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○●2020年度劇場映画ベスト18 総括●○


お待たせいたしました。
お待たせしすぎたかもしれません。

2020年度は75本の鑑賞本数(複数回鑑賞、21年公開作品含まず)から、
年間ベスト18本の発表です。ランキング順に発表!

●●2020年度劇場映画ベスト18 総括●●
(1月1日~12月31日までの劇場公開作品対象)

第18位
『劇場版 メイドインアビス 深き魂の黎明(Made in Abyss:Dawn of the Deep Soul)』(日)

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2017年に全13話のTVアニメシリーズとして放送された作品の続編となる完全新作の劇場版である本作。一見、キャラクターの見た目からすると、ゆるふわ美少女萌え萌えまったり冒険記と勘違いされそうだが、その実、美しくも恐ろしい奈落の世界を舞台にした、心底ワクワクする骨太で王道の冒険ファンタジー作品。冒険ファンタジーものに加えて、熱血少年漫画的なバトルアクションものとしての要素も非常に強く、ダイナミックな動画に興奮させられた。本作は映倫でR‐15指定を受けたが、グロテスクな描写的にも、青少年たちにトラウマを埋め込む可能性もある倫理的にも、かなりキワどかった。早く続き見せて!


第17位
『恋するけだもの(A Beast In Love)』(日)

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けだもの×バケモノ?!もう好きになったら止まらない!純愛気ちがいバイオレンス!白石晃士監督による久々のオリジナル長編であり、人智を越えたスピリット・アニマル2人のぶつかり合いの記録であり、純情恋物語である。宇野祥平演じる”江野祥平”のビジュアルインパクトもあり、頭のおかしい連中が出てくる変態気ちがい映画っぽく見えがちだが、その実、映画としては実にスッキリとまとまって見やすい、各役者陣の演技が冴え渡る、86分あっという間のアクションバイオレンスラブコメディの傑作である。


第16位
『アンダードッグ 前編・後編(Underdog)』(日)

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前編・後編合わせて4時間半を超える大作!飛び散る血と汗と涙!夢を捨てきれない男たちの熱き拳と拳の殴り合い!本作は三者それぞれの意地と夢と再起の為のボクシングを4時間半を超える時間で見事に描き切っていた。”負け犬ボクサー”の、「七光り芸人」との対決を前編、「若手ボクサー」との対決を後編という形でまとめていて、どちらもしっかりと山場が用意されており、まったく飽きることなく4時間半が過ぎていた。2010年代に公開された「百円の恋」、「あゝ、荒野」に続く、2020年代最初の本格的なボクシング映画であり、上記2作品よりも、より王道のボクシング物としての純度の高さが極まった作りになっているように思えた。観終えて闘志に火が点く気持ちになった!


第15位
『アングスト/不安(ANGST)』(墺)

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理性崩壊!もうガマンできない男の殺人衝動!まさかの実話!世界で上映禁止!配給会社も逃亡!いわく付きの禁断の作品が37年という時を経て、HDリマスター化されて劇場で初公開。殺人衝動が止まらない気ちがいの若者を87分間追っていくだけのシンプルな構成で、エンタメ要素を排した、理解不能で共感皆無な、得体のしれない化け物の生態を、観察している感覚に近い。クラウス・シュルツェが作曲した、温度を感じない冷徹なシンセビートの反復音が延々続く曲「Surrender」はずっと耳にこびりついて離れない。人間の異常性が際立ったヤバい映画。


第14位
『T-34 レジェンド・オブ・ウォー 最強ディレクターズ・カット版 (T-34)』(露)

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噴き出るアドレナリン!戦車 VS 戦車のドッカンバトル!戦争映画ではあるが、戦争のリアルな残酷さなどの重みはなく、戦車アクションに振り切った作品。191分版と長尺であるにも関わらず、観ていてテンポ感は損なわれず、まったく間延びしない。見せ場である戦車アクション以外の、男たちが脱出計画を綿密に練ったりするところや敵の指揮官との対立などを描くドラマパートも超面白く、緩急の付け具合も見事でワクワクされっぱなし。戦車バトルと人間ドラマの要素がお互い化学反応で機能している奇跡的なバランスこそが本作の魅力である。


第13位
『悪人伝 (The Gangster, The Cop, The Devil)』(韓)

