1月27日公開オススメ映画『イニシェリン島の精霊』『金の国 水の国』『ピンク・クラウド』
映画ライターの松 弥々子が、今週末、1月27日に公開されるオススメ映画3作品をご紹介します。
イニシェリン島の精霊
『スリー・ビルボード』のマーティン・マクドナー監督の最新作『イニシェリン島の精霊』は、アイルランドの架空の島・イニシェリン島で起こる、二人の男の諍いをめぐる物語です。
午後2時になると、毎日仲良くパブに飲みに行っていたパードリック（コリン・ファレル）とコルム（ブレンダン・グリーソン）。今日もパブに行こうとパードリックがコルムを誘いに行くと、なぜかコルムはパードリックを無視します。「もうパードリックとは話さない」と宣言し、同じパブで会ったとしても、逃げてしまうのです。
イニシェリン島は、島民誰もが知り合いであるような、小さな島。必要なものはなんでもあるけれど、なんにもない島なのです。そこで一生を過ごすことになんの疑問も持たず、毎日能天気に幸せに生きてきたパードリックは、急に変わってしまった親友に戸惑い、悲しみ、そして怒りを感じ始めるのです……。
何かをきっかけに、急にある人に対する印象が変わってしまうということはあるもの。楽天家だと思っていた人を馬鹿みたいに思うようになったり、憧れていた人を憎むようになったり。自分の人生の終わりを意識して、考え方が変わるということもあり得ます。
自分の環境をなんでもあって満ち足りていると思うか、なんにもないと思うか、どちらが幸せなのか。人生の真実を告げる精霊に出会うことは幸せなのか不幸なのか。
そんな答えの出ない問いを与えてくれる、人間と人生の不可思議を描いた名作です。
『イニシェリン島の精霊』（114分／イギリス・アメリカ・アイルランド／2022年）
原題：The Banshees of Inisherin
公開：2023年1月27日
配給：ウォルト・ディズニー・ジャパン
劇場：TOHOシネマズ シャンテほか
Official Website：https://www.searchlightpictures.jp/movies/bansheesofinisherin
©2022 20th Century Studios. All Rights Reserved.
金の国 水の国
「このマンガがすごい！」で2017年の1位を獲得した岩本ナオの同名原作コミックをマッドハウスが映画化した本作『金の国 水の国』。金はあるけど水はない国と、水はあるけど金はない国、敵対するこの二国に生まれた男女が、ある偶然から結婚を装うこととなり、二国の関係をも変えていく物語です。
金の国に第93王女として生まれたものの、誰からもその存在を忘れられている、おっとりしたサーラ。水の国に生まれ、貧しい暮らしながらも家族思いで頭の回転の速いナランバヤル。国同士の思惑が生んだ偶然から出会った二人が、互いにお互いを理解しあうようになり、お互いを思いあうようになっていく姿が、丁寧に描かれています。
ナランバヤルを演じる賀来賢人、サーラを演じる浜辺美波もなかなかの好演。優しくあたたかい絵柄にぴったりの声で物語を彩ります。登場するキャラクターも魅力的で、やさしい気持ちでみられるアニメ映画でした。
『金の国 水の国』（117分／日本／2023年）
公開：2023年1月27日
配給：ワーナー・ブラザース映画
劇場：全国にて
Official Website：https://wwws.warnerbros.co.jp/kinnokuni-mizunokuni-movie/
©「金の国 水の国」製作委員会
ピンク・クラウド
触ったら10秒で死ぬピンクの雲……。そんな雲が地上に現れた、外に出られない世界を描いた映画『ピンク・クラウド』。2017年に脚本が書かれ、2019年に撮影された本作は、ピンクの雲から逃げるため、室内に閉じ込められたロックダウン下の人々を描く人間ドラマです。
外国でニュースになっていたピンクの雲が、ブラジルにも現れた……。その時、そのタイミングでどこにいたかが、人々の運命を分けていきます。
初めて会ったヤーゴと家でデートしていたジョヴァナは、ヤーゴと一緒に過ごすことに。家に一人でいた友人は、ずっと一人で過ごすことに。友人の家に遊びに来ていたジョヴァナの妹は、友人たちと友人の父親と過ごすことに。その状態がいつまで続くのか、それは誰にもわからない……。
ロックダウンを経験した人類にとっては、図らずも事態を予告していたかのように見える本作。閉ざされた環境で少しずつ蝕まれていく人間の心や、提供された情報や動画が信じられなくなる心理、人と人とのすれ違いなどが描かれており、現実とシンクロを感じさせる一作です。
『ピンク・クラウド』（103分／ブラジル／2020年）
原題：A Nuvem Rosa
英題：The Pink Cloud
公開：2023年1月27日
配給：サンリスフィルム
劇場：新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国にて公開
Official Website：https://senlisfilms.jp/pinkcloud/
©︎ 2020 Prana Filmes