2月3日公開オススメ作品『METライブビューイング2022-23 ケヴィン・プッツ「めぐりあう時間たち」』
映画ライターの松 弥々子が、今週末、2月3日に公開されるオススメ作品をご紹介します。
METライブビューイング2022-23 ケヴィン・プッツ「めぐりあう時間たち」
ニューヨークにあるメトロポリタン・オペラ・ハウス(MET)のオペラ公演を映画館で上映する「METライブビューイング」。この「METライブビューイング」で、マイケル・カニンガムの原作小説「めぐりあう時間たち」をオペラ化し、2022年12月10日に上演したものを映像化した『METライブビューイング2022-23 ケヴィン・プッツ「めぐりあう時間たち」』を見てきました。
めぐりあう時間たち / The Hours
このマイケル・カニンガムの原作小説「めぐりあう時間たち」は、ヴァージニア・ウルフの小説「ダロウェイ夫人」をめぐり、1923年、1951年、2001年という3つの時代に生きる3人の女性の人生が交錯していく物語です。1999年にはピューリッツァー賞を受賞しました。
ストーリー
1923年に生きる作家のヴァージニア・ウルフは小説「ダロウェイ夫人」を書き出そうとしています。「花は私が買って来るわ、とダロウェイ夫人が言った」から始まる小説「ダロウェイ夫人」の主人公の名前は、クラリッサ・ダロウェイ。
2001年に生きる編集者のクラリッサ・ヴォーンは、彼女の昔からの友人で詩人・作家のリチャードのため、文学賞受賞のパーティーを開こうとしています。リチャードはエイズで床に伏しており、世間的にはまもなく死を迎えると思われていました。
1951年に生きる主婦のローラ・ブラウンは、夫と幼い息子とともに、幸せな生活を送っているように見えました。しかし、小説「ダロウェイ夫人」を愛読する彼女は、どこか満たされない思いを抱いていたのです。妊娠中の彼女は、夫と息子を置き、一度は家出をしようとするのですが……。
映画『めぐりあう時間たち』
この小説「めぐりあう時間たち」は2002年にスティーブン・ダルドリー監督によって『めぐりあう時間たち』というタイトルで映画化されています。映画にはニコール・キッドマン、メリル・ストリープ、ジュリアン・ムーアという3人の名女優が出演。この作品でニコール・キッドマンはアカデミー主演女優賞を受賞しています。
『めぐりあう時間たち』
Blu-ray:2,075円(税込) / DVD:1,572円(税込)
発売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント
オペラ「めぐりあう時間たち」
オペラ「めぐりあう時間たち」では、ジョイス・ディドナート、ルネ・フレミング、ケリー・オハラという3人の歌姫が、ヴァージニア・ウルフ、クラリッサ・ヴォーン、ローラ・ブラウンという3人の女性を演じました。作曲はケヴィン・プッツ、指揮はヤニック・ネゼ=セガン、脚本はグレッグ・ピアス、そして演出はフェリム・マクダーモットが務めています。
舞台劇ならではの、異なる時代を同時に描くという演出で、3人の女性の苦悩や絶望が重層的に積み重なっていく様が描かれます。
また、オペラならではの、3人の女声が重なり合い、どんな時代にも共通する「自分らしく生きたい」という人としての渇望をあらわにしていく演出も圧巻の一言。「『めぐりあう時間たち』をオペラに? そんな作品だったっけ?」と抱いていた疑問を吹き飛ばしてくれました。異なる時代や場所で起こっている出来事を同時に表現することができるオペラ、そして舞台劇というフォーマットは、3人の女性を主人公とするこの物語にぴったりなのでした。
METライブビューイング
このMETライブビューイングはメトロポリタン・オペラ・ハウスのオペラ公演を映像化したもの。日本では録画された上映ですが、海外では「The Met: Live in HD」として、映画館でMETの公演をライブ中継で見る上映方式も行われているそうです。
今回の『METライブビューイング2022-23 ケヴィン・プッツ「めぐりあう時間たち」』では、オペラ好きとして知られる女優のクリスティーン・バランスキーがホストとして登場し、舞台裏の様子などを紹介してくれます。また、幕間には、クリスティーン・バランスキーが今まで舞台上にいた主演女優たちを呼び寄せ、インタビューする様子も。バックステージのガヤガヤした雰囲気の中で、女優陣がインタビューに応じる様子は、なかなか新鮮です。また、作家、作曲家ら主要スタッフへのインタビューもあるのもうれしいところ。
3時間19分という長尺な作品ですが、インターミッションもしっかりあるので、舞台鑑賞と同じようにゆっくりと楽しめるはず。ニューヨークのMETまでいくのはなかなか大変ですが、日本にいながら、臨場感たっぷりの大スクリーンでオペラが楽しめるというのは素晴らしいことだと思います。毎月さまざまな作品が上映されているので、興味のある方は、ぜひ劇場に足を運んでみてください。
『METライブビューイング2022-23 ケヴィン・プッツ「めぐりあう時間たち」』
日本上映:2023年2月3日(金)〜2月9日(木)(※東劇のみ 2/23(木)まで3週上映)
上映館:東劇・新宿ピカデリーほか全国20館
指揮:ヤニック・ネゼ=セガン
演出:フェリム・マクダーモット
出演:ルネ・フレミング、ケリー・オハラ、ジョイス・ディドナート ほか
MET上演日:2022/12/10
上映予定時間」3時間19分(休憩1回)
Official Website:https://www.shochiku.co.jp/met/program/4672/
(c)Paola Kudacki/Metropolitan Opera
(c)Evan Zimmerman/Metropolitan Opera.jpg