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韓国トップマッチョスターことマ・ドンソクが極悪組長を演じるバイオレンスアクション。「ヤクザと刑事が共闘して殺人鬼を追う」というあらすじの単純明快さに、不良性感度ビンビンな本作において、スクリーンに映るのは血と汗と飛沫が飛び交う男たちの武骨なツラ・つら・面!本作は、『チェイサー』、『哀しき獣』、『悪魔を見た』、『アシュラ』などの2000年代~2010年代の名だたる韓国バイオレンス映画の暴力性、テンポ感、キャラクター性、印象的なカットなど、おいしいところを抜き取って、最新リアレンジしたかのような作品であった。


第12位
『私をくいとめて(Hold Me Back)』(日)

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不器用だけど微笑ましさ満載の恋模様を描く妄想!暴走!ラブコメディ。「ひとりになりたい」けど「繋がりたい」という2つの反する気持ちが交錯し煩悶するみつ子と、どうにも傍から見て好青年すぎる多田くんとの、うぶなやりとりを観ているだけでニヤニヤが止まらない。ひとりは気楽で何でも出来て楽しい。だけど、それだけでは何かが欠けているような気がする…。そんなディスタンス時代の今こそ観られるべき、エンターテインメント作品になっている。ホント好きな作品。


第11位
『初恋 (First Love)」(日)

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これだよこれ!コレこそがもういちど観たかった三池作品だよ!ラブストーリー的な題名であるが、ほとんどタイトル詐欺とも言えるバイオレンスアクション!ヤクザや警察を巻き込んだ男女2人の逃走劇という構図や、男女2人の境遇などの類似点から、まさしく三池版「トゥルー・ロマンス」と呼べる作品に仕上がっている。作品の荒唐無稽さに拍車をかけているのはベッキーで、恋人を殺された復讐の鬼女にスリリングに変貌していく特攻な演技で、その濃い顔立ちと相まって、女優としてスクリーンを完全に掌握していた。かつて三池監督の作品を初めて観て衝撃を受けた時のような、初恋に近いような衝動を思い起こさせるという意味でもふさわしいタイトルなのかもしれない。


第10位
『スウィング・キッズ(Swing Kids)』(韓)

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戦時中、捕虜収容所で寄せ集めで結成された5人のタップダンスチームの姿を描く、青春ドラマ。それぞれ個性的なメンツによる寄せ集めで作られたタップダンサーチームが織り成す青春ドラマパートと、戦時下という状況をあまりにも残酷な形で見せつけてくる戦争ドラマパートのバランスが絶妙!心にベトッと残るビターな鑑賞後感となった。抑圧された想いの中でエモーショナルが大爆発するシークエンスである、中盤でのデヴィッド・ボウイの「モダン・ラヴ」がかかるダンスシーンは、観ていて異様な高揚感に包まれて鳥肌ものだったし、そのシーンの美しさに落涙もした。傑作!


第9位
『はちどり (House of Hummingbird)』(韓)

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日本で、都内ミニシアター系列で公開されて以来、大手シネコンで拡大公開されるほど静かな話題を呼んだ青春ドラマ。1990年代の韓国・ソウルを舞台に、中学2年の少女の揺れ動く想いと恋と憧れと家族との関係を繊細に描く。少女ウニを演じるパク・ジフの、14歳のフォトジェニックが全編スクリーンいっぱいに炸裂!新人監督キム・ボラによる、繊細かつ映画的手法を熟知したタッチは、国の垣根を越えて世界中の映画祭で支持されたのは納得の出来ばえ。


第8位
『ワイルド・ローズ (Wild Rose)』(英)

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夢を取るか!家族を取るか!カントリーを歌うシングルマザー奮闘記!音楽映画としても、家族映画としても、どちらにも偏り過ぎない絶妙なバランスで描かれていて、鑑賞後感もすがすがしい、予想だにしなかった傑作。良質な音楽映画のお約束どおり、観た後にサントラを速攻欲しくなるのだがその内容は、まるでジェシー・バックリーのフルアルバムかのようにほぼ全編彼女の歌唱曲で占められていて、映画を観た後に聴くと、作品の余韻に浸れるし、映画を観ていなくてもカントリー音楽集として十分楽しめる名盤。オープニングで歌われるプライマル・スクリームの「カントリー・ガール」のカヴァーが秀逸過ぎ。


第7位
『カセットテープ・ダイアリーズ(Blinded By The Light)』(英)

