3月3日公開オススメ映画『フェイブルマンズ』『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』『ホーリー・トイレット』
映画ライターの松 弥々子が、今週末、3月3日に公開されるオススメ映画3作品をご紹介します。
フェイブルマンズ
映画『フェイブルマンズ』は、あの“巨匠”スティーヴン・スピルバーグが自らの少年時代と映画監督となった道のりを振り返って描いた自伝的映画です。
コンピューターエンジニアの父、音楽家を目指していた母、3人の妹たちと暮らすサミー・フェイブルマン。
1952年、『地上最大のショウ』の列車激突シーンに魅入られた少年・サミーが、趣味の映画製作に没頭するうちに、まばゆい映画の魅力と中毒性、創造主の万能感、そして芸術の持つ暴力性と芸術家の孤独に気づいていきます。
そこに気づいたとしても、どうしても映画製作をやめられない……。それこそが、サミー・フェイブルマン(=スティーヴン・スピルバーグ)が天才であることの証なのかもしれません。
『フェイブルマンズ』というタイトルのこの作品、主人公はサミーですが、サミーの両親、特に母親の物語でもあります。特に、カリフォルニアで新居に入った時の、父親(ポール・ダノ)と母親(ミシェル・ウィリアムズ)の表情は必見。愛し合った二人が夫婦であり続けることの難しさが、一見幸せそうな風景のなかで壮絶に表現されています。
何があっても、映画をつくることをやめられない、それこそが選ばれし者である……。この『フェイブルマンズ』は、そんな“選ばれし天才”ならではの、家族への愛と謝意がたっぷりと詰まった一作なのでした。
2023年3月12日(現地時間)に開催される第95回アカデミー賞で、この作品は作品賞、監督賞、脚本賞、主演女優賞(ミシェル・ウィリアムズ)、助演男優賞(ジャド・ハーシュ)ほか計7部門にノミネートされています。既に2回も監督賞(『シンドラーのリスト』『プライベート・ライアン』)を受賞し、作品賞(『シンドラーのリスト』)も手にしているスピルバーグのもとに、映画の神様は微笑むのでしょうか。結果が楽しみなところです。
『フェイブルマンズ』(151分/アメリカ/2022年)
原題:The Fabelmans
公開:2023年3月3日
配給:東宝東和
劇場:全国にて
Official Website:https://fabelmans-film.jp/
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エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス
第95回アカデミー賞にて、作品賞、監督賞、脚本賞、主演女優賞ほか10部門において11ノミネートという快挙を果たし、今回のアカデミー賞においてもっとも受賞の可能性が高いと言われているのが、この映画『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』です。
ミシェル・ヨーが主演のこの作品、中国系アメリカ移民のコインランドリー経営者であるエブリンのもとに、別の宇宙の夫が現れ、「世界の危機を救えるのは君だけだ」と、エブリンをマルチバースへの戦いに導いていくという物語です。
宇宙には幾千とおりにも枝分かれした世界があり、そこでは別の自分が別の現実を生きている、という“マルチバース”の概念を、映像で見事に表現したこの作品。ミシェル・ヨーの持ち味を最大限に活用し、“移民の中年女性”、“カンフー女優”、“京劇歌手”など、「あるかもしれなかった人生」を、魅力たっぷりに描いています。
アカデミー助演女優賞にノミネートされたステファニー・スー、ジェイミー・リー・カーティスら2人の女優の演技もいろいろすばらしいし、あのキー・ホイ・クァンが夫役で出演しているという点だけでも、『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』や『グーニーズ』に魅せられた世代的には絶対に観る価値ありのこの作品。
どんなに言葉を尽くしても、この作品の魅力は言い表せない……。ぜひ劇場の大スクリーンで体感してほしい、驚異の映画です。
『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』(139分/アメリカ/2022年)
原題:Everything Everywhere All at Once
公開:2023年3月3日
配給:ギャガ
劇場:TOHOシネマズ日比谷ほか全国にて
Official Website:https://gaga.ne.jp/eeaao/
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ホーリー・トイレット
「ヤバい」「クソ、マジか」というような意味のスラング “Holy Shit!” を英題に持つ本作『ホーリー・トイレット』。
タイトルどおり、トイレを舞台にしたドイツ発のシチュエーション・スリラーです。
この映画の主人公・フランクは建築家。気づいたら、なぜかそこは建設中のリゾートホテルの仮設トイレの中。しかもトイレは横倒しになっていて、右腕に鉄骨が突き刺さっている。トイレの周囲には大量のダイナマイトがあり、あと30分ちょっとで爆破されてしまう……。
この斬新な設定が受け、多くのファンタスティック映画祭に出品され評価されてきたというこの作品。
トイレが舞台となっているというだけあって、なかなかのグロさ。排泄物系の映像が苦手な人は、お気をつけください。。。
『ホーリー・トイレット』(90分/ドイツ/2021年)
原題:Ach du Scheisse!
英題:Holy Shit!
公開:2023年3月3日
配給:アルバトロス・フィルム
劇場:ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国にて
Official Website:https://holy-toilet.com
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