
原題:LAMB
公開:2022年9月23日
配給:クロックワークス
劇場:新宿ピカデリーほか全国にて
Official Website:https://klockworx-v.com/lamb/
©2021 GO TO SHEEP, BLACK SPARK FILM &TV, MADANTS, FILM I VAST, CHIMNEY, RABBIT HOLE ALICJA GRAWON-JAKSIK, HELGI JÓHANNSSON
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