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うだつの上がらない若者がブルース・スプリングスティーンの音楽と出会って色めきだち成長していく姿から、若者の苦悩や夢、自立を描いた青春音楽映画として、キッチリまとまった、鑑賞後感もすがすがしい!主人公ジャベド少年の姿に、自分の叶わなかった願望や、同じようなことを経験した日々を重ねて観てしまうから、ワクワクするし泣きもするしイライラするし喜びに打ち震える。2019年公開の『ノーザン・ソウル』、『グッド・ヴァイブレーション』や、4年前に公開の『シング・ストリート』などの傑作に並ぶ今後、自分が死ぬまで観ていくであろう青春音楽映画の一本として新たに仲間入りした。


第6位
『劇場版 仮面ライダーゼロワン REAL×TIME (Kamen Rider Zero-One The Movie REAL×TIME)』(日)

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ライダー映画史上、最高のクオリティと熱量!制限時間は60分!地球滅亡を阻止せよ!白熱爆発タイムリミット・サスペンス!キャストやスタッフたちの「何が何でも良い作品を作ってやる」という情熱と気概を、観客視点から、細部に至るまでひしひしと感じることが出来た。本作はバディものとして完成された作品として有終の美を飾った。日本を代表する特撮シリーズの中でも本作は、フレッシュでクラシックでドラマチックで心たぎる作品だった。間違いなく2020年唯一無二のヒーロー映画の大傑作。


第5位
『ミッドサマー (Midsommar)』(米・瑞)

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前作『ヘレディタリー/継承』のインパクトも忘れがたいアリ・アスター監督最新作。スウェーデンの夏至祭に招かれた大学生グループが色々と酷い目に遭うフェスティバルスリラー!白夜の明るさの中で、カルト的な共同体の村人たちの生活は、怖さを通り越してコメディ的(ダウンタウンのコントのような)であり、単純にジャンルを特定できない、不思議な余韻を残す。観ていてだんだんとフワフワとする酩酊感も印象的。苦悩を抱えた主人公ダニが迎えるラストシーンはある意味でハッピーエンドでもあるし、ドラマチックな劇伴曲とも相まって謎の高揚感を覚える。合法的にガンギマりたい時に観返したい作品。
(本作のみタイミングが合わず書けなかった為、ZAKKIちょ~のリンクはありません)


第4位
『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン(Violet Evergarden the Movie)』(日)

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「愛してる」の意味を真摯に伝える、京アニ渾身のアニメーション大作!大号泣必至のエモーショナルのつるべ打ち。手紙のやりとりを通じて、揺れ動く人の心を優しく、繊細に、真摯に、情熱的に、ドラマチックに、エモーショナルに活写。「手紙」という人と人を結ぶ交信手段から、より便利で、声や息遣いを感じられる「電話」へと移り変わっていく文明の変遷を見せていく中で、人から人へ、想いを伝える事の重要性を本作は教えてくれる。日本が胸を張って世界に発信できるアニメーションアート作品であり、2Dアニメーションで現在出来る最上級の表現を駆使した極上のエンターテインメントである。


第3位
『とんかつDJアゲ太郎 (Tonkatsu-DJ Agetarou)』(日)

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ほぼ第1位に近い第3位!豚もバイブスもアゲる!観たらDJがやりたくなり、とんかつが食べたくなる青春音楽ドラマ!「うだつの上がらなかった若者が女の子をきっかけに音楽と出会って成長していく」話で好きにならずにいられない。劇中でかかる、邦画史上でもあり得ないくらいの超豪華な11曲もの洋楽プレイリストも凄かった!また、画と音で魅力を伝える見事なとんかつ描写はお腹が空いてしょうがなくなる。観終わって「あ~面白い映画観た~!」と胸がスカッとするし、さらに観てたら腹が減ったからとんかつ食いたくなるし、という相乗効果を生む。エンタメ作品として非常に細かいところまで練られて丹精込めて作られた、とんでもなく高いクオリティの大大傑作。


第2位
『魔女見習いをさがして(Looking For Magical Doremi)』(日)

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もうほんとに限りなく第1位に近い第2位!本作は「おジャ魔女どれみ」愛に満ちたファンにとってのご褒美ムービーであり、かつて「どれみ」を好きだった女性3人組の自立、夢、絆を真摯に寄り添って描く「シスターフッド」ムービーであり、日本7カ所を巡る「お気楽極楽☆彡GoToトラベル」ムービーであるというスーパーハイブリッドな要素をわずか91分という時間にまとめ上げて、流れるようなテンポの良さの脚本で、体感時間がアニメ1話分の24分くらいなのが本当に凄かった。放送22周年のアニバーサリーとして、ストレートに「どれみ」を描かなかったスタッフの英断は賭けだと思うけど、長く観られる作品としてこの選択は間違っていなかったんじゃないかと思う。主演3人の演技は上手下手とかを超えて、そのキャラそのものだった。


第1位
『エクストリーム・ジョブ (Extreme Job)』(韓)

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2020年一発目、正月三が日に観た、超ウルトラ爆笑スーパーファンタスティックな大大大傑作!!韓国で1,600万人動員という気が狂ったほどのメガヒットを記録したのも納得!映画という媒体でかかる、全年齢対象の理想のエンターテインメント作品である、捧腹絶倒超絶刑事アクションコメディ。キレのよい会話劇と、シーンごとにハマったギャグと、韓国コメディならではのイナたい劇伴曲に乗せたダイナミックでカタルシス爆発のバトルアクションの「要素の絶妙な配置によるバランス感」!余計な説明台詞も、無駄な過剰演出も無いノリノリのテンポの良さで、爆笑に次ぐ爆笑!気づいたら111分経ってたというくらい「巧みな話運びのグルーヴ感」!チーム物としてそれぞれの個性爆発の“キャスト”!思わずヨダレの出そうな美味しそうな“フライドチキン”描写!”笑えてスカッとする映画が観たい!”という人に、全力1,000%でオススメしたい!「一番好きな韓国映画は?」と問われたら、今後、迷わず本作を挙げる。大げさでもなんでもなく、「最高」以外の言葉が見つからない。お見事ッ!!


【総評】
2020年は、世界を巻き込んだ未曽有のコ口ナ禍があり、ハリウッド大作の延期が続き、一時期、劇場が休館するなど映画業界的に辛い局面を迎えてはいたが、公開作品の充実度は2019年以上だったように思えるし、劇場で観る本数も多かった気がする。

正直、ベスト3の3本は、気持ち的には同率1位的な立ち位置である。
それでも『エクストリーム・ジョブ』を1位に持ってきたのは、本作鑑賞中に、劇場内が作品に魅了されるかのように爆笑の渦に包まれていて、「お正月に娯楽映画を観るという最高に最幸な映画体験であったこと」と、こんな塞ぎがちな時期こそ、「超どストレートなエンターテインメントが渇望されるべき」だと思ったから。
そして、いつかまた息苦しいマスクなんかゴミ箱に投げ捨てて、観客同士がひしめきあって劇場という一つの空間の中で、爆笑したい。
そうした願いや祈りのような想いを、この第1位にぶつけた。

『パラサイト 半地下の家族』なんてひねくれた韓国映画を民放で流すくらいなら、誰でも笑えて楽しめてチキンが食いたくなる、家族団らんで観られる完全にテレビ向きな純娯楽作品である『エクストリーム・ジョブ』を金曜か土曜夜9時に放送しろ!と本気で思う。

●●2020年度劇場映画ベスト18●●
1.エクストリーム・ジョブ
2.魔女見習いをさがして
3.とんかつDJアゲ太郎
4.劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン
5.ミッドサマー
6.劇場版 仮面ライダーゼロワン REAL×TIME
7.カセットテープ・ダイアリーズ
8.ワイルド・ローズ
9.はちどり
10.スウィング・キッズ
11.初恋
12.私をくいとめて
13.悪人伝
14.T-34 レジェンド・オブ・ウォー 最強ディレクターズ・カット版
15.アングスト/不安
16.アンダードッグ 前編・後編
17.恋するけだもの
18.劇場版 メイドインアビス 深き魂の黎明


◆ランクには漏れたが心に残った10作品(順不同)◆
ストーリー・オブ・マイ・ライフ わたしの若草物語
ジェクシー!スマホを変えただけなのに
ミセス・ノイズィ
屋根裏の殺人鬼 フリッツ・ホンカ
ジョーン・ジェット/バッド・レピュテーション
ウルフウォーカー
mid90s ミッドナインティーズ
アルプススタンドのはしの方
羅小黒戦記 ぼくが選ぶ未来
ブルータル・ジャスティス


以上。
2021年度もたくさん観るぞ!